第5話 魔法に強い亀らしいんですが、反射するなんて聞いてません
「俺が!?」
思わず声が裏返った。
《岩殻大亀》
《危険度:中》
《特性:高魔力耐性》
目の前に浮かぶ文字をもう一度読む。
間違ってない。
高魔力耐性。
その横では、リュネリアが微妙に視線を逸らしていた。
「リュネリア」
「はい!」
「高魔力耐性って、やっぱりまずい?」
「いいえ!」
今度は即答だった。
「魔力への耐性が高いというだけでしたら、問題ありません!」
「……いけるの?」
「はい!」
自信満々。
さっきの間は何だったんだ。
「耐性にも限度はございますので、それ以上の威力で撃ち抜けばよろしいかと!」
「解決方法が力技すぎない?」
「得意です!」
「だろうな!」
壁を見れば分かる。
むしろ得意すぎる。
――ズゥン。
また地面が揺れた。
俺たちは揃って入口側を見る。
ズゥン。
ズゥン。
音が近づいてくる。
牙狼みたいな速さはない。その代わり、一歩ごとに石床へ重い振動が伝わってきた。
「……来る」
「マスター、私の後ろへ!」
リュネリアがすぐ俺の前へ出た。
さっきまで壁に穴を開けて俺に怒られていた少女と同一人物とは思えないくらい、その動きには迷いがない。
俺も反射的に一歩下がる。
「…………」
そして止まった。
いや。
待て。
このままでいいのか、俺。
確かに俺は弱い。
さっきの牙狼三体だって、罠がなかったら一体目で死んでいた可能性が高い。
だから戦える奴がいるなら任せる。それ自体は合理的だ。
合理的なんだけど。
俺の前には女の子。
その後ろに俺。
さっきから俺がやっていることといえば、リュネリアが壁を壊したら文句を言い、魔法が強すぎたら文句を言い、敵が来たら後ろへ下がる。
「…………」
これ。
傍から見たら、めちゃくちゃ嫌な男じゃない?
働く女の子の後ろで安全だけ確保して、口だけ出してる奴じゃん。
下手したらヒモである。
いや、まだ会って一時間も経ってないのにヒモになるな俺。
「マスター?」
俺が動かないので、リュネリアが振り返った。
「どうされました?」
「……俺も戦う」
「え?」
「俺もできること探す」
女の子一人に全部任せて、後ろから「そこ壊すな!」「火力強すぎ!」と叫んでいるだけなのは、さすがにちょっと寂しい。
俺にだって男としてのプライドくらいはある。
大したものじゃないけど。
百円くらいの価値はある。
たぶん。
「ですが、マスターは――」
リュネリアが何か言いかける。
「弱いのは分かってる!」
「まだ何も言ってません!」
「顔が言ってた!」
「言ってませんよ!?」
「じゃあ何て言おうとした!?」
「危険ですので、無理はなさらないでくださいと!」
「優しさだった!」
余計に惨めになった。
でもいい。
無理に前へ出て邪魔するのは違う。
俺は俺にできることを探す。
戦える奴がいるからって、全部そいつに丸投げするのとは別だ。
やがて、入口の向こうから巨大な影が現れた。
「……亀?」
亀だった。
たぶん。
ただし、俺の知っている亀とはサイズが違う。
甲羅だけでも軽自動車くらいありそうな巨体が、四本の太い脚でゆっくりと進んでくる。甲羅は岩そのものにしか見えず、灰色の表面は何層にも重なり、ところどころ尖った突起まで生えていた。
頭も普通の亀よりずっと厳つく、嘴みたいな口が石床を擦るたびに嫌な音がする。
「でっか……」
牙狼も十分怖かった。
でも、こいつは別方向に嫌だ。
どう見ても硬い。
俺が蹴ったら、向こうが痛がるより先に俺の骨がバキバキになるだろう。
岩殻大亀がこちらを見た。
「…………」
一歩。
ズゥン。
「遅いな」
「そのようですね」
一歩。
ズゥン。
「……これ、逃げればよくない?」
「マスター?」
「いやだって遅いし」
俺が歩いても逃げられそうだ。
わざわざ戦う必要ある?
