↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ダンジョンで勝つたび三択報酬 ~弱小マスターの俺、希少種族の問題児ばかり引き当てて最強勢力になっていた~』  作者: 0JOY0
第四章 二人目を召喚したんですが、群れの外では問題児でした

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/48

第25話 ランキングなんてあったんですが、見なかったことにしました


どうやら俺が思っていたよりずっと大きな場所へ向かって、後戻りできなくなったらしい。


そんな事実を知ったところで、目の前の問題が消えてくれるわけではない。


ガルガン商会の跡取りを殺した。


その商会の後ろには、俺たちより何年も前から存在しているダンジョンマスターがいるかもしれない。


確認したいことはいくらでもあったけれど、今すぐ答えが出るものばかりでもない。


だからまずは、さっきから俺の視界の端で存在を主張し続けているものを片づけることにした。


《勝者特権》


戦闘が終わってからずっと浮かんでいた三つの光へ意識を向ける。


「……よし」


「どうしました?」


「報酬見る」


リュネリアがぱっと表情を明るくした。


「今回も三つですか?」


「三つ。相変わらず選ばせる気満々」


「どんなものですか?」


「今から見る」


俺にしか見えていない三つの光へ手を伸ばすと、それぞれの内容が表示された。


《勝者特権》


《以下の報酬から一つを選択してください》


《第一候補――》


俺は順番に内容を読んでいく。


一つ目は、ダンジョン内部に設置できる特殊な防衛設備だった。


侵入者を自動で感知し、一定範囲の情報をダンジョンマスターへ伝える。単純な罠とは違い、敵を倒すものではなく、侵入そのものを早い段階で察知するための設備らしい。


「……これ、普通に欲しいな」


今までなら、侵入者を見つけるには俺たち自身が動くか、仕掛けた罠が反応するのを待つしかなかった。


ネイラが来てから索敵能力は一気に上がったけど、だからといって二十四時間ずっと見張らせるわけにもいかない。


何より、今後ガルガン商会から誰か来る可能性がある。


今の俺たちにはかなり噛み合っている。


「一番、強そうですか?」


「強いっていうか便利。今一番欲しいタイプ」


「では、それにしますか?」


「待って。こういう時の残り二つが大体ずるいから」


前回だって月狼族、迷宮工房、領域索引だった。


一個だけ見て決めると絶対後悔する。


俺は二つ目へ視線を移した。


表示された説明を読み進め、途中で少しだけ眉を上げる。


「……ああ、なるほど」


二つ目は居住区画系だった。


複数の従属個体が生活することを前提に、休息場所や共有設備をまとめて整えられる特殊区画。個別に部屋を増やしていくより効率が良く、一定数以上の配下を抱えるダンジョンなら、かなり便利そうな施設だった。


