基礎の意味 序
初日は挨拶だけで終わった。
本格的な特別教練は翌週からの予定だったため、訓練生たちはそれぞれ通常授業へ向かっていった。俺たちは、どんな訓練をしているのか、どんなことを教えているのかを確認し、実際の授業や訓練を見学して訓練生たちの力量を調べることにした。
俺の教室から去っていく訓練生もいた。
考えが合わないのは仕方がない。それぞれの戦い方があるし、生き残っていることこそが正義だ。他のエースたちの教えも、彼らの役に立つだろう。
ただ、特練生が全員レオニードの教室へ移されたと知った時は、ドネルらしいと思った。
「本当に全員移したのか」
俺が変更後の名簿を見せると、ガレスは鼻を鳴らした。
「優遇できるだけ優遇する、と言っていたからな」
エレーナも肩をすくめる。
「分かりやすい人だね」
「変わってないな」
俺たちは顔を見合わせて笑った。
レンナは、すぐに整備士科の授業へ参加していた。現場の空気や、戦闘員との連携の取り方など、現役の整備士でなければ話せないことを伝えているらしい。
整備士科の訓練生たちは、戦闘員科の生徒が使う機体の整備も担当していた。作業を見たレンナは、その技術レベルの高さに驚いていた。
「この子たち、外装の点検だけじゃなくて、駆動部の確認までしているのね」
「教官が一緒に確認している。訓練生だけで機体を戻すわけじゃない」
「それでも、ここまで任されているのはすごいわ」
訓練中の整備トラブルが事故につながり、訓練生が命を落とすこともある。幼いうちからその現実に触れているせいか、機体に対する責任感は現場の整備士にも劣らないという。教官の知識とチェックを通し、戦闘員科の訓練生たちの安全を守っていた。
だが、特練生の機体だけは扱いが違った。大人の整備士チームが専任でつき、特練生専用機は教官専用機の並ぶ格納庫で整備されている。
その様子を見たレンナは、少し憤っていた。
「整備士科の子たちにも、あの機体を見せれば勉強になるのに」
「特練生だから特別扱いなんだろう」
「だからって、学ぶ機会まで分ける必要はないわ」
レンナは格納庫の奥へ目を向けた。俺には、返す言葉がなかった。
一般訓練生と、レオニードのクラスに移らず残った特練生の視察は、イリヤ、リン、ネッサに任せた。俺はマレクと一緒に、重練隊を重点的に見て回った。
そこで、重練隊の難しさを痛感した。
六十五人の生徒は、それぞれ苦手な分野が違っていた。操縦の基本は身についていても、速度変化への対応が苦手な者がいる。射撃は正確でも、周囲を見ながら飛ぶと判断が遅れる者もいた。指示には従えるが、自分から報告するのが苦手な者もいる。
苦手を克服させるために、全員へ同じ訓練を同じだけ課す。それでは効率が悪い。得意な分野も、つまずく箇所も、生徒によって違う。
授業の組み立て方に悩んでいると、マレクが訓練記録を見ながら口を開いた。
「全員を同じように育てなくても、いいのではないでしょうか」
「どういうことだ?」
「生徒たちを、もう少し細かく分けるんです。それぞれに役割を与えて、苦手なところも訓練する。でも、得意なことを伸ばす時間も作る。苦手を直すだけでなく、得意なことを隊の中でどう使うかを教えるんです」
「役割ごとに小さな隊を作るか」
「はい。全員が同じ動きを覚えるより、それぞれが役割を持った方が、連携も教えやすいと思います」
マレクの案は筋が通っていた。
「よし。その方針でやろう」
俺たちは教室全体の組分けをやり直した。まず一か月は、役割ごとに基礎を練習する。役割の動きを身体に覚えさせ、同時に体力もつける。苦手な分野は個別に補い、得意な分野は隊の中で活かす方法を探る。
役割を細分化した分、訓練を監督する人手が足りなくなった。そこでガレスを通じ、ドネルや座学の教官責任者に相談して、授業を分担してもらうことになった。