そう思った直後。
岩殻大亀が入口の壁へ身体をぶつけた。
――ゴッ!!
石が砕けた。
「…………」
もう一度。
――ゴンッ!!
亀裂が広がる。
「ダンジョン壊してる!」
「そのようですね!」
「何でちょっと嬉しそうなの!?」
「私だけではなかったので!」
「安心するところじゃねえよ!」
仲間を見つけたみたいな顔すんな!
「とにかく止めるぞ! このままだと入口なくなる!」
「はい!」
リュネリアが前へ出る。
俺も少し離れたところから岩殻大亀の動きを見る。
戦うと言った以上、せめて何か見つける。
足。
首。
甲羅。
動く速度。
どこかに弱そうなところはないか。
「マスターは下がっていてください!」
「見るくらいはさせろ! 何か分かるかもしれない!」
「分かりました! ですが危険でしたらすぐに逃げてください!」
「了解!」
リュネリアが右手を岩殻大亀へ向ける。
光が集まり始めた。
「待って」
「はい?」
「さっきみたいなの撃たないよな?」
「もちろんです!」
「壁消したやつ」
「撃ちません!」
「その後、石の後ろの壁まで消したやつ」
「撃ちません!」
「よし」
信用しよう。
……たぶん。
「では、少しだけ強めにいきます!」
「少しだけな!」
リュネリアの手のひらに光が集まる。
今度は拳くらい。
さっきの練習より明らかに大きい。
「それ少し?」
「相手が硬そうですので!」
「まあ……必要なら」
高魔力耐性。
普通の魔法なら効きにくいんだろう。
でも、リュネリアは希少種。
しかも本人が問題ないと言っている。
だったら、まずは任せる。
「いきます!」
光が放たれた。
速い。
目で追えたのは一瞬だった。
白い閃光が一直線に走り、岩殻大亀の甲羅へ直撃する。
――バァン!!
「おおっ!」
爆発。
岩殻大亀の巨体がわずかに揺れた。
効いた。
そう思った。
次の瞬間。
甲羅の表面を光が走った。
「……え?」
何かがおかしい。
当たった光が消えていない。
岩みたいな甲羅の上を滑るように移動し、その向きが変わる。
こっちへ。
「マスター!!」
リュネリアが叫んだ。
直後、身体を横から突き飛ばされる。
「うわっ!?」
床へ転がった。
ほぼ同時に、さっきまで俺が立っていた場所を白い光が通過する。
――ドォン!!
背後の壁が爆発した。
「いっ……!」
耳が鳴る。
何が起きた?
顔を上げる。
壁に。
また穴が開いていた。
「…………」
本日三個目。
いや、今はそこじゃない。
「マスター!」
リュネリアが駆け寄ってくる。
「お怪我は!?」
「大丈夫……たぶん」
身体を確認する。
痛いのは転がったところだけ。
光には当たっていない。
リュネリアが押してくれなかったら――。
俺は穴を見る。
「……リュネリア」
「はい」
「今の、何?」
「私にも分かりません」
珍しく声から明るさが消えていた。
リュネリアも岩殻大亀を見ている。
その表情は真剣だった。
その時。
《敵性個体情報を更新》
俺の目の前に文字が浮かんだ。
《追加特性を確認》
《岩殻反射》
《甲羅に到達した魔力攻撃の一部を反射》
「…………」
反射。
「リュネリア」
「はい?」
「新しい情報が出た。あの甲羅、魔法を反射するらしい」
「反射……?」
リュネリアが驚いて俺を見る。
そうか。
「これ、俺にしか見えてないのか?」
「何がでしょう?」
「……なるほど」
今まで当たり前みたいに見ていたけど、システムの表示は俺にしか見えていないらしい。
だったら、俺が伝えないと駄目だ。
これも俺にできることだな。
ほんの少しだけ、ヒモから遠ざかった気がする。
俺は背後の壁に開いた穴を見る。
そしてリュネリアを見る。
「……ちなみに」
「はい」
「今の、俺に当たってたら?」
「…………」
「リュネリア?」
彼女は少し黙った。
それから、とても言いづらそうに口を開く。
「マスター。大変申し上げにくいのですが……」
「その前置きもう嫌なんだけど!?」
「おそらく、消し飛んでいました」
「俺が!?」
「はい……」
怖っ!!
