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第十八章 師匠を訪ねて

暑い夏の日やった。


空は青くて、

道はじりじり熱を持っていた。


お盆の前、

オイラたちは東村山いう街へ来た。


あの人にとって、

昔を思い出す場所らしい。


公園に入ると、

そこには見たことのない銅色のおっちゃんがおった。


片手を前に出して、

なんとも変な格好をしている。


でも、

友ちゃんはその姿を見た瞬間に笑った。


あの人も笑っていた。


オイラはよくわからんまま、

その銅像を見上げた。


すると風が吹いた。


夏の匂いの混じった風が、

オイラの毛をふわっと揺らす。


その瞬間やった。


なんや知らんけど、

「アイーン!」

って声が空から飛んできた気がした。


オイラ、思わず口を前に突き出した。


すると友ちゃんが吹き出した。


「あっ、寅までアイーンしてる!」


あの人も笑っていた。


笑い声が、

真夏の空へ抜けていく。


オイラは昔から、

ちょっとしゃくれとる。


子どもに

「この子しゃくれてるー!」

って言われることもあった。


でも、

みんな笑ってた。


友ちゃんも、

あの人も笑ってた。


だからオイラは、

それは悪いことやないんやと思ってた。


むしろ、

笑ってもらえるならええやんって。


銅像のおっちゃんも、

きっとそういう人なんやろな。


人を笑わせる人。


あの人は銅像を見ながら、

少し遠い目をしていた。


この街で昔を過ごしたんやろう。


風の匂いを嗅いでたら、

なんとなくわかった。


懐かしい場所の匂いは、

歩き方でわかる。


あの人の足取りは、

少しだけ若返っていた。


しばらくして、

オイラたちは公園を歩き出した。


蝉の声が大きい。


アスファルトは熱い。


でも、

友ちゃんもあの人も笑っていた。


オイラは時々振り返りながら歩いた。


ちゃんとついて来とるか確認するためや。


その背中越しに、

また風が吹いた。


笑い声は、

不思議や。


人と人をつなぐ。


そして、

命と命までつないでいく。


オイラは難しいことはわからへん。


でもあの日、

東村山の空の下で、

みんなが笑っていた。


それだけは、

ちゃんと覚えてる。

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