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第4話 ずれていく関係

ご覧いただきありがとうございます。

 初夏の気配は、ある日ふと訪れる。


 春のあいだはまだ朝晩に冷えが残っていたはずなのに、ある朝、窓を開けた途端に空気の匂いが変わっていることに気づく。風がやわらかく、日差しは少しだけ強く、庭の花の色もどこか濃く見える。官舎へ向かう石畳の道には、いつの間にか木陰がはっきりと落ちるようになっていた。


 季節が動けば、仕事も動く。


 文官の部署では夏季に向けた人員の再配置や地方巡察の準備、予算案の調整で慌ただしさが増していた。日々の案件に加え、次々と先を見越した処理が必要になる。机の上の書類は減るどころか、片づけてもすぐ次が積み上がる。


 クラリスは、そういう忙しさが嫌いではなかった。


 やるべきことが明確で、優先順位を見極め、順に潰していけばいい。感情の入り込む余地が少ないぶん、仕事はむしろ楽だ。問題が起きても原因を探り、手順を整えればいい。そういう世界であれば、迷わずに済む。


 けれど最近、そこに一つだけ、どうにも整理しにくいものが混ざっていた。


 ルシアンである。


 正確に言えば、ルシアンの“距離”だった。


 職場では今まで通りだ。上司として有能で、柔らかく、必要なことを的確に伝える。部下に無駄な緊張を与えず、それでいて舐められもしない絶妙な立ち回りで、部署全体を滞りなく回していく。


 家でも、今まで通りと言えばそうなのだろう。


 同じ卓で食事をし、同じ家に帰り、互いの仕事の疲れを適度に流しながら暮らしている。過度に踏み込まず、過度に離れず、穏やかに。


 なのに、最近、時々ルシアンの視線が妙に長く感じられることがあった。


 例えば朝。

 いつものようにクラリスが髪をまとめていると、食卓の向こうから何とはなしに見られている気配がする。視線を向けると、ルシアンは特に慌てもせず、ただ「あら、おはよう」と笑うだけだ。


 例えば夜。

 書斎で向かい合って書類を読んでいるとき、ふと顔を上げると、ルシアンが手元ではなくこちらを見ていることがある。声をかければ「何でもないわ」と微笑む。だがその“何でもない”の言い方が、以前より少しだけ静かだ。


 そして、例えばごく小さな接触。


 棚の上の書類を取ろうとして腕が触れたとき。

 居間で茶器を受け取る際に指先がかすったとき。

 そんなものは、同じ家で暮らしていればいくらでも起こる。実際、クラリスは最初の頃こそ少し意識したが、今ではそれほど気にしていないつもりだった。


 つもりだったのだが。


 なぜかルシアンは、そのたびにほんのわずかに黙る。


 何でもないふうに見せてはいる。けれど、呼吸が一拍だけ遅れるとか、目を伏せるとか、そういうごく小さな反応がある。


 それに気づいてしまう自分もまた、どうなのだろうとクラリスは思う。


 気づいたところで、意味はわからない。


 わからないが、以前とは何かが違うということだけは、なんとなく感じていた。


 その日も、朝から忙しかった。


 月末が近づき、中央棟の会議室では午前中から予算調整の打ち合わせが続いている。書類を抱えて移動し、議事録を確認し、必要な修正をその場で指示する。昼食を取る暇もぎりぎりで、午後に入る頃には執務室全体に微かな疲労が漂い始めていた。


 クラリスは自席で会議用の資料をまとめ直していた。昼前の打ち合わせで出た修正点を反映し、午後の再提出に備えている。数字の整合性は取れている。あとは文言の細部だけだ。