何で仲間になって一日目で味方の魔法に殺されかけてんだよ!
「申し訳ありません……!」
リュネリアが俯いた。
「いや、お前が助けてくれたんだから――」
「私がもっと注意していれば……!」
「リュネリア?」
周囲に光が浮かび始めた。
「マスターを危険な目に遭わせてしまうなんて……私、マスターのお役に立つと申し上げたばかりなのに……!」
光が増える。
一つ。
二つ。
十個。
「待って」
「本当に、申し訳ありません……!」
空気が震え始めた。
「待って待って待って!?」
リュネリアの髪がふわりと浮く。
さっき見た。
これ。
魔力が集まってる時のやつ!
「落ち着けリュネリア! 俺、生きてるから!」
「ですが……!」
「怪我もしてない! お前が助けた! むしろファインプレー!」
「ファイン……?」
「最高の動きだった! 百点! いや百二十点!」
光が少し弱まった。
効いてる。
「本当ですか……?」
「本当本当! だから落ち着こう! 反省するたびにダンジョン壊されたら俺が先に泣く!」
「……はい」
光が消えた。
「ふぅぅ……」
危なかった。
敵の攻撃じゃなくて、仲間の申し訳なさでダンジョンが吹っ飛ぶところだった。
何だこの環境。
岩殻大亀はそんな俺たちを気にする様子もなく、ゆっくりこちらへ向きを変えていた。
ズゥン。
一歩。
来る。
「どうする……」
甲羅への魔法は反射される。
だったら。
「リュネリア。もっと強く撃ったら?」
「貫通できる可能性は高いと思います!」
やっぱりできるのか。
高魔力耐性そのものは問題じゃないらしい。
「ただ――」
リュネリアが珍しく言葉を止めた。
「反射される量も増える可能性があります」
「却下」
即答した。
「ですが、貫通するまで威力を上げれば――」
「やめろ!! 何で反射するって分かった後に火力上げようとすんだよ!?」
「貫通してしまえば問題ありません!」
「貫通する前に何割返ってくるか分かんねえだろ!!」
「それは……」
リュネリアが黙る。
「分かんない?」
「はい!」
「元気よく言うな!」
危ない。
やっぱりこいつに火力の判断を全部任せたら駄目だ。
強い。
めちゃくちゃ強い。
でも強いからこそ、失敗した時の被害までデカい。
ズゥン。
岩殻大亀が近づいてくる。
俺はそいつを見る。
甲羅。
魔法を反射する。
じゃあ甲羅じゃなければ?
「リュネリア」
「はい」
「あいつの腹は?」
「腹、ですか?」
「甲羅じゃないだろ」
リュネリアが岩殻大亀を見る。
「……おそらく、甲羅ほどの耐性はありません」
「魔法を返すのは?」
「先ほどのお話を聞く限り、甲羅だけかと」
そうだ。
リュネリアには表示が見えていない。
そこは俺が伝える。
「システムには『甲羅に到達した魔力攻撃を反射』って出てる。だったら腹は対象外のはずだ」
「なるほど!」
リュネリアの顔が明るくなる。
「では、下から撃ち上げれば――」
「どうやって?」
「…………」
亀の腹は床に近い。
しかも、あの巨体。
正面から狙える部分じゃない。
「ひっくり返す?」
「可能かと!」
「できる?」
「力ずくで?」
「お前は魔法禁止!」
「そんな!?」
「反射されるって分かったばっかだろ!」
どうする。
俺は岩殻大亀を見る。
遅い。
重い。
硬い。
甲羅は危険。
でも、腹はたぶん柔らかい。
だったら、腹を見せてもらえばいい。
問題は、どうやってあの巨体をひっくり返すか。
俺が押す?
