星の瞬き
***
夜、俺は1人で屋上に上がり、銀河を眺めていた。
「お、先客だな……」
「サチか」
サチが雑巾を伴ってやってきた。
先客……と言いつつ、手には酒瓶とグラスが2つ。
グラスに酒をそそぎ、黙って渡してくる。
ぶっきらぼうに差し出されたグラスに、苦笑いしながら乾杯した。
「サチにはなんでもお見通しだな」
「なんのことかわかんねぇな」
しばらく何も言わずに、銀河を眺めた。
同じ景色のようで、毎秒毎に星は流れ、表情を変えていく。
不変であり可変のそれは人と少し似てると思った。
「これからどうすんだ?」
星空に見入っていたが、サチに話しかけられて我に返った。
「そうだな……まずは断食だな」
いきなり全く食べないのはかえってダメージになる。時間があるなら少しずつ体を慣らしたいところだ。
時間――。
「……でも、時間に余裕があるなら」
「あるなら?」
「……3人で、最後に……最後の異世界を見たいよ」
なんの前触れもなく。
涙がこぼれた。
「っ……楽しかったよ。サチ……終わるのは、寂しい」
しゃくりあげそうになる喉を、なんとか抑えて言葉にした。
挑戦は……恐ろしい。
飲まず食わずで、いつ終わるかもわからない。こんな事、きっとどんな狂人だってやってない。その上この体は死なない。
耐えるだけで、この挑戦は成功する。
それが――1番恐ろしい。
「俺はな……」
サチが俺に向き直った。
「お前がただ達観しちまったら、寂しかったよ」
ぽん、とグラスを持った手が俺の胸を打った。
「俺も、きっとカナエも……同じ気持ちでいる」
うん、うんと……うなづいた。
もう知っている。
でも、言葉にしてくれるサチが嬉しかった。
「はは、お前育っても泣き虫だな」
「っ!笑う事ないだろ!」
サチだって、目が潤んでるじゃないか。
そう思ったら、また目が熱を持った。
「今日は飲む事にする。付き合ってもらうぞ……サチ」
「はぁ〜……昨日も飲み過ぎたんだがな。まぁ……いくらでも付き合ってやるよ」
熱を溜め続ける目を誤魔化すようにサチを誘えば、軽口がかえってきた。
いい友に、出会えた……。
***
「そんなに泣いたら、明日ヒロが心配してしまうぞ」
アヤさんが囁いて、私の頭を撫でた。
屋上に続くドアの横、2人でしゃがんで、ヒロさんの声を聞いていた。
眠れなくて、ヒロさんもいるような気がして屋上に来た。
でも、星を眺めるヒロさんの背中をみたら……なんて声をかけたらいいかわからなくなってしまった。
そこへアヤさんとサチさんがやって来たのだ。
「……ここは男同士喋らせてもらうぞ」
サチさんはそう言って屋上へ出て行った。
「アヤさん……」
「ん?」
「私……ヒロさんと、同じ気持ち」
「うん」
「でもね、アヤさんも……同じ気持ちだって、知ってる」
そう言えば、アヤさんはちょっと固まって、くしゃっと笑った。
目尻が少し、赤くなってる。
「ああ……私も寂しいよ」
そう言って緩く抱きしめてくれるアヤさんの細い腕を抱きしめ返した……。