座学担当の教官は、時間割を見るなり眉を寄せた。
「また担当が増えるのか。これでは準備に手間がかかる」
「一度に全員を教えるより、担当を分けた方が生徒の様子を見やすい。訓練の記録も共有する」
「分かった。だが、急に変更されても困るぞ」
「次からは早めに相談する」
教官はまだ不満そうだったが、時間割を受け取った。数日後、細分化した授業の結果が届いた。手間が増えたという愚痴は続いていたものの、生徒の理解度は上がっているという報告だった。俺にとっては満足のいく結果だ。
訓練、座学、体術。教科ごとに時間を組み、戦術学はイリヤにも担当してもらうことにした。
小隊単位の動きだけではなく、戦場全体をどう把握するのか。飛行機に乗りながら、どこを見て何を判断するのか。イリヤ自身の視点から講義をしてもらう。
時間が許すなら、俺も出るつもりだった。俺は基本的に飛行訓練と体術を受け持つ。
*
一方で、俺は重練隊の六十五人をどう教えるかばかり考えていた。
それを見ていたガレスが、ある日、俺に言った。
「お前は重練隊だけの担任なのか」
「いや、俺のクラスは三百八人です」
「お前にとっては訓練生は一緒くたなのかもしれない。重練隊を何とかしたいというのも分かる。だが、あいつらにとっては担任は一人だ」
俺は黙った。
「重練隊だけが生き残ればいいのか。それはお前の自己満足だ。今からでもいい、帰れ。担任を降りろ」
「……」
「お前は残りの訓練生を殺す」
その言葉で、ようやく自分の間違いに気づいた。
重練隊を仲間外れにする訓練生たちに憤っていた。だが俺自身も、重練隊に意識を向けるあまり、ほかの生徒たちを置き去りにしかけていた。俺の方針に反発してクラスを去った訓練生たちは、俺が教室から追い出したようなものだった。
気づけてよかった。
*
翌週の初めから、本格的な訓練を始めた。
最初の一か月は、基礎の反復に徹した。単純な動きを何度も繰り返し、考えるより先に身体が動くまで覚えさせる。機体の姿勢を保つ。僚機との距離を取る。指示を聞き、復唱し、自分の位置を伝える。そして自分の役割をしっかり果たす。苦手な動きは小分けにして何度でもやり直す。
他のクラスが模擬戦や演習に進んでいると聞き、不安を口にする生徒もいた。
「レン教官、話があります」
相談に来たのは、一般訓練生の一人だった。名はエミル・ロウ。十六歳。赤茶色の髪を短く刈り、普段は控えめだが、納得できないことは口に出す性格らしい。
「何だ?」
「他のクラスは、もう模擬戦を始めています。俺たちは、いつまで基礎を続けるんですか」
「今の動きができるようになるまでだ」
「でも、基礎ばかりでは実戦の感覚が身につきません」
「基礎ができていなければ、模擬戦で何ができて何ができなかったのかも分からない。焦るな。今は目の前の動きを身につけろ」
エミルは不満そうだったが、最後には「分かりました」と引き下がった。
その様子を、近くで聞いていた同じ班の生徒たちが見ていた。
一般訓練生は、男女合わせて八名が俺の組で目立つようになった。
エミル・ロウは十六歳の少年。短気ではないが、疑問を抱えたままにできず、納得するまで質問する。
ナディア・セトは十五歳の少女。明るく社交的で、周囲への声かけが得意だが、操縦では慎重になりすぎる。
トーマス・ベルは十六歳の少年。体格がよく体力もある。勢いで前に出がちで、僚機との距離を詰めすぎる癖がある。
ユナ・モリは十五歳の少女。物静かで観察力があり、計器の読み取りが得意だ。
サミル・ハディは十六歳の少年。冗談好きで人を笑わせるが、緊張すると報告が遅れる。
イネス・コスタは十五歳の少女。負けず嫌いで反応が速い。相手の動きに夢中になり、周囲が見えなくなることがある。