たぶん普通のダンジョンマスターなら欲しい。


仲間や配下を十体、二十体と抱えているなら、生活環境をまとめて整えられるのは相当大きいはずだ。


でも。


俺は横を見る。


リュネリア。


その隣にネイラ。


終わり。


「……うち、二人しかいないんだよな」


「三人です」


リュネリアが訂正する。


「マスターもいます」


「あ、俺も数えてくれる?」


「当然です!」


嬉しいけど、今はそういう話じゃない。


「でも三人だからなあ」


設備として悪いわけじゃない。


むしろ人数が増えれば増えるほど価値が上がるタイプだろう。


ただ、今の俺たちは少数だ。


しかも部屋そのものなら、確かDPを使って通常の拡張ができたはずだ。今すぐ大人数を住ませる予定もない以上、《勝者特権》を一枠使ってまで取る必要は薄い。


「普通のマスターならかなり欲しいんだろうけど、うちは数少ないからな」


「いらない?」


ネイラが聞く。


「今はいいかな。人数増えて困ってから考えればいいし、普通の部屋ならDPでも増やせたはずだから、とりあえず無視」


二番を頭の中で候補から外す。


こういうのを見ると、改めて他のダンジョンがどうなっているのか気になってくる。


俺はリュネリアとネイラしか召喚していないけど、普通はもっと大量に魔物を抱えるものなんだろうか。


まあ、それは後でいい。


問題は三番だ。


俺は最後の光を見る。


そして、少し黙った。


「……また面倒なの来たな」


「良いものですか?」


「たぶん」


三つ目は設備ではなかった。


一度だけ使用できる特殊権限。


指定したダンジョン設備一つを対象に、その機能を上位段階へ強化する。


新しい何かを手に入れるわけではない。


今持っているものを、一段上へ押し上げる報酬。


対象にできる設備には条件があるらしいが、少なくとも《星泪泉》は候補として表示されていた。


「…………」


《星泪泉》。


リュネリアが《星浴》を使うための施設。


ただでさえ頭のおかしい火力を持っているリュネリアを、さらに安定して動かせるようになる可能性がある。


「マスター?」


「悩んでる」


一番は防衛。


三番は強化。


これからガルガン商会が来るかもしれないことだけを考えれば、一番が分かりやすく安全だ。


でも、《勝者特権》でしか取れない強化を逃していいのかと言われると、それも怪しい。


こういう時に限って、ちゃんと全部欲しい。


「二番は?」


「もう落ちた」


「早い」


ネイラが淡々と言う。


「うちは人数少ないからな。今取っても持て余す」


「じゃあ、一番か三番?」


「そうなる」


俺は二つの表示を交互に見る。


すぐに決めてもいい。


ただ、今までならともかく、今回は状況が違う。


俺たちより前から存在するダンジョンマスターがいる。


その可能性を知った直後だ。


だったら、少しくらい他の連中がどうなっているのか確認してから選んでも遅くない。


「……そういや」


ふと思い出した。


情報板。


最初の頃に少し見て、それ以降ほとんど触っていなかった。


世界中のダンジョンマスター候補が書き込める場所なら、先行組について何か話が出ているかもしれない。


「ちょっと調べるか」


俺は《勝者特権》を保留したまま、情報板を開いた。


相変わらず流れが速い。


攻略情報。


魔物の話。


DPの使い道。


どこかで見つかった施設。


真面目な話の途中に意味の分からない雑談が挟まり、誰かが喧嘩を始めたと思ったら、その横で別の話題が伸びている。


全部追うのは無理だ。


適当に目についたものだけ拾っていく。


その中で、一つの話題が妙に伸びていた。


『中央区画のランキング上位にいる天城って女、接続戦負けたらしい』


俺の指が止まった。


「…………」


天城。


いや。


まさかな。


『天城麻耶奈?』


『そう』


『あいつ負けたの?』


『結果出てる』


『中央の上位だろ』


『総合かなり高かったはず』


『接続戦ってまだ一回しかやってないよな?』


『一回だけ』


『じゃあその一回で負けたのか』


『相手誰?』


『知らん』


『勝った方の情報ないの?』


『少なくともここじゃ出てない』


『ランキング上位食った奴が完全に無名なの怖くね?』


「…………」


俺です。


言わないけど。


絶対に言わないけど。


あの戦いが外からどう見えているのか初めて知った。


麻耶奈がランキング上位だったことも知らなかったし、そもそも――


「ランキング?」


そんなのあったの?


