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『ダンジョンで勝つたび三択報酬 ~弱小マスターの俺、希少種族の問題児ばかり引き当てて最強勢力になっていた~』  作者: 0JOY0
第一章 ダンジョンマスターになったんですが、最初の仲間が強すぎます

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第4話 希少種を引いたんですが、俺のダンジョンが消し飛びそうです

 光が弾けた。


視界が真っ白になる。


「うわぁぁぁぁ!?」


咄嗟に顔を腕で覆った。


熱いわけじゃない。


痛くもない。


ただ、目を閉じているのに分かるくらい、とにかく眩しい。


石の床が震え、空気が一気に押し出された。


――ドォン!!


遅れて、腹の底まで響く音。


「…………」


静かになった。


いや。


静かすぎる。


俺は恐る恐る腕を下ろした。


最初に見えたのは、白い煙だった。


その向こうにリュネリアが立っている。


「…………」


立っているというか。


転んだ姿勢のまま、両手を床についていた。


銀白色の髪が顔にかかっている。


その姿だけなら、ちょっと派手に転んだ女の子にしか見えない。


問題は。


「……壁」


俺の声が震えた。


リュネリアのすぐ横。


そこにはさっきまで、石壁があった。


今はない。


正確には、丸く抉れていた。


人一人くらいなら余裕で入れそうな穴が開き、その周囲では砕けた石がぱらぱらと落ち続けている。


「…………」


俺は穴を見る。


リュネリアを見る。


もう一度、穴を見る。


「え?」


意味が分からない。


転んだんだよな?


何で壁に穴開いてんの?


「マ、マスター……」


リュネリアがゆっくり顔を上げた。


目が合う。


ものすごく気まずそうだった。


「大変申し上げにくいのですが……」


「うん」


「少々、力が漏れてしまいました」


「少々!?」


思わず穴を指差した。


「壁なくなってんだけど!?」


「なくなってはいません!」


「じゃあどこにある!?」


「…………」


リュネリアが穴を見る。


砕けた石を見る。


俺を見る。


「細かくなりました」


「なくなってんだよ!!」


「申し訳ありません!!」


勢いよく頭を下げた。


その瞬間、彼女の周囲で小さな光が弾ける。


「待って待って! 謝る時に光るな!」


「は、はい!?」


光が消えた。


「何もしなくていい! 今は何もしないのが一番助かる!」


「そんな!?」


なぜ傷つく。


「私、マスターのお役に立つために参りました!」


「来て最初に俺ん家壊してるんだよ!」


「い、家……」


リュネリアが周囲を見回した。


三部屋。


石壁。


罠。


牙狼の死体。


寝床なし。


家具なし。


「…………こちらが?」


「その間は何だよ」


「いえ! 立派なお住まいです!」


「無理して褒めるな!」


俺だって狭いと思ってるよ!


というか第一声が「狭っ」だったよ!


リュネリアは慌てて立ち上がると、今度は転ばないように足元を確認してから俺へ向き直った。


よし。


学習はするらしい。


「改めまして、マスター」


彼女は胸元へ手を添え、今度こそ綺麗に頭を下げた。


「星霊族のリュネリアと申します。召喚に応じ、これよりマスターにお仕えいたします」


さっきまでとは別人みたいだった。


柔らかな声。


整った姿勢。


銀白色の髪の周囲には小さな光が漂っていて、どう見ても普通の人間じゃない。


これが。


星霊族。


希少個体。


「……本当に仲間になってくれるんだよな?」


「もちろんです!」


即答だった。


「何で?」


「え?」


「いや、俺が呼んどいて言うのもあれだけど」


俺は自分を指差す。


「初対面だぞ?」


リュネリアは少しだけ首を傾げた。


「マスターが私を選んでくださったからです」


「それだけ?」


「はい!」


迷いがない。


逆にこっちが困る。


俺は三つの報酬から選んだだけだ。


星霊族が何なのかすら知らなかったし、半分くらいは希少という文字に釣られた。


……半分?