パヴェル・ノヴァクは十六歳の少年。几帳面で手順をよく覚えるが、予定外の動きに弱い。
ミラ・オコエは十五歳の少女。落ち着いていて、仲間の小さな異変に気づく。自分の不調はなかなか口にしない。
残った特練生は一人だけだった。セリーナ・ヴェイル、十六歳。白い記章をつけ、操縦の基礎と射撃精度は高い。口数は少なく、他の生徒を見下すような態度はない。ただ、特練生としての期待に応えようとするあまり、失敗を極端に恐れていた。
「セリーナ、訓練中に迷ったら報告しろ。間違いを隠す方が危険だ」
「分かりました、教官」
彼女は短く返したが、視線は真剣だった。
重練隊からは、五人が特に印象に残った。
ヤコブ・レイエスは十六歳の少年。小柄で動きが素早い。目標を見つけるのは得意だが、操縦桿を強く握りすぎて機体がぶれる。
ファラ・ナジールは十五歳の少女。機械の仕組みに詳しく、機体の異音をよく聞き分ける。操縦中は自分の感覚に自信を持てず、反応が遅れる。
ミロ・ヴァシッチは十六歳の少年。体力があり、長時間の訓練にも耐える。反面、周囲を見ずに課題を一人で解決しようとする。
ソフィア・ンゴマは十五歳の少女。通信が明瞭で、状況報告が得意だ。急な進路変更や速度の調整が苦手だった。
デニス・ウォードは十六歳の少年。射撃の照準は正確だが、発射の判断に時間がかかる。仲間が狙われると、助けようとして自分の位置を崩してしまう。
五人とも、不得意なところは違った。得意なことも、訓練を重ねるほど見えてきた。
ネッサは、生徒たちに相方の位置を確認する習慣をつけさせた。彼女はリオにしていたのと同じように、一人ひとりの動きを見て、できたところを先に伝える。
「ナディア、今の確認はよかった。相手の位置を見てから動けていたよ」
「でも、旋回が遅れました」
「そう。次はその遅れを一緒に直そう。できたことも忘れないで」
リンは、生徒たちの苦手な動きを見つけると、わざと少し難しい課題を出した。
「イネス、相手の機体だけを見ていたでしょう」
「はい」
「敵だけ見ていたら、味方がどこにいるか分からなくなる。次は私が横から入る。相手と私、両方を見て飛んでみて」
「やってみます」
「失敗してもいい。視野を広げる練習だから」
イリヤは、座学で戦術図を使いながら、生徒たちに戦場全体を考えさせた。
「自分の前にいる敵だけを見ていると、別の方向から来るものに気づけない。まず味方の位置を確認する。それから敵の動き、退路、次に起きることを考える」
サミルが手を挙げた。
「次に起きることまで考えるのは、難しくないですか」
「最初は難しい。だから、過去の訓練映像を見て、何が起きる前に兆候があったかを探す。少しずつでいい」
イリヤは、映像を止めて一つずつ説明した。生徒たちは戦術図を覗き込み、互いに気づいたことを話していた。
マレクは操縦訓練の補助に入り、機体の速度変化を読む課題を受け持った。最初は緊張していたが、生徒が失敗した時も、責めずに自分の経験を交えて話す。
「俺も前に、報告を後回しにしたことがあります。判断を一人で抱えたまま動くと、仲間が状況を分からないままになる。迷ったら、迷っていることを先に伝えてください」
その言葉を聞いたルイスが、訓練生たちへ説明を加える。
「報告は、正解を出してからするものではありません。仲間が判断するために、今分かっていることを伝えるんです」
マレクは、少し驚いたようにルイスを見てから頷いた。
「その通りです」
エリサは、僚機を守るための位置取りを教えた。トーマスが前へ出すぎると、訓練を止める。
「敵を追うことだけが仕事じゃない。味方が危険なら、射線を切ることも攻撃と同じくらい大事よ」
「でも、あの敵を落とせそうでした」
「その間に、隣の機体が撃たれていたら?」
トーマスは返事をせず、訓練映像を見直した。