 そこへ、同じ部署の若い文官補佐がやってきた。


「クラリス様、こちらの件、ルシアン様から先に見ていただくようにと」

「わかりました。置いてください」

「はい。それと……」


 彼は少しだけ言いにくそうに笑う。


「今日はルシアン様、先方の女性方に随分捕まっておられますね」

「……女性方?」

「ええ、隣棟の秘書官たちです。会議の帰りに廊下で。何だか楽しそうに」

「そうですか」


 クラリスは淡々と返し、差し出された書類を受け取った。


 それだけのやり取りだ。特に気にすることではない。


 ルシアンは顔が広い。社交も得意だ。誰と話していても不思議ではないし、女性に囲まれることも珍しくないだろう。貴族出身で見目もよく、人当たりもいいのだから当然だ。


 当然なのに。


 なぜかその瞬間、胸の奥に小さな棘が刺さったような気がした。


 意味がわからない。


 クラリスは無意識に羽ペンを持つ手に力を込め、それからすぐに気づいて指先を緩めた。


 何に反応したのだ、自分は。


 別に、ルシアンが誰と話していようと自由だ。夫婦ではあるが、それは互いに必要な形を整えた結果であって、過度な干渉をするような関係ではない。そもそも、今までだって彼が多くの人と軽やかに付き合っていることは知っていたではないか。


 それなのに、なぜ今さら。


「……非合理です」


 小さく呟いた声は、自分にしか聞こえなかった。


 午後の会議が終わったころには、陽が少し傾いていた。


 執務室へ戻る途中の廊下で、ちょうどルシアンの姿が見えた。柱の影になる場所で、隣棟の秘書官らしい女性二人と話している。何か書類のやり取りをしているようでもあるし、雑談も混じっているらしい。女性たちは楽しそうで、ルシアンもいつものように上品に笑っていた。


 その光景自体は、何も珍しくない。


 ただ、その中の一人が、ルシアンの袖に軽く触れながら何かを言ったときだった。


 クラリスは自分でも驚くほどはっきりと、嫌だ、と思った。


 足が止まる。


 頭では、何に対する不快感なのかすぐには整理できない。仕事の場で必要以上に馴れ馴れしい接触をするのは適切ではない、という理屈も浮かぶ。だが、おそらくそれだけではないことを、クラリスは自分で知っていた。


 そこへ、ルシアンがこちらに気づいた。


 一瞬だけ目が合う。


 すると彼は、ごく自然に女性たちとの会話を切り上げた。


「失礼、続きはまた今度」

「まあ、もう?」

「ええ、少し急ぎの確認があるので」


 柔らかくそう言ってから、こちらへ歩いてくる。


 クラリスは何も言わず、そのまま待った。ルシアンが目の前まで来ると、いつも通りの穏やかな笑みを浮かべた。


「お待たせ」

「待ってはいません」

「あら、そう」

「会議資料の確認です」

「ええ、わかってるわ」


 そのまま並んで執務室へ向かう。廊下に二人分の足音が重なる。しばらく黙っていたが、先に口を開いたのはルシアンだった。


「……機嫌が悪い?」

「別に」

「そういう声のとき、大体“別に”じゃないのよ」

「そのようなことはありません」

「あるの」


 軽く返される。


 クラリスは少しだけ眉を寄せた。


 自分でも、何かが少しずれているのはわかっていた。だが、それをどう説明すればいいのかがわからない。説明できないものを口にするのは苦手だ。整理もできていない感情を、そのまま外へ出すのはなおさら。


 だから結局、事実だけを言った。


「……仕事中に、必要以上の接触は避けるべきです」

「接触?」

「先ほどの」

「ああ」


 ルシアンは一拍置いた。

 そして、わずかに目を細める。


「あなた、あれ気になったの?」

「適切ではありません」

「そうね。仕事の場としては少し軽率だったかもしれないわ」

「でしたら、今後は」

「でも」


 ルシアンが足をゆるめた。


 クラリスもつられて立ち止まる。


 人通りの少ない廊下の角。高窓から差し込む午後の光が、石床に淡く伸びていた。


「それだけじゃないでしょう?」

「……何がですか」

「あなたが今、気にしてること」


 まっすぐに見られる。


 その目が静かすぎて、クラリスは一瞬言葉に詰まった。


 違う、と言いたかった。仕事上の配慮の話だと。けれど、その言い訳を自分でも信じきれない。先ほど胸に刺さった棘が、単なる業務上の不快感だけではなかったことを、今はもう否定しづらかった。


