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11. ウミガメ語り『もう一人の若者』

 乙姫様は見た目が綺麗になっただけでなく、髪飾りを付けた日から何年経っても歳を取らなくなっていた。


 それから乙姫様は毎日のように鏡を見て、笑顔を浮かべていたんじゃ。


 どれだけ時が過ぎても相変わらずワシは海岸で人間を観察していた。するとある日、人間達が龍宮城の話をしているのが聞こえてきた。


「こんな話知ってる? いじめられてるウミガメを助けた男が、御礼に海の中にある龍宮城でご馳走を振る舞われるんだけど、乙姫様に貰った玉手箱を開けるとお爺さんになったんだって」


 墨吉は約束を破って誰かに話してしまったのじゃろう。


 それにしてもなぜ、玉手箱は乙姫様が渡したことになっておるんじゃ。


 それから何度か同じ話を聞くようになった。ただ、その話は面白がっているだけで、信じている人間はいなさそうじゃ。


 龍宮城を探されたり、ワシが捕まえられるようなことはなさそうじゃが、このままでは何だか乙姫様が悪者にされているようで納得できん。もちろん、この話が乙姫様のところまで届くことはないのじゃが、そんな問題ではないのじゃ。


 ワシは墨吉に会おうと毎日、墨吉と出会った場所を訪れたが、彼が姿を現すことはなかった。


 それでも諦めず探し続け、更に何年か経った頃、墨吉に似た若者が現れた。ワシはその若者と話がしたかったが、いきなり声を掛けるわけにはいかない。また人間に追いかけられるのはこりごりじゃ。


 その若者の近くで四人の子供が遊んでおった。


『今回だけは』


 ワシは仕方なくその子供達に近付いたのじゃ。


「あっ! かめさんだ!」


 子供達はすぐに興味を示し、あっという間に私を囲んだ。しかし、「かわいい」などと言いながら見ているだけで、叩いたりする乱暴な子供はいなかった。


 いつもならそれで満足なのじゃが、今回はいじめられるために近づいたのじゃ、このままではいかん。だからと言って声を出すわけにはいかない。


『何とかせねば』


 ワシは周りにある砂を一人の子供に掛けてみた。すると、その子は「うわっ! なにするんだよ!」と言いながら砂を掛け返してきた。


『これじゃ!』


 ワシは周りの子供達に手当たり次第、砂を掛けまくった。


 すると、子供達は「わあっ! こいつやったな!」と言いながら砂や石をみんなで投げてきたんじゃ。


「やめなさい! 可哀想だろ!」


 予想通り、近くにいた若者が子供達を止めてくれた。


「さきにあっちがかけてきたのに!」


「もういいよ! いこう!」


 そう言い残して、子供達は離れて行った。


「ありがとう、助かったわい。御礼に龍宮城へ連れて行ってあげよう」


 その若者が浦島さんだったというわけじゃ。


 どうじゃ? 理解できたかの?

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