俺は情報板から一度離れ、メニューを探す。


少し触っていると、それらしい項目が本当に出てきた。


《ランキング》


「あるじゃん」


「何がですか?」


「ダンジョンマスターの順位」


リュネリアが俺の隣へ寄ってくる。


もちろん画面は見えていないから、完全に俺の顔を覗き込んでいるだけだ。


「マスターは何位なんですか?」


「待って。今見る」


ちょっとだけ期待した。


麻耶奈に勝った。


防衛戦にも勝った。


《勝者特権》も何度か発動している。


もしかすると、俺が思っているより上だったりするんじゃないか。


ランキングにはいくつか項目があった。


総合。


ダンジョン規模。


保有資産。


勝利数。


従属個体数。


その他にも細かい部門が並んでいる。


「へえ……」


まず総合を見る。


上位には当然知らない名前が並んでいた。


数字だけ見ても、今の俺とはかなり差がある。


さすがにここへ自分の名前が出てくるとは思っていない。


次。


ダンジョン規模。


これも駄目。


まだ部屋も通路も大した数じゃない。


次。


保有資産。


よく分からないけど、たぶん高くない。


そして何となく、従属個体数を開いた。


自分の名前を検索する。


《大隅 詩》


《従属個体数:2》


順位が表示される。


「…………」


かなり下だった。


下というか、もう下の方だった。


周りを見る。


十二体。


十八体。


二十五体。


三十体。


さらに上へ行けば、普通に三桁を抱えている奴までいる。


俺。


二体。


「マスター?」


「見るのやめよ」


そっと閉じた。


「順位は?」


「世の中には知らなくていいこともある」


「低かったんですか?」


ネイラ。


そういうところだけ察しがいいな。


「数じゃないから。こういうの」


「二人しかいませんからね」


「リュネリアまで言うな」


二人とも強いんだからいいだろ。


一人は通路ごと消すし、もう一人は一対一なら護衛を反応する前に沈める。


数だけ見れば二体。


中身を見ろ、中身を。


そう自分に言い聞かせながら、俺はもう一度情報板を開いた。


麻耶奈の話題はまだ続いている。


ただ、その少し下。


別の書き込みが目に入った。


『西側で、何年も前からあるダンジョン見つけたって奴いなかった?』


俺の目が止まる。


さっきまでとは違う意味で。


その書き込みには、すでにいくつか返信がついていた。


『あったな』


『現地人が主いるって言ってたやつ?』


『それ』


『デマじゃなかったの?』


『知らん。でも俺のとこでも似た話聞いた』


俺は黙って続きを追う。


『南の方。昔から近づくなって言われてる迷宮がある』


『どのくらい昔?』


『少なくとも今回より前』


『こっちは十年以上前からあるって言われた』


『待て』


『じゃあ俺ら最初じゃなくね?』


流れていく文字を見ながら、俺はさっきボルドから聞いた話を思い出す。


数年前からいるダンジョンの主。


十年以上前という噂。


同じ話が、別の地域でも出ている。


俺は少し迷ってから、書き込み欄を開いた。


匿名。


名前は出ない。


なら。


『俺も現地人から、数年前からいるダンジョンマスターの話を聞いた』


送信。


数秒。


『どこ?』


『また来た』


『これ地域違うならマジじゃね?』


『今回の四万人が第一世代じゃない説?』


『追加組ってこと?』


『追加組は草』


『笑えねえだろ』


『先行組が十年育ててたらどうすんだよ』


『無理ゲー』


「……だよなあ」


俺もそう思う。


そこから情報板の流れが、一気に変わった。


別の地域で巨大な城みたいなダンジョンを見たという話。


現地人から、昔ダンジョンの主と戦争した国があると聞いた奴。


地下なのに巨大な湖を見つけたという報告。


候補者同士で同盟を組み始めた地域。


何十体もの魔物を従えて移動しているダンジョンマスター。


そして、今回の俺たちとは明らかに関係のない、古いダンジョンの噂。


本当かどうかは分からない。


嘘も混じっているだろうし、勘違いだってある。


でも。


全部が嘘とも思えなかった。


俺がボルドから聞いた情報を一つ投げただけで、世界中から似た断片が出てきた。


今まで俺が見ていたのは、本当に狭い範囲だったらしい。


「……四万人でも多いと思ってたんだけどな」


その外側に、さらに先行組までいるかもしれない。


しかも、今その一人と繋がっている可能性のある商会を敵に回したばかりだ。


俺は情報板を閉じ、保留していた《勝者特権》へ視線を戻した。


一番。


三番。


さっきまでなら、どっちも魅力的だから悩んでいた。


でも今は少し違う。


何年も先を走っている奴が本当にいるなら、目の前の戦いだけを考えて選ぶわけにはいかない。


俺は二つの報酬を見比べる。


「……さて」


ガルガン商会。


その後ろにいるかもしれない、先行ダンジョンマスター。


そして、俺たちがまだ知らない外の世界。


思っていたより、相手はずっと多い。


だからこそ。


次の一手を適当に選ぶわけにはいかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。