「……わかりません」


 ようやく出てきたのは、それだけだった。


「そう」

「ただ、気になりました」

「ええ」

「理由は、まだ整理できていません」

「そういうところ、本当に真面目ね」

「笑い事ではありません」

「笑ってないわ」


 ルシアンの声は、思ったよりも低かった。


 クラリスは視線を上げる。


 笑っていない。

 本当に。


 そこにいたのは、軽やかな上司の顔ではなく、もう少し静かな何かを抱えたルシアンだった。


「……私、軽くないのよ」


 その言葉は、ほとんど独り言のように落とされた。


 クラリスは目を瞬いた。


「先ほどの方々のことですか」

「それも含めて」

「含めて?」

「ねえ、クラリス。あなた、私のこと、案外わかってるようで、わかってないのかもしれないわね」


 責める声ではない。けれど、どこか疲れたような響きがあった。


 ルシアンは廊下の窓辺へ視線をやり、それから小さく息を吐く。


「誰とでも上手くやれるように見える?」

「……はい」

「そう見せてるもの」

「否定はなさらないのですね」

「事実だから」


 振り向いた横顔は、いつもより少しだけ鋭かった。


「でも、それは誰でも好きだって意味じゃないの」

「……」

「軽く笑って、適当に受け流して、その場を丸く収めるのは得意よ。けど、それと“本気”は別」


 本気。


 その言葉が、妙に重く響く。


 クラリスは何も返せなかった。


 返せなかったのは、そこで初めて、これが自分の理解していた範疇の話ではないのかもしれないと感じたからだ。


 ルシアンが何を言おうとしているのか、正確にはまだわからない。けれど、少なくとも“仕事中の接触は不適切です”で片づく話ではないことだけは伝わってきた。


 ルシアンは少しだけ口元を歪めた。


「……困るのよね」

「何がですか」

「こういう顔をしたくなかったのに」

「ルシアン様」

「本当はもっと、上手く流せると思ってたのよ」


 その言葉に、クラリスは息を止めた。


 流せると思っていた。

 何を。


 問い返すより先に、ルシアンが言った。


「最初は、本当に対象外だったわ」


 廊下に静寂が落ちた。


 高窓から入る風が、紙の端をかすかに揺らす。遠くで誰かの足音がした気がしたが、すぐにまた消えた。


 クラリスは、自分が今どんな顔をしているのかわからなかった。


 対象外。その意味はわかる。


 ルシアンが何を言っているのかも、そこでようやく理解した。


 彼が男性を好むことは、出会って早い段階で何となく察していた。明言されたわけではないし、わざわざ聞くことでもなかったが、彼の言葉の端や、結婚の話題への疲れ方、そして時々見せる諦めのようなものを見ていれば、自然とそう思うようになった。


 だからこそ、二人の結婚に恋愛的な緊張はないのだと、どこかで安心していたのかもしれない。


 安全だと。


 自分は“対象外”だから。


 その前提が、今、ルシアン自身の口から揺らがされた。


「でも」


 ルシアンは、今度はクラリスを見た。


「あなたは違った」


 まっすぐだった。


 冗談も、はぐらかしもない。

 ただ静かに、逃げずに言う目だった。


 クラリスは言葉を失う。


 何かを返さなければならない気がした。けれど、頭の中に浮かぶものはどれも中途半端で、口にするには足りなかった。


 違った。

 その言葉は、想像していた以上に深く刺さった。


「……それは」


 どうにか声を絞り出す。


「どういう意味ですか」

「言葉通りよ」

「私は」

「ええ」

「女性です」

「知ってるわ」

「あなたは」

「男性が恋愛対象だった」

 

