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5. ウミガメ語り『龍宮城』

 ワシは乙姫様と過ごす時間が好きじゃったが、『人間のことを知りたい』という気持ちは変わらず、陸の様子を度々見に行った。


 変わったことといえば、その時に見つけた綺麗な石や鏡など、乙姫様が喜びそうな物を持ち帰るようになったことじゃ。乙姫様はいつもそれを喜んでくれた。


 そんなある日、乙姫様が聞いてきた。


「かめじいの背中にはどうしてきずがあるの?『りゅう』にかまれたの?」


「りゅう?」


 ワシには乙姫様が何を言いたいのか分からない。


「あそこにある絵だよ」乙姫様が壁にかかってある絵を指差してそう答える。


 ワシは『眼光鋭い迫力ある絵』が、『龍の絵』であるということ知った。しかし、この姿に見覚えがある気がするんじゃが……思い出せん。


 乙姫様の言う『背中の傷』についても覚えがない。自分の甲羅を鏡に写すと、そこには大きな歯型の様な傷があった。


 やはり、泳いでいる時に何かに襲われ気を失ったのじゃ。硬い甲羅のおかげで命は助かったのじゃろう。しかし、気が付いた時にはここにいた…… 偶然? それとも誰かが運んでくれたのか? もしかして、この龍が?


「乙姫様、この傷は龍のせいではないと思うが、海の中には危険な生き物がたくさんいるんじゃよ、ワシには硬い甲羅があるから大丈夫じゃが、乙姫様は一人でここから出てはだめじゃよ」


「水の中はきらい、あたしはずっとここでいい」


 乙姫様は覚えていないようじゃが、溺れた時の恐怖で水がトラウマになっているようじゃ。


 それから何年も乙姫様の記憶は戻らないまま、のんびりとした日常が続いたんじゃ。もちろんワシの記憶も戻っておらん。変わったことといえば、乙姫様が成長して女の子から美しい少女になったことじゃ。


「あたしはあの龍が、このお城を守ってくれているように感じるの」ある日、乙姫様は絵を眺めながらそう語ったのじゃ。


「そうかもしれんのう」


 何かは分からんが、ここに不思議な力があることは間違いないのじゃ。


「龍の宿るお城だから、このお城のことを『龍宮城』と呼びましょう」乙姫様はにっこり笑って、そう提案した。


「それはいい名前じゃ」


 ワシにとってはどうでもよかったが、乙姫様が嬉しそうにしているのが嬉しかった。


 それにしても、人間は名前を付けるのが好きな生き物である。


 ワシには理解できないが。

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