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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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118/121

幕引き

みんなで屋上に上がった。

見慣れた銀河は形を変えていた――。



星は渦を巻くように中心に集まり、光が外へ向かって広がって、夜の色を無くしていく。

視界の端では、店が空に吸い込まれるように少しずつ形をなくていた。

屋上の端、渦に近いところから、黄金色の光の粒になって少しずつ、渦に吸い込まれていく。



「じゃあ……俺から行こう」



ヒロさんが一歩前に出て、振り返った。

「お前が1番じゃねぇと俺たちの行き先がねぇからな」

サチさんが前に出て、ヒロさんの肩を抱いた。

「せいぜい俺たちのハネムーンでも眺めとけよ」

「保留だと言ってるだろ」

サチさんの軽口をアヤさんが刺す。

ヒロさんは短く笑って、茶器さんたちや雑巾に、2人を頼むと伝えた。

みんながヒロさんの足元に寄り集まって、撫でてもらっているのが可愛い。

「ヒロさん……」

私はもう伝えたい事なんて、無いけど……。

「わ、私も、撫でて欲しい!」

「ぶっ!」

サチさんが吹き出した。

でも、気にしない。

「ふふ、カナエ、来て」

ヒロさんに手招きされてそばによれば、優しく頭を撫でてくれた。

「カナエが、俺の世界で旅をする時は必ず晴れにするよ」

「ふふ、雨が素敵な場所だってあるかもしれないよ?」

「むっ……いいんだ。俺のわがままだから。……綺麗な夕陽を、見せたいんだ」

「もう……ヒロさんの欲張り」

イーッと歯を見せたらヒロさんが笑ってくれた。

そして、ふっと影がさして、額に僅かにぬくもりが乗った。

顔を上げれば、この上なく満足そうに笑うヒロさん。

サチさんの口笛が聞こえて、ブワッと頬に熱が集まった。


「カナエのままいればいいよ……俺は見てる」


そう言って、ヒロさんは光の粒に形を変えた。

光の粒がふわりとみんなの周りを一回りして、渦へ登って行った。




「あいつほんとにいい男になったなぁ……」

サチさんが左の肩に手を乗せて、アヤさんが右から背中をさすってくれた。

「――っ!!」

ぼろぼろと溢れて止まらない涙を、両手で押さえようとするけれど、隙間からあふれてしまう。

「カナエだって、いい女になったさ。私には、及ばないけどな」

アヤさんまで軽口を言うようになった。

笑いが漏れた。

ちゃんと、泣かないで送り出せた。

私には充分。

「アヤさん、サチさん」

2人には見せちゃったけど。

「私、行くね!」

涙顔を上げて、ニッと笑った。

「おお、行け行け」

「私たちはここを見届けてから行くよ」

2人にうなづいて、渦に向かって走り出した。

後ろから茶器さんたちの跳ねる音がする。

きっと、雑巾も跳ねてる。

最後の一歩を踏み込んだら、ふわりと体が浮いた。

浮き上がった体でみんなを振り返った。

「みんな、元気で!」

不安定な体で、なるべく大きく手を振った。

振り返してくれるみんなを見ながら……光に包まれた。





さよならとも、またね、とも言わない。

ただ、伝わればいいと思った――。

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