 ルシアンは自分で言って、少しだけ笑った。けれどその笑みは、ひどく静かだった。


「今もそうよ。たぶん、根本的には変わってない」

「では」

「でも、あなたを見てしまうの」


 かぶせるように言う。


「目で追ってしまうし、他の誰かといると妙に気になるし、あなたに優しくされると嬉しくて困るのよ」


 その一つひとつが、クラリスには思い当たる節のようでいて、でもどこか遠い話にも感じられた。


 優しくした覚えは、あまりない。少なくとも、自分では特別なことをしているつもりはなかった。


 ただ、無理をしていそうなら茶を淹れるし、疲れていれば休めと言うし、軽く扱われれば不快に思う。それだけだ。自分にとって自然な振る舞いだった。


 けれど、それがルシアンにとっては“特別”として届いていたのだろうか。


「……困ります」


 気づけば、そんな言葉が漏れていた。


「ええ」

「非常に」

「ええ、わかってる」

「笑わないでください」

「笑ってないわ」


 確かに、笑ってはいなかった。

 ルシアンはただ、少しだけ疲れたような、でもどこか諦めたような目をしていた。


「言うつもりはなかったの」

「……」

「このままでいいと思ってた。快適で、穏やかで、それで十分だって」

「では、なぜ」

「あなたがさっき、あんな顔をするから」


 クラリスは息を飲んだ。


「あんな顔、とは」

「嫉妬してるみたいな顔」

「していません」

「そういう否定の早さ、今は逆効果よ」

「……っ」


 頬が熱くなるのがわかった。


 嫉妬、という言葉があまりにも馴染みがなくて、理解が追いつかない。そんなもの、自分とは無縁だと思っていた。感情で他人を縛るような幼い反応は、もっと遠いところにあるものだと。


 けれど、さっき胸に刺さった棘を思い出せば、完全に否定することもできない。


 ルシアンが軽々しく誰かに触れられるのが嫌だった。

 自分でも理由が整理できないまま、不快だった。


 それを嫉妬と言うのなら——。


「……非合理です」


 クラリスは半ば逃げるようにそう言った。


「ええ」

「説明がつきません」

「そうね」

「私には」

「うん」

「まだ、理解できません」


 ルシアンは少しだけ黙ったあと、ゆっくり頷いた。


「わかってる」

「……」

「だから、今すぐ何か返してほしいわけじゃないの」

「では、なぜ」

「言わないと、私のほうが保てそうになかったから」


 その言葉の正直さに、クラリスは完全に言葉をなくした。


 保てそうになかった。


 それほどまでに、ルシアンの中で何かが積み上がっていたのだろうか。自分の知らないうちに。いつもの笑顔や軽口の裏で。


 そう思うと、胸の奥でまた別の感情が動いた。


 申し訳なさとも違う。

 責任感とも違う。

 ただ、少しだけ痛いような、落ち着かない感覚。


「……仕事に戻りましょう」


 ようやくクラリスが言うと、ルシアンは小さく笑った。


「そう来ると思った」

「今は、他に適切な言葉が見つかりません」

「あなたらしいわ」

「申し訳ありません」

「謝らないで。そういうところも、ちゃんと知ってるから」


 知ってるから。


 その言い方は、ひどくやさしくて、だから余計にクラリスを困らせた。


 そのまま二人は執務室へ戻った。


 ルシアンは本当に、何事もなかったように仕事へ戻った。資料を受け取り、必要な確認をし、午後の決裁を片づけていく。動揺の欠片も見せないとは言わないが、少なくとも周囲にはわからない程度に整えている。