無理。
蹴ったら俺の骨が増えるだけだ。
リュネリアに押してもらう?
「リュネリア、腕力は?」
「普通です!」
「普通なんだ!?」
そこは怪力じゃないのかよ!
「魔法を使えば持ち上げられると思います!」
「それ、甲羅に触れない?」
「触れますね!」
「駄目じゃん!」
考えろ。
俺にあるもの。
三部屋。
穴だらけの壁。
それから、さっき使った落とし穴。
「…………」
俺は中央の部屋を見る。
牙狼を落とした穴が残っている。
中には三体の死体。
このままでは使えない。
「これ、埋めて新しく作り直せる?」
《可能》
「場所と形は変えられる?」
《DPを消費することで可能》
「深さは?」
《追加消費により変更可能》
俺は岩殻大亀を見る。
あいつは大きい。
普通に落としただけでは、穴にすっぽり入るかもしれない。
それじゃ腹は見えない。
だったら。
全部落とさなければいい。
「……片側だけ」
「マスター?」
「穴に全部落とすんじゃなくて、前脚だけ落としたらどうなる?」
リュネリアが瞬きをする。
俺は床を見る。
前脚が沈む。
巨体が前へ傾く。
後ろ脚は地面に残る。
その状態で横から力を加えたら――。
「転がせないかな」
「……!」
リュネリアも意図に気づいたらしい。
「できると思います!」
「魔法は?」
「甲羅そのものへ術を撃ち込むのではなく、横から風をぶつけるだけでしたら!」
「いけそう?」
「はい!」
よし。
それでいく。
俺は管理画面を開いた。
ポイントはまだある。
「落とし穴、作り直す」
《設置位置を指定してください》
中央の部屋。
岩殻大亀が通る位置を考える。
あいつは遅い。
進む方向も単純。
なら誘導は難しくない。
問題は大きさ。
「幅は……これくらい」
前脚だけが落ちるように細長くする。
《形状変更に追加DPを消費します》
「いくら?」
表示された数字を見る。
「……高っ」
ちょっと迷う。
いや。
死んだらDPどころじゃない。
「やれ」
床が淡く光る。
その間にも、岩殻大亀は近づいてくる。
ズゥン。
ズゥン。
「リュネリア」
「はい!」
「俺があいつを誘導する」
「マスターが!?」
声が大きくなった。
「危険です!」
「分かってる。でも俺がやる」
さっき、自分で決めた。
守られて文句を言うだけにはならない。
俺にはリュネリアみたいな火力はないし、あの亀を殴って倒す力もない。
だからって、何もできないわけじゃない。
「俺が引きつける。お前は横から飛ばす準備」
「ですが……!」
「大丈夫。あいつ遅いし、無茶はしない」
リュネリアは明らかに納得していなかった。
それでも少し迷ったあと、強く頷く。
「……分かりました! ですが危険だと思ったら、すぐに助けます!」
「頼む」
「絶対です!」
「分かったって!」
心配性だな。
いや、俺が弱いからか。
ちょっと悲しい。
俺は落とし穴の向こう側へ移動する。
岩殻大亀の頭がこちらを向いた。
「ほら」
手を叩く。
「こっちだ、デカ亀!」
岩殻大亀が進路を変えた。
ズゥン。
ズゥン。
遅い。
でも近づくと圧がすごい。
俺の身体なんて、踏まれたら終わりだ。
逃げられる距離を確認しながら下がる。
「そのまま……」
穴まであと少し。
岩殻大亀が前脚を出した。
床へ触れる。
一歩。
次。
「来い……!」
前脚が赤い枠へ入った。
床が抜ける。
――ゴンッ!!
