6. ウミガメ語り『優しい若者』
またいつものように人間を観察していると、砂浜では三人の子供が遊んでいた。
あまりに楽しそうに笑っているので何をしているのか気になり、海から出てゆっくり近付くと、一人の子供がこっちに気付いたのじゃ。
「あっ! ウミガメ!」
するとあっという間に、子供達に囲まれてしまった。
「ウミガメのこうらって、すごいかたそう」
そう言って一人の子供が甲羅に触ってきた。
「ほんと、すごいかたい!」
そう言ってもう一人の子供が甲羅を手で叩いてきた。
「これでたたいてみよう!」
そう言って別の子供が木の棒で甲羅を叩いてきた。
そういえば、前にも砂をかけられたことがある。人間の子供というのは乱暴な生き物じゃわい。これからは近付かないよう注意が必要じゃ。
何をされても声は出せない、子供達が飽きるまでじっと我慢していたのじゃ。幸い甲羅は丈夫なので、子供達にいくら叩かれてもびくともしない。
「こら! やめろ!」突然大きな声がした。
たまたま通り掛かった若者が、ワシを助けてくれたのじゃ。
「うわぁ! 逃げろぉ!」
叱られた子供達は、叫びながらあっという間にいなくなった。
「いやぁ、助かったわい。ありがとう」
ワシは若者の優しさが嬉しくて、思わず声を出してしまったのじゃ。
「誰かいるのか? どこだ?」
若者は私に気付かず、辺りを見回していた。
「ここじゃよ、先程いじめられていたウミガメじゃ」
若者は驚いた顔でワシを見た。
「え? ウミガメの声?」
「そうじゃ。助けて頂いた御礼に龍宮城へお連れしよう」
もちろん、御礼の気持ちは本当だが乙姫様も喜びそうだと考えたのじゃ。
「龍宮城だって? 一体どこにある?」
若者が聞いてきた。
「海の底じゃよ」
ワシは当たり前のように答えた。
「海の底なんて、人間はそんなとこへ行けない」
若者は笑って、そう答えた。
「ワシの背中に乗れば大丈夫。海の中でも不思議と息ができるんじゃ。龍宮城には食べ切れない程ご馳走がたくさんあるし、お姫様にも会えるのじゃ」
「それがほんとなら楽しそうだな。でも苦しくなったら引き返してくれよ」
若者は信じていないようじゃったが、とりあえず向かうことになったのじゃ。
ワシは若者を背中に乗せ、海の中に入って行った。
「どうなっているんだ? 本当に苦しくない。この居心地の良さは何だ? 海の中はこんなに美しいものだったのか!」
若者は驚きながらも、美しい海を楽しんでいた。
やがて太陽の光が届かなくなり、辺りが真っ暗になると、目の前に夜空の星のような光がいつくか見えてきた。
そして周りは不思議な生き物達による幻想的な光に包まれた。
しばらくすると、海底にぼんやりと龍宮城の明かりが見えてきた。
「さぁ、到着じゃ。お城の中へ案内しよう」