 その横顔を見ながら、クラリスは一層混乱していた。


 自分だけが取り残されているような気がする。


 ルシアンは、自分の感情をもう名前のあるものとして引き受けている。困る、保てない、違った。そういう言葉で、きちんと自分の状態を見ている。


 それに比べて自分はどうだ。


 非合理だ。

 困る。

 説明がつかない。


 そんなことばかりで、肝心の中心にあるものへ届かない。


 夜、家へ帰ってからも、空気は少し変だった。


 変だったのは、実際に何かが壊れたからではない。ルシアンはいつも通りだった。食事の席では仕事の話を振り、味つけについて小さな感想をこぼし、食後には茶を淹れてくれた。何も変わらないように見えるよう、丁寧に整えているのがわかる。


 そのことが、かえってクラリスの胸に重かった。


 言わせてしまったのだと思う。


 ルシアンの中でまだ流せると思っていたものを、流せなくさせた。

 それが悪いことなのかどうかはわからない。けれど、少なくとも、今まで通りではいられなくなったことだけは確かだった。


 書斎で向かい合っても、今日はどうにも落ち着かない。書類の文字は追えるのに、頭の奥で別の言葉がずっと反響している。


 最初は対象外だったわ。

 でも、あなたは違った。


 何度も、何度も。


「クラリス」


 不意に呼ばれて、顔を上げる。

 ルシアンが、書類から視線を外してこちらを見ていた。


「今日は、もうやめましょうか」

「……まだ終わっていません」

「終わってなくても、頭が回ってないときにやっても無駄よ」

「そんなことは」

「ある」


 その言い方が穏やかで、クラリスは反論を飲み込んだ。


 確かに、今日の自分は普段より精度が落ちている。誤りはしていない。だが、処理速度が鈍い。さっきから同じ文を二度読んでいることも自覚していた。


 ルシアンは椅子から立ち上がり、クラリスの机の脇まで来た。


 それだけで妙に緊張する。


 今までなら、同じ家で同じ部屋にいることにここまで意識はしなかったはずなのに。


「……座ったままでいいわ」


 ルシアンはそう言って、机の端に軽く手を置いた。


「今日のことは、急がなくていい」

「……」

「あなたが困るの、わかってるから」

「困っています」

「ええ、知ってる」


 そして、ほんの少しだけ笑う。


「でもね、クラリス。あなたが困ってるってこと自体、私には少し救いなの」

「どうしてですか」

「何も感じてないなら、困らないもの」


 その一言に、クラリスはまた返せなくなる。


 何も感じていないなら、困らない。


 確かに、それはそうだ。


 まったく意に介していない相手に何を言われても、ここまで頭を占められたりはしない。自分が今、こんなにも整理のできない感覚に足を取られているのは、そこに何かがあるからなのだろう。


 何かが。

 まだ、名前のついていない何かが。


「……おやすみなさい」


 クラリスはようやくそう言った。


「ええ、おやすみ」


 立ち去る気配がして、少しだけ安心する。

 だが次の瞬間、頭上から、ごく静かな声が落ちた。


「本当は、あなたに優しくされるたび、ずっと嬉しかったのよ」


 顔を上げる前に、ルシアンはもう離れていた。


 書斎を出ていく背中はいつも通りで、扉の閉まる音も静かだったのに、その一言だけが部屋の中に残る。


 クラリスはそのまましばらく動けなかった。


 優しくしたつもりはない。

 けれど、優しさとして届いていた。


 それが、今夜のいちばん困る事実だった。


 窓の外には初夏の夜が広がっている。昼間の熱がわずかに残る風が、薄いカーテンを揺らした。


 机の上の書類はそのままなのに、もう一文字も頭に入らない。


 クラリスはゆっくりと目を閉じた。


 非合理だと思う。

 説明がつかないと思う。

 けれど、それでも。


 今日、ルシアンが誰かに触れられるのを見たとき、自分の胸が確かにざわついたことだけは、もう否定できなかった。


 その感情を、何と呼ぶのか。


 まだ、自分では言えないまま。



お付き合いいただきありがとうございます。

次回ラスト5話目は、明日同時刻に投稿します。

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