第二十八章 下半身麻痺との闘い
ある日からやった。
後ろの脚が、
思うように動かへんようになった。
立とうとしても、
すぐに崩れてしまう。
何回もやってみた。
でもあかんかった。
なんでやろな。
よう分からんかった。
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ほんなら、
前の脚を使うしかなかった。
腹を床につけて、
前の脚だけで進んだ。
ずる。
ずる。
少し進む。
休む。
また進む。
友ちゃんがおる。
あの人がおる。
せやから進む。
お尻は痛かった。
ヒリヒリした。
それでも進んだ。
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しばらくすると、
おしっこも変になった。
出したいのに出ぇへん。
なんや気持ち悪い。
あの人が腹のあたりを触る。
少し押される。
すると、
おしっこが出る。
変な感じやった。
でも、
あの人は毎日やってくれた。
せやから、
オイラはじっとしとった。
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腰のまわりに、
何か巻かれるようになった。
最初は気になった。
でも、
まあええかと思った。
友ちゃんもおるし、
あの人もおる。
それで十分やった。
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夜になると、
目が覚めることがあった。
静かやった。
友ちゃんも寝とる。
あの人も寝とる。
オイラは少し動く。
カタ。
カタ。
前の脚で床をかく。
壁に当たる。
向きを変える。
また進む。
カタ。
カタ。
家の中に、
その音だけが響いとった。
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ある夜やった。
あの人が起きてきた。
床を拭いとる。
どうやらオイラが、
うんちをしてしもたらしい。
あの人は眠そうな顔をしながら、
黙って拭いとった。
しばらくして、
「おいおい、何時だと思ってんだよ!」
って言うた。
オイラは顔を上げた。
呼ばれたんかな。
そう思って、
あの人を見た。
すると、
あの人は急に笑った。
なんで笑っとるんか、
よう分からんかった。
せやから、
オイラはそのまま見とった。
すると、
「ったく、おまえはなぁ」
そう言いながら、
頭を撫でてくれた。
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それからも毎日やった。
思うようには動かへん。
お尻は痛い。
しんどい時もあった。
それでも、
水を飲みに行く。
友ちゃんを見に行く。
あの人を見に行く。
撫でてもらう。
匂いを嗅ぐ。
それを繰り返した。
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朝になる。
友ちゃんの匂いがする。
あの人の匂いがする。
いつもの匂いやった。
オイラは少し安心する。
そしてまた、
前の脚を出す。
ずる。
ずる。
ゆっくりでもええ。
あの人と友ちゃんがおる方へ。




