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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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いただきます

大きな声でただいまを言えば、アヤさんの優しいおかえりと、走り回る雑巾と茶器さん達の賑やかな音が出迎えた。




「アヤさんに、とっておきのお土産があるんですよ」

たくさんのお土産をテーブルに並べ、茶器さん達がお茶をついで、いただきますを待っている時。

私はそっとポラロイド写真の束をアヤさんに手渡した。

ヒロさん、サチさんも待ちきれない顔でアヤさんの視線を追っている。

1番上の写真は綿飴を挟んだサチさんとヒロさんの写真だ。

「これは絵か?凄いな」

「写真って言うんです。これで撮るんですよ」

ほら、とポラロイドカメラを見せればアヤさんは珍しそうに指先でカメラに触れた。

「こんな風に外を見るのは始めてだ……嬉しいよ。ずいぶん間抜けな顔だがな」

そう言ってアヤさんは笑った。

「それすげぇ眩しいんだよ!いいから、ほら次の見てみろ」

顔を赤くしたサチさんが、それでも嬉しそうにアヤさんを促した。

「わかったわかった…………これは」

次の写真は目尻と唇の赤い黒猫のぬいぐるみが綿飴を食べるような構図で撮られたもの。

テーブルの上には大きな綿飴が花のように立てて飾られている。

アヤさんは目を見張って、次の写真をめくる。

「隣の店のフルーツも美味かったんだ。カナエもご満悦だったな」

ヒロさんがほらこれ、とテーブルのフルーツを指差す。

写真にはプラカップに入ったフルーツの横で喜ぶような若草色の猫と黒猫。

「サチさんが飲んだビールはイマイチみたいでしたね」

私も次の写真を促して、ビールを掲げて見せる。

写真はご当地ビールとひっくり返るやさぐれ猫と黒猫。

「唐揚げはうまかったが、量がな……」

サチさんが次の写真にあった唐揚げがお皿の上で山盛りになってるのをみて苦笑する。

写真の中でも唐揚げは山盛りだ。頬張るヒロさんと、お皿によじ登るまんまるの白ネコと、どこか呆れて見える黒猫。

他にも、たくさん……。

3人でこれはこの料理だ、この酒だ――と写真をアヤさんに見せた。

写真に写る、料理やお酒は全部テーブルに乗っている。


「最後の写真はこれです!これだけは……持って来れなかったけど」

終わりかけの夕陽と、それを眺める4匹の猫の後ろ姿。


「アヤさんは、一緒に来れないけど……一緒に旅した大切な人だから」

「最後は一緒がいいってカナエが言ったんだ」

「店出る時に忘れ物したってもどったろ?このぬいぐるみ取りにいってたんだとよ」


どう?と、3人でアヤさんの顔を覗き込んだ。

アヤさんは最後の写真を見つめてなかなか顔を上げてくれなかったけど……。


ポタリ――。


写真に雫が落ちて、アヤさんは慌ててそれを拭って顔をあげた。


大切に、写真を胸に抱いて。


「ありがとう……こちらこそ、一緒に、旅ができて……幸せだよ」


たくさん涙を流しながら、でも、笑いながら……。途切れ途切れに、大切に気持ちを伝えてくれた。


サチさんがそっとアヤさんの肩を抱いて、私とヒロさんにぐっと親指を立てた。

いつの間にか二人の間に居た雑巾は嬉しそうに身を震わせている。


「まだフィルム残ってるんです。食べる前にみんなで写真撮りましょうよ!」


たくさんの料理の乗ったテーブルに茶器さん達も並んだ。雑巾はサチさんの肩が定位置みたいだ。そして、みんなそれぞれのネコをもった。


カメラを覗き込んで位置を合わせる時に、少し視界がにじんでしまった……。


「5秒後に撮りますからねー!」

タイマーをセットして、5、4、3……


パシャリ!


「ぐぁ!」

「ふふっサチは何度撮っても慣れないな」

サチさんが悲鳴を上げて、ヒロさんが笑う。

「びっくりした……すごく光るんだな」

目を丸くして固まるアヤさんには、私が笑ってしまった。


みんなでフィルムを見ていると、賑やかな画像が浮かび上がる。

統一感のない雑多な食卓。飛び跳ねる茶器。毛を逆立てる雑巾に――。


「ぶふっ」

吹き出したのはだれだっただろう。

サチさんが半目になってる。


「あー!もう笑うなよ!……食うぞ!」

「ふふ……サチ拗ねるな。私は楽しいよ」

アヤさんがサチさんを慰める。ヒロさんは肩を震わせて言葉にならないみたいだった。


「そうですね!食べましょ!」


みんなでいただきますを言って、賑やかな食事が始まった。



茶器さんが淹れた紅茶は甘い甘いミルクティーだった。



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