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第二十九章 支えるということ

朝になる。


カーテンのすきまから入ってくる光が、

床をあったかくしとる。


オイラはその上で寝とった。


でも、

前みたいには動けへんかった。


後ろの脚は動かへん。


立とうとしても、

体がついてこん。


何回やってもあかんかった。


なんでやろ。


よう分からんかった。



ほんなら、

前の脚で進むしかなかった。


ずる。


ずる。


少し進む。


休む。


また進む。


お尻は痛かった。


前の脚で進むたびに、

ヒリヒリした。


日に日に痛くなっていく気がした。



ある日から、

あの人がお尻に何か塗るようになった。


冷たい。


でも、

しばらくすると少し楽になる。


あの人は毎日塗ってくれた。


痛いところを優しく触る。


オイラはじっとしとった。



うんちも前みたいには出ぇへんようになった。


出したいのに出ぇへん。


お腹が張る。


気持ち悪い。


そんな時は、

あの人が手伝ってくれた。


しばらくすると出る。


すると少し楽になる。


あの人も、

ほっとした顔をしとった。



おしっこはもっと大変やった。


出したい。


でも出ぇへん。


お腹が苦しい。


落ち着かへん。


何度も体勢を変える。


でもあかん。


なんでやろ。


オイラの体、

どうなってしもたんやろ。


前は走れた。


前はひとりでできた。


今はできへん。


痛いし。


しんどいし。


思うようにならへん。


正直、

辛かった。



車に乗る日も増えた。


友ちゃんが抱っこしてくれる。


ずっと体を支えてくれる。


揺れるたびに、

お尻は痛かった。


でも友ちゃんの腕はあったかかった。


オイラは友ちゃんにもたれて、

じっとしとった。



家に帰ると、

あの人がおった。


前より家におることが増えた気がした。


机の前に座っとる。


時々こっちを見る。


オイラも見る。


目が合う。


すると撫でてくれる。


それが嬉しかった。



夜になる。


目が覚める。


体の向きを変えたい。


でもうまくできへん。


少し動く。


すると、

あの人か友ちゃんが起きてくる。


体を直してくれる。


毛布をかけてくれる。


頭を撫でてくれる。



お尻は痛かった。


しんどかった。


思うように動けへんかった。


不安になることもあった。


でも、


友ちゃんがおる。


あの人がおる。


名前を呼んでくれる。


撫でてくれる。


匂いもする。


声も聞こえる。



朝になる。


オイラは顔を上げる。


友ちゃんがおる。


あの人もおる。


それを見ると安心した。


痛いのは変わらへん。


しんどいのも変わらへん。


それでも、


オイラは前の脚を出した。


ずる。


ずる。


ゆっくりでもええ。


友ちゃんと、

あの人がおる方へ。

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