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9. ウミガメ語り『髪飾り』

 ワシは『ドン!』という音で目が覚めたのじゃ。


 どうやら墨吉は真っ暗な中を歩き、『龍の絵』にぶつかってしまったらしい。


 ワシはその音が気になり、様子を見に行ったんじゃ。


 絵の裏には綺麗に輝く黒い箱が隠れており、墨吉はたまたまそれを見つけてしまったのじゃ。


 墨吉はその箱を手に取ると、紐をほどき蓋を開けてしまったのじゃ。


 中からは白い煙が現れ、墨吉の全身を覆い尽くした。


 煙が無くなると、墨吉は老人の姿になっておった。


「何だこれ? えぇ!」


 何が起こったのか分からない墨吉は、シワシワになった自分の手を見て混乱していた。


ワシは墨吉のそばへ行き声を掛けた。


「どうしたんじゃ」


「綺麗な箱から白い煙が、それで俺がこんな姿に……」


「グハハッ!」


 ワシは戸惑っている墨吉をよそに、思わず笑ってしまった。


「こんな時に何がおかしいんだ!」


 墨吉はすごく怒っておった。


「いやぁ、すまん、今までのことを思い出せなかった自分がおかしくてな、墨吉さんの不幸を笑ったわけではないんじゃ」


「今はそんなことより、何が起こったのか教えてくれ! なんでおじいさんになってしまったんだ!」


「大丈夫じゃ、ここで休んでおればいずれ元の姿に戻れるわい」

「え? 元に戻れる? ここにいるだけで?」


「そう、だから安心するんじゃ。あの箱を見て思い出したわい。あの箱は欲深い者が開ければ災いが起こるが、欲のない者が開ければ宝物が出てくるのじゃ」


「俺が欲深い? そんなはずはない!」


「その箱に宝物が入ってるのではと、期待したじゃろ? そもそも『龍の絵』はほんとに転んで落としたのか?」


「何が言いたい? まさか、俺が絵を盗もうとしていたとでも? いやいや、それだけはほんとに違う!」


「それだけは?」


「た…… 確かに宝物が入っているかもと期待はした。しかし、絵もその箱の中身も盗もうなんて思っていない。それより『欲のない者が開けたら宝物が出る』とはどういうこと?」


 墨吉と話をしているうちに、いつの間にか綺麗な箱は消え、落とした絵も元通りになっていた。


「では、見せようかのう」


 そう言ってワシは絵の裏から箱を取り出し、ためらわず紐をほどくと、箱を開けてみせた。


 隣にいた墨吉は、白い煙を恐れたのか飛び退いておった。


「開けるならちゃんと言えよ! また煙がでたらどうするんだ!」


 墨吉はまた怒っておった。


「グハハッ! いや大丈夫じゃ、箱の中を覗いて見るのじゃ」


 墨吉は恐る恐る箱の中を覗いた。そこには綺麗に輝く緑色の髪飾りが入っていた。


「どうじゃ? これは『龍の鱗』でできた髪飾りじゃ」

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