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『ダンジョンで勝つたび三択報酬 ~弱小マスターの俺、希少種族の問題児ばかり引き当てて最強勢力になっていた~』  作者: 0JOY0
第五章 どうやら商会に喧嘩を売られたみたいです

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第39話 大人数で来たことを、そろそろ後悔してもらいます


開いた通路の先へ、グレゴールたちが入ってくる。


先頭の冒険者たちは、床を確かめ、壁を叩き、天井まで見上げていた。セイルも、ラウゼンも、ドーガンも消えた以上、誰か一人に任せて進むわけにはいかないらしい。


慎重なのは結構。


ただし、慎重すぎる。


「遅い」


「警戒しているんですよ」


「もう少し、こう……サクサク入れない?」


「無茶言わないでくださいよ。ここまで三人とも戻ってないんですよ?」


「そこを何とか」


「何とかする理由が向こうにないでしょう!」


それはそうなんだけど。


こっちは昨日から待ってるんだよ。


監視画面の向こうで、ようやく十人目が広間へ入った。


十五人。


二十人。


まだだ。


「マスター」


「まだ」


「まだ何も言っていません」


「どうせ柱の話だろ!」


「はい」


やっぱりか。


俺の隣では、リュネリアが広間中央の石柱をずっと見つめている。


獲物を狙う目ではない。


「あとで壊していい」と約束されたものを、律儀に待ち続けている目だ。


ラウゼンの障壁を見つけた時も、こいつは正面から壊せると言った。それを俺が止めて、天井を撃たせた。


その後もずっと我慢させている。


……合図した瞬間、変な反動が来ないよな?


『止まれ』


ハイゼンの声が広間に響いた。


一団の足が止まる。


『広すぎます。先ほどまでとは構造が違う』


「余計なことを言うなよ、あのおっさん!」


「それが仕事でしょう!」


『ここへ誘導されている可能性があります』


バレている。


いや、当然か。


ここまで露骨に誘導してきたのだから。


『進め』


グレゴールが言った。


俺は思わず拳を握る。


「よし!」


止まっていた連中が、グレゴールに続いて再び広間へ入ってくる。


二十五。


二十八。


三十。


十分だ。


最後尾が広間へ踏み込んだ瞬間、俺は入口を閉じた。


轟音とともに巨大な石壁が落ちる。


『罠だ!』


「遅い!」


思わず叫んでしまった。


ケインがこちらを見る。


「今の、必要でした?」


「気持ちよかった」


「でしょうね」


向こうには聞こえていない。


たぶん。


俺はそのまま広間の仕掛けを起動した。


床に無数の線が走り、一枚だった床がせり上がり、沈み、ずれ、広間全体が複数の細長い足場へ分断されていく。


『床が動くぞ!』


『散れ!』


「そう、それ!」


『固まるな!』


「あっ、それは違う!」


「何で向こうの動きに注文つけてるんですか!」


三十人以上が一斉に動いた。


前へ逃げようとした男が仲間にぶつかり、横へ避けた男が別の槍に引っ掛かる。その槍を避けた男が足場の端で踏み止まったところへ、さらに後ろの男が突っ込んだ。


一人が転び、避けようとした二人がぶつかり、その二人を避けた奴が別の足場へ移ろうとして、今度は後ろから怒鳴られる。


人数が多い。


だから動けない。


その光景を見た瞬間、俺は椅子から立ち上がった。


「ふはははははっ!」


「うわっ!?」


「いいぞ! もっと邪魔し合え! そうだ、それでいい! 全部計画通りだ!」


思わず両腕まで広げてしまう。


昨日、何度も床を動かして調整した甲斐があった。


四十七人?


多い?


だから何だ。


多ければ多いほど、狭い足場では隣の奴が邪魔になる!


「見ろケイン! あいつ今、味方の槍が邪魔で剣抜けてないぞ!」


「分かりましたから座ってください!」


「そっちは三人まとめて詰まった! ふはははは! 俺の勝ちだぁ!」


「まだ勝ってません!」


「今だけ言わせろ! 気持ちいいんだよ!」


完璧だ。


これだ。


俺はこれを見るために、昨日あんな面倒な仕掛けを作ったんだ!