マーカスは、敵の進路を塞ぐ訓練を担当した。無理に追いかけず、相手が進みたい場所を先に押さえる方法を教える。
「相手の後ろを追い続けても、相手が行きたい方向へ行かせるだけだ。逃げ道を読んで先に立つ」
パヴェルは何度か手順を間違えたが、同じ訓練を繰り返すうちに、相手の進路を考えられるようになってきた。
レンナも、整備士科の授業と俺のクラスを行き来していた。機体の部品を見せながら、整備士へ伝えるべき情報を教える。
「操縦中に異常を感じたら、音や振動だけで済ませず、いつ、どんな動きの時に起きたのかを伝えるの。整備士はその報告から原因を探す。曖昧な報告は、点検の手がかりを減らしてしまう」
ファラは、説明を聞きながら何度も頷いていた。授業の後、彼女はレンナに機体の部品について質問をし、二人で工具の扱いを確かめていた。
体術も一から教え直した。
軍隊格闘術だけではない。目潰しや金的、ベルトや服を使った攻撃。使えるものは何でも使う。身近にある物をどう活用し、相手より有利な状況をどう作るか。教えられた通りに戦うだけではなく、その場にあるものを使って生き延びる方法を叩き込んだ。
「相手が正々堂々と戦ってくれるとは限らない。武器を持っていることもある。複数で囲まれることもある。そこで礼儀を守って負けるのか?」
訓練生たちは、床に膝をつき、息を切らしながら俺を見ていた。
「使えるものを使え。勝つためだ。生き残るためだ」
エレーナは、その訓練を見て眉をひそめた。
「教え方が荒っぽいね」
「実際の戦場はもっと荒っぽい」
「分かってるよ。ただ、子供たちの身体を壊すんじゃないよ」
「気をつける」
彼女は頷いた。納得はしているようだった。
*
基礎を続けるうちに、他のクラスが模擬戦や演習へ進んでいるのを目の当たりにして、訓練生たちは不安を募らせていた。
「レン教官、話があります」
ある日、エミルが再び相談に来た。
「俺たちは、いつまで基礎を続けるんですか。レオニード教官のクラスは、もう選抜訓練をしていると聞きました」
「焦る気持ちは分かる。でも、お前たちにはまだ身につけることがある」
「俺たちだけ、遅れていくんじゃないですか」
「遅れているかどうかは、他のクラスと比べて決めることじゃない。自分ができなかったことを、できるようになったかで見るんだ」
エミルは納得した顔ではなかった。それでも、話を最後まで聞き、訓練に戻っていった。
別の日には、セリーナが訓練後に残った。
「私は特練生ではなくなりました。今朝、通達が来ました。」
「そうか」
「もしかしたら、レオニード教官のクラスにいった方が、配属先は有利だったのかもしれません」
特練生を示す白い紀章は、すでに彼女の胸から消えていた。
「そう思うなら、戻りたいか?」
「いいえ。ここで教わったことが間違いだとは思いません。ただ、まだ自分で確かめられていないだけです」
「なら、確かめればいい。訓練でな」
セリーナは頷いた後、俺の顔をじっ見つめてから立ち去っていった。
朝の点呼から訓練棟へ行き、訓練生たちと一緒に掃除をする。広場では体操にも参加する。朝食も夕食もできるだけ彼らと食べ、同じ時間を過ごした。
イリヤも、レンナも、ネッサも、リンもついてきてくれた。
リンは朝のランニングに出るため、泣く泣く朝食を抜き、朝食昼食夕食と訓練生たちと食べていた。それでも部屋に戻ると、また何か食べている。
「太るぞ」
俺が言うと、リンは食べる手を止めずに答えた。
「朝に動いてる分、減る!」
「それは、どうだろうな」
レンナが呆れた顔を向けた。
「レン、デリカシーがない」
「事実を言っただけだ」
「そういうところよ」
レンナにたしなめられ、俺は肩をすくめた。リンは気にせず、もう一口食べた。