岩殻大亀の前半分が一気に沈んだ。
「今!」
「はい!」
リュネリアが両手を横へ振る。
光ではない。
空気が爆発した。
「うおっ!?」
離れていた俺まで吹き飛ばされそうになる。
岩殻大亀の巨体が傾く。
でも。
倒れない。
「足りません!」
「もう一回!」
「はい!」
二発目。
強烈な風が横から叩きつける。
岩殻大亀が踏ん張ろうとするが、前脚は穴の中。
巨体がさらに傾いた。
「もうちょい!」
「では少し強く!」
「少しだぞ!」
「はい!」
嫌な予感。
「リュネリア、少し――」
――ドォン!!
「強すぎぃぃぃ!!」
岩殻大亀が浮いた。
一瞬。
本当に浮いた。
巨大な身体が横へ転がり、石床へ背中から叩きつけられる。
――ズシィィン!!
床が揺れた。
俺は壁へしがみつく。
「……やった?」
仰向け。
岩殻大亀の四本の脚が宙でもがいている。
その中央。
甲羅に守られていない腹が、完全に露出していた。
「リュネリア!」
「はい!」
「腹ならいける?」
彼女の表情が一瞬で変わった。
さっきまでの慌てた様子が消える。
露出した腹を見る。
距離を測る。
そして俺の位置まで確認した。
「いけます」
声が静かだった。
「反射は?」
「ありません」
「一撃で?」
「十分です」
さっきまでとは違う。
こいつ。
本当に戦えるんだ。
リュネリアが右手を向ける。
小さな光が灯った。
「……リュネリア」
「はい」
「今度こそ軽くだぞ」
「はい」
「本当に軽く」
「お任せください」
「その返事が怖いんだよ!!」
光が走った。
今度は爆発すら起きなかった。
細い一条の光が岩殻大亀の腹へ吸い込まれ、その巨体が一度だけ大きく震える。
それだけ。
数秒後。
四本の脚から力が抜けた。
《岩殻大亀を討伐》
「…………」
俺は表示を見る。
次に岩殻大亀を見る。
最後にリュネリアを見る。
「……終わり?」
「はい!」
いつもの笑顔に戻った。
「終わりました!」
「一発じゃん」
「腹部は魔力耐性も低かったようです!」
やっぱり強い。
高魔力耐性?
それだけなら問題ない。
こいつは普通に、その上から撃ち抜ける。
ただ。
反射されると。
俺が死ぬ。
「……なるほど」
少し分かってきた。
リュネリアは強い。
たぶん、俺が思っているよりずっと。
でも、強ければ何でもできるわけじゃない。
撃てない相手もいる。
撃っちゃいけない場所もある。
何より、本人が力技でどうにかできるからこそ、力技でどうにかしようとする。
だったら。
俺が考えればいい。
どうすれば安全に撃てるか。
どこへ撃てばいいか。
その状況をどう作るか。
さっきまで俺一人で罠を使っていた時とは、少し違う。
俺だけじゃ倒せない。
リュネリアだけでも危ない。
でも二人なら、できることは増える。
少なくとも。
後ろから文句だけ言うヒモよりは、一歩くらい前進できただろう。
《勝利を確認》
「…………」
金色の文字が浮かんだ。
《固有能力《勝者特権》を発動します》
「…………」
三つの光。
俺の口元が勝手に緩んだ。
「マスター?」
リュネリアが不思議そうに俺を見る。
「どうされたのですか?」
「いや」
落ち着け。
俺。
さっき死にかけたばかりだぞ。
報酬を見て喜んでる場合じゃない。
でも。
三つ。
また三つ出る。
「……別に楽しみにしてたわけじゃないぞ」
「私、何も聞いていませんが」
「…………」
リュネリアが俺を見る。
「マスター?」
「見るぞ」
「はい?」
「報酬!」
三つの光が、ゆっくりと形を作り始めた。