いや、三割くらい。


「……ちなみに、俺が何者か知ってる?」


「ダンジョンマスターです!」


「名前は?」


「存じません!」


「俺の性格」


「これから知ります!」


「目的」


「これから伺います!」


「それでよくそんな信頼できるな!?」


「はい!」


「褒めてない!」


すごいな、この子。


疑うという工程がない。


リュネリアは一瞬きょとんとしてから、困ったように眉を下げた。


「ですが、マスターは私を必要としてくださったのでしょう?」


「それは……まあ」


必要だった。


一人では限界があると思ったから、施設でも大量のポイントでもなく、仲間を選んだ。


「でしたら、私もお応えしたいです」


その言葉には、変な裏がなかった。


本気で言っている。


だからこそ。


俺はさっき開いた壁の穴を見る。


「……もうちょっと安全に応えてほしいかな」


「頑張ります!」


「そこはマジで頼む」


悪い奴ではなさそうだ。


むしろ、かなりいい子に見える。


ちょっと安心した。


いや。


壁は壊されたけど。


でも、これで一人じゃない。


それは思った以上に大きかった。


さっきまで何をするにも俺一人だったし、牙狼が壁を壊して入ってきた時なんて、助けを呼べる相手すらいなかった。


その状況を思えば、多少壁に穴を開けるくらい――。


「マスター!」


「ん?」


「こちら、直しますね!」


リュネリアが穴へ手を向けた。


光が集まる。


「待てぇぇぇ!!」


俺は全力で腕を掴んだ。


「ええっ!?」


「今何しようとした!?」


「星霊術で石を集めて、元の形に戻そうかと!」


「できるの?」


「やったことはありません!」


「やめろ!!」


危ねえ!


今の流れで何で未経験の術を俺の家で試そうとするんだよ!


「でも、このままでは……」


「いい! 穴は後で何とかする!」


「ですが、私が壊してしまったものですし……」


「だからこそ触るな!」


「そんな!?」


しょんぼりした。


罪悪感がすごい。


俺が悪いこと言ってるみたいになるじゃん。


「……とりあえず」


俺は話を変えることにした。


「リュネリアって、何ができるんだ?」


「何が、ですか?」


「戦える?」


「はい!」


さっきよりさらにいい返事だった。


「戦闘は得意です!」


「おお」


それは嬉しい。


俺は戦えない。


正確には、戦ったらたぶん死ぬ。


だから戦える仲間を選んだ意味は大きい。


「どんな感じ?」


「そうですね……」


リュネリアが考え込む。


「星光砲撃、星霊弾、光槍、広域殲滅術式、対大型星術、それから――」


「ちょっと待って」


強そうな単語しか出てこない。


「広域何?」


「広域殲滅術式です!」


「殲滅」


「はい!」


笑顔で言う言葉じゃない。


「どれくらい強い?」


「相手によります!」


「じゃあ、さっきの狼」


俺は落とし穴を指差した。


「洞窟牙狼ってやつ。三体倒すのに結構苦労したんだけど」


リュネリアが穴を覗き込む。


「ああ」


「ああ?」


「この程度でしたら、問題ありません!」


「……三体同時でも?」


「はい!」


即答。


「十体」


「問題ありません!」


「百体」


「大丈夫です!」


「千体」


「少し広い場所が欲しいです!」


「数の問題じゃなくなった!?」


何こいつ。


本当に強いの?


いや、さっき壁を消したのを見る限り、火力があるのは間違いない。


「じゃあさ」


ちょっと試したくなった。


「軽く見せてもらうことってできる?」


「もちろんです!」


リュネリアの顔が輝く。


「お任せください!」


「待って」


俺は先に釘を刺す。


「軽くだぞ」


「はい!」


「本当に軽く」


「はい!」


「壁壊さない」


「はい!」


「天井も壊さない」


「はい!」


「床も」


「もちろんです!」


「俺も」


「絶対に傷つけません!」


よし。


ここまで言えば大丈夫だろう。


「じゃあ……あそこ」


俺はさっきリュネリアが開けた穴の向こうを見る。


偶然なのか、穴の先にも少し空間があった。


その奥。


壁から突き出した石が見える。


大きさはバスケットボールくらい。


「あの石だけ壊せる?」


「はい!」


リュネリアが一歩前へ出る。


右手を伸ばした。


指先に、小さな光が灯る。


おお。


今度は小さい。


ビー玉くらい。


これなら大丈夫そうだ。


「この程度でしたら、ほんの少しだけ――」


光が圧縮された。


キィィン、と耳の奥へ刺さるような音が鳴る。


「……リュネリア?」


「はい?」


光が明らかにさっきより明るくなっている。


「それ、ほんの少し?」


「はい!」


さらに明るくなった。


「待って。何か育ってない?」


「威力を抑えるため、圧縮しております!」


「圧縮したら強くならない!?」


「…………」


リュネリアの目が少し泳いだ。


「なるかもしれません!」


「止めろぉぉぉ!!」


「えっ!? でももう術式が――」


「何で撃つ前に止められなくなってんだよ!?」


「だ、大丈夫です! 目標はあの石だけです!」


「その台詞がもう怖い!」


「いきます!」


「いくなぁぁぁ!!」


光が放たれた。


細い。


驚くほど細い光だった。


俺の横を抜け、穴の向こうへ一直線に走る。


狙い通り。


石へ当たった。


一瞬だけ。


「お?」


何も起きない。


石が小さく光っただけ。


「……成功?」


「はい!」


リュネリアが嬉しそうに振り返った。


「今回は完璧です!」


「おお!」


やればできるじゃん!