基礎を徹底した結果、俺の教室では重練隊と一般訓練生の基礎技能の差が、チームごとには目立たなくなってきていた。全員を混ぜればまだ分野ごとで力の差はある。だが、得意不得意に合わせて役割を細分化したことで、それぞれが自分の力を発揮する場面が増えていた。
重練隊の生徒たちには、夕食後の自由時間にも集まってもらい、追加訓練をした。イリヤや飛行隊のメンバーも、日替わりで参加してくれた。
俺と重練隊の生徒たちは、週に五日、自由時間を削って訓練した。
ヤコブは、操縦桿を握りしめる癖が少しずつ抜けてきた。ファラは、機体の異音を言葉にして報告できるようになっている。ミロは仲間に任せる練習を始め、ソフィアは急な進路変更にも落ち着いて対応した。デニスは射撃の判断を早めるため、イリヤと何度も模擬映像を見返していた。
その積み重ねは、彼らの自信につながった。日常の訓練でも、以前のように萎縮せず、自分から動けるようになっていく。質問の声も、少しずつ増えていた。
*
そんな矢先、ドネルから呼び出しがあった。
「基礎訓練だけでは、お前を呼んだ意味がない」
ドネルは、俺が提出した訓練計画に目を通しながら言った。
「基礎を固めることも、役割を身につけることも必要です」
「いつまで基礎をやるつもりだ。ほかのクラスは、もう模擬戦や実戦形式の演習を始めている」
「訓練生ごとの力量を見てから進めています。基礎ができていなければ、模擬戦で何を学んだのかも分からなくなります」
「君の考えは分かった。だが、運営は目に見える成果を求めている」
ドネルは書類を机に置いた。
「レオニードのクラスと模擬戦を行え」
「今の段階では早すぎます」
「なら、いつならいい?」
俺は少し考えた。
「一か月後にしてください。三か月目が始まる初日に模擬戦を行います」
ドネルはしばらく俺を見た。それから、少しだけ笑った。
「いいだろう。逃げるなよ」
「逃げません」
その日のうちに、俺は教室の訓練生全員を集めた。
「一か月後、レオニードの教室から選ばれた生徒たちと模擬戦をすることになった」
教室に緊張が走った。
「来月の三週目に、こちらの選抜メンバーを発表する。今は担当している役割の基礎を続ける」
「模擬戦まで、まだ基礎だけですか」
エミルが尋ねた。
「いや、基礎を使えるようにしてから、実戦形式に移る」
「レオニードのクラスは、もう模擬戦をしていると聞きました」
「向こうは向こうだ。俺たちは俺たちのやり方で準備する」
訓練生たちの顔には不安が浮かんでいた。重練隊の生徒たちは、選抜に入れるのか、模擬戦に出られるのかと、互いに目を見合わせている。
「勝敗は記章の色で決まらない。今の成績だけで決まるわけでもない。役割を理解し、仲間と連携できているかが始まりなんだ。」
俺は全員を見渡した。
「選抜に選ばれるために焦るな。今の訓練を続けろ。選ばれた者も、選ばれなかった者も、同じ部隊の仲間だ」
訓練生たちはそれぞれの役割へ戻っていった。まだ不安は残っている。だが、以前よりは互いの顔を見て動くようになっていた。
俺は教室を見回した。
赤い記章をつけた重練隊の生徒たちも、白い記章を外したセリーナも、周りの訓練生たちと同じ机に座っている。まだ互いにぎこちないが、さっきよりは顔を上げていた。
まずは、全員の得意なことと苦手なことを知る。役割を与え、訓練の記録を取り、必要なら組み合わせを見直す。模擬戦の選抜は、その先だ。
「明日から、訓練の記録を各自でつけてもらう。できたことも、できなかったことも書け。自分の動きを振り返るところから始めよう」
エミルが頷き、セリーナはノートを開いた。ヤコブは隣のファラに何かを尋ね、ナディアはその会話に加わる。マレクたちも、それぞれの担当生徒のそばへ動き出した。
一か月後には、レオニードの教室との模擬戦が待っている。俺はカレンダーに丸をつけ、計画を立て始めた。