『動くな! 同じ足場の者同士で固まれ!』


ハイゼンの指示が飛ぶ。


混乱していた連中が、少しずつ動きを止め始めた。


俺は真顔で座った。


「……あのおっさん嫌い」


「感情の落差がすごいですね」


「敵の有能は嫌いだ」


味方に欲しい。


敵にはいらない。


「ネイラ」


「うん」


「右から二番目」


ネイラの姿が消えた。


次の瞬間、悲鳴が上がる。


一人が倒れ、振り向いた二人目の懐へ潜り込み、三人目が剣を抜いた時には、もう背後に回っていた。


『いたぞ!』


『そっちだ!』


別の足場から声だけが飛ぶ。


だが、助けには来られない。


間には穴がある。


また俺の口元が上がった。


「ふっ……」


「やめてくださいね」


「まだ何もしてないだろ」


「さっき見たので」


何だよ。


笑うくらいいいだろ。


完璧なんだから。


――そう思った。


「マスター」


「まだ」


「ネイラさんがいます」


「……何?」


リュネリアが中央の柱を指した。


「今撃つと、ネイラさんも巻き込みます」


「あ」


そうだった。


「ネイラ! 一度戻って!」


「分かった」


返事が遠くから返ってくる。


直後、ネイラが別の足場へ飛び移った。


「そっちじゃない!」


「?」


「戻って! こっち!」


振り返ったネイラへ、背後から男が斬りかかる。


ネイラは身をかわし、そのまま別の足場へ着地した。


「だから、そっちへ行くなって!」


「敵がいる」


「知ってるよ!」


ネイラが男を蹴り落とす。


「今は倒さなくていい!」


「どうして?」


「リュネリアが撃てないから!」


ネイラがリュネリアを見る。


リュネリアもネイラを見る。


嫌な沈黙が落ちた。


「待て」


何か、とても嫌な予感がする。


「分かった」


ネイラが頷いた。


そして近くにいた男の襟首を掴んだ。


「何が分かった!?」


投げた。


「うわああああ!?」


「何してんの!?」


「どかしてる」


「そういう意味じゃない!」


二人目まで投げ飛ばされたところで、近くにいた男が悲鳴を上げて逃げた。


ネイラの耳が、ぴくりと動く。


「あ」


まずい。


「ネイラ!」


もう遅かった。


逃げる男を追ってネイラが走り、その男が別の集団へ飛び込む。突然飛び込んできた男に驚いた連中まで逃げ、狭い足場の上で混乱が連鎖していった。


「何で増えた!?」


「知りませんよ!」


「ネイラ! 戻って!」


「もう少し」


「何がもう少しなんだよ!?」


さっきまで俺が美しく分断した広間の右半分が、完全な鬼ごっこ会場になった。


『落ち着け! 走るな!』


「そうだぞ! 走るな!」


「何でハイゼンさんと同じこと言ってるんですか!」


「俺の計画を守ってんだよ!」


違う。


こんな予定じゃない。


もっとこう、綺麗に孤立させて、一つずつ潰して――。


「マスター」


リュネリアの声だった。


「ネイラさんが離れました」


見る。


確かにネイラは右端まで移動し、逃げた連中までそちらへ寄っている。


中央が空いた。


「今なら撃てます」


やっとか。


「よし!」


その一言を聞いた瞬間、リュネリアの表情がぱっと明るくなった。


「やっとですね!」


「……ん?」


何だ。


今の「やっと」。


「ずっと待っていました!」


「いや、待て」


「さっきも撃てませんでしたし、その前も止められましたから」


笑顔だった。


ものすごくいい笑顔だった。


俺の背中に冷たいものが走る。


「リュネリアさん、何か光ってません?」


ケインにも見えたらしい。


「おい、ちょっと待て。お前、もしかして我慢してた?」


「はい!」


「そんな元気よく認めるな!」


「でも、今度は壊していいんですよね?」


「いい! いいけど落ち着け!」


「大丈夫です」


リュネリアの周囲へ光が集まり始める。


「やっと、ちゃんと撃てます」


「その言い方怖い!」


「マスターが壊していいって言った場所です」


「言ったけど!」


「ネイラさんもいません」


「そうだけど!」


「じゃあ――」


集まる光が、一段階増した。


リュネリアが嬉しそうに笑う。


「もう我慢しなくていいんですね!」


「威力は我慢しろぉぉぉぉ!!」


閃光。


轟音。


監視画面が真っ白に染まった。

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