俺がそう思った瞬間。


――ズズッ。


「…………」


奥から音がした。


リュネリアの笑顔が固まる。


「今の何?」


「…………」


「リュネリア?」


「マスター」


急に丁寧になった。


嫌な予感。


「大変申し上げにくいのですが……」


「またそれ!?」


――ドゴォォォン!!


石があった場所から、その奥の壁までまとめて吹き飛んだ。


爆風が穴を抜け、俺の髪を後ろへなびかせる。


石の破片がぱらぱらと落ちてきた。


煙が晴れる。


「…………」


さっきまで石があった。


今は。


その後ろに、結構な奥行きの穴が開いている。


「…………」


俺はリュネリアを見る。


リュネリアも俺を見る。


「石だけって言ったよな?」


「はい」


「石、どこ?」


「…………」


リュネリアが穴を見る。


俺も見る。


「消し飛びました」


「後ろの壁もな!!」


「申し訳ありません!!」


「だから勢いよく謝るな! 何か出そうで怖い!」


「す、すみません!」


「小声ならいいって話じゃない!」


俺は頭を抱えた。


強い。


間違いなく強い。


俺が三体相手に必死で罠を使っていた洞窟牙狼なんて、たぶん本当に一瞬なんだろう。


希少個体。


大当たり。


少なくとも戦力として見れば、とんでもないものを引いた。


ただし。


「……一個聞いていい?」


「はい!」


「細かい威力調整、苦手?」


「…………」


リュネリアが目を逸らした。


「リュネリア?」


「……少しだけ」


「どのくらい?」


「少しだけ、とても苦手です」


「どっちだよ!」


「ですが!」


勢いよく俺を見る。


「もっと練習します! マスターのお役に立てるよう、必ず完璧に使いこなしてみせます!」


真っ直ぐな目だった。


本気なんだろう。


やる気もある。


強い。


性格もいい。


俺を裏切る気配も今のところない。


完璧じゃん。


一点を除けば。


俺は二つに増えた壁の穴を見る。


「……まず、俺のダンジョンを壊さない練習からな」


「はい!」


元気な返事。


ちょっと不安だけど。


それでも。


悪くない。


最初の勝利で手に入れた、最初の仲間。


俺が三択から自分で選んだ、希少種。


星霊族リュネリア。


これからどんな奴が相手でも、こいつの火力があれば――。


《警告》


「…………」


赤い文字が浮かんだ。


やめろ。


その色。


さっき見た。


《新たな敵性反応を確認》


「早くない!?」


俺、まだ仲間と自己紹介しただけなんだけど!?


《敵性個体数:1》


一体。


さっきより少ない。


なら。


俺は隣を見る。


リュネリアも表示を見ていた。


「マスター!」


その顔が輝く。


「私にお任せください!」


「おお」


さっきまでなら絶望していた。


でも今は違う。


こっちにはリュネリアがいる。


「いける?」


「もちろんです!」


頼もしい。


やっぱり三番を選んで正解だった。


《敵性個体情報を更新》


新しい文字が浮かぶ。


《岩殻大亀》


《危険度:中》


「……中」


さっきの牙狼は低だった。


ちょっと嫌な感じがする。


続けて情報が表示された。


《特性:高魔力耐性》


「…………」


俺は表示を見る。


リュネリアを見る。


リュネリアも表示を見る。


そして俺を見る。


「マスター!」


「うん」


「私にお任せください!」


「今ちょっとだけ間あったよな?」


「ありません!」


「目泳いでるぞ」


「泳いでいません!」


「じゃあ何で俺じゃなくて壁見てんの?」


「壁を守らなければと思いまして!」


「急に意識高くなったな!?」


遠くから。


――ズゥン。


重い音が響いた。


さっきの牙狼とは明らかに違う。


一歩進むだけで、地面そのものが震えているような音。


リュネリアの笑顔が、ほんの少しだけ引きつった。


「……リュネリア」


「はい!」


「一応聞くけど」


もう一度、赤い文字を見る。


《高魔力耐性》


そして俺は、嫌な予感しかしないまま尋ねた。


「お前、あれ倒せるよな?」


「…………頑張ります!」


「そこは即答してくれよぉぉぉ!!」

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