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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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114/121

自らで立つ

***


美しい海と、暖かい老婆に出会った世界。

寄るべなさに役割を探した間“あわい“での時間。

炭鉱街の恐怖。

雪山での遭難と反抗。

それから――。


カナエの戸惑いと、小さな気づき。


次々と変わる、現実味のない時間。

カナエの言葉で、丁寧に、少しずつ、縁取られていく。


そして、ふと混ざる。


雑多な路地裏で見つけた痩せたネコ。

アヤの並々と作ったスープの味。

酔っ払った俺とサチを介抱した朝――。


確かな温度が世界に宿って、匂い立つほど鮮やかに蘇っていく。



***

――全部努力の軌跡だった。

この先を照らす私の轍だ。



読む声が、少し震えた。

迷いなく差し出せた対価。

大切な物だった。長い努力の成果だった。

でも、あの時に、私はきっともうわかってた。



声が揺れないように、目を瞑って一呼吸。

瞼の裏に銀河が見えた気がした。


――私の、私だけの必要……必然。


縁を探す事なんていつのまにか忘れてた。

それくらい、この旅は――鮮やかで。

……だから、痛かった。


今は、泣きたくない。


一緒に旅ができて良かった。

嬉しい。

大好き。

離れ難い。


でも、行く――。


サチさん、ヒロさん、アヤさん、他にもたくさん。

みんなに出会えた。



言葉では足りないから、全部を。

この旅の全部を――伝えたいの。




***

「なぜお前達だったのかわかった気がする……」

2人の声まで、ここに届いた。

「やっぱり、お前達と旅が出来て……幸せだ」

アヤが噛み締めるように呟く。

そっと肩を抱けば、寄り添ってくれた。

茶器や雑巾が、窓に齧り付いて行方を見守ってるんだろうが……視界が滲んで、もうよく見えない。

「泣いたって、2人には秘密にしてやるよ」


お前だって鼻声だろうが――。


言いたかったが、アヤの手が背を撫でるから……何も言えなくなった。



***

――それじゃあ、ほんとうにありがとう。みんな元気で!



入江の世界で、仲間に手を振って別れた。

残る事もできた。

……でもしなかった。


後悔など、しようもない。


残る何かを残せたからじゃ、ない。

仲間と呼んでくれた。

その子らが、健やかに前を向いた。

そこに、自分がいた。


俺自身が、宿った。


最後の世界で見た夕陽。

照らされる街並み。

歩く人々……。

全部、……全部。


胸が熱を持つ。

乾き切った目に、痺れるように集まってくる。


カナエを見た。


一生懸命、泣くのを堪えて、顔を真っ赤にして、鼻を啜って話し続けている


初めて映画を見た後に、視線では見下ろして、気持ちでは見上げていたカナエと、今、同じ目線になれた。




今ここに溢れそうなものに、名前など……。

いらないんだ。




ありがとうと……この旅が宝物だと伝えたい。


渾身の力を振り絞って……ポケットの物を取り出して、カナエに見せた。


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