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『ダンジョンで勝つたび三択報酬 ~弱小マスターの俺、希少種族の問題児ばかり引き当てて最強勢力になっていた~』  作者: 0JOY0
第3章 他のダンジョンと繋がったんですが、相手が強すぎます

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第19話 三択が全部当たりなんですが、だから一つに絞れません


勝利報酬って最高だ。


そう思った直後、視界を埋めていた第三層の景色がふっと揺らいだ。


壊れた壁も、抉れた床も、粉々になった《模擬核》も輪郭から薄れていき、代わりに見慣れた石壁が浮かび上がってくる。


「わっ」


隣でリュネリアが声を上げた。


俺も足元を確認してから、ゆっくり周囲へ視線を巡らせる。


戻ってきた。


自分のダンジョンだ。


寝床代わりにしている部屋も、その先へ続く通路も、模擬戦が始まる前と何一つ変わっていない。


「……帰ってきたな」


「はい!」


リュネリアも嬉しそうに周囲を見回している。


俺はそれを横目にしながら、小さく息を吐いた。


模擬戦だから壊れても元に戻ると分かっていたし、敵のダンジョンでは好き勝手壊していいなんて言っていたけど、やっぱり自分の場所へ戻ると安心する。


《星泪泉》も無事だし、部屋も通路も元通り。俺たちの身体にも、さっきまで戦っていた痕跡は残っていない。


途中で何度も死にかけた気はするけど、結果だけ見れば完全勝利だ。


しかも、報酬が二つある。


「マスター、すごく嬉しそうですね」


「そりゃそうだろ」


俺はまだ目の前に残っている表示を見る。


「模擬戦そのものの勝利報酬に、《勝者特権》まであるんだぞ」


「二つも貰えるんですね!」


「そこが最高なんだよ」


普通に戦って勝つだけでも嬉しい。


そのうえ報酬まで二重取り。


危険はあったし、何度も痛い目には遭った。対戦相手だった麻耶奈も普通に強かったけど、それでも最後にこれが待っているなら全部許せる気がする。


……次も麻耶奈みたいなのが来たら、ちょっと考えるけど。


表示が切り替わる。


《ダンジョン接続模擬戦・勝利報酬》


来た。


《DP+3,000》


「おお」


三千。


今までの感覚で考えても、かなり大きい。


部屋を増やすこともできるし、罠や設備へ回すこともできる。今までなら一つ増やすだけで悩んでいたものにも、多少は余裕を持って使えそうだ。


さらに、その下へ新しい文字が続いた。


《基本区画拡張権×1》


《基本区画拡張権》


《DPを消費せず、指定した基礎区画を一つ増設できます》


「……普通に当たりだな」


「良かったですね!」


「ああ。三千DPに部屋一個無料はでかい」


これだけでも十分嬉しい。


ダンジョンはまだ狭いし、生活するにも戦うにも場所はいくらあっても困らない。DPを使わず一部屋増やせるなら、その分を別の設備や罠に回すこともできる。


《以上をダンジョン接続模擬戦・勝利報酬として付与します》


表示が消える。


そして、ほとんど間を置かず次の文字が現れた。


《固有能力《勝者特権》》


こっちが本命だ。


俺は思わず姿勢を正した。


「来た」


「三つから選ぶやつですね!」


「そう」


今まで、これには何度も助けられている。


リュネリア。


《星泪泉》。


万能トング。


最後だけ急に生活用品っぽいけど、実際かなり役に立った。


麻耶奈の剣を挟み、罠を遠くから作動させ、魔力障壁の制御石まで抜いた。


見た目以外は十分当たりだ。


だから今回も期待している。


できれば格好いいやつ。


「頼むぞ……」


「何をですか?」


「報酬」


俺は両手を合わせた。


「強いやつ。便利なやつ。あと、できれば見た目もいいやつ」


「最後が大事なんですね」


「大事だろ」


麻耶奈の《戦装錬成》を見た後だから、余計にそう思う。


ああいうのだよ。


異世界の武器って。


剣が変形して、槍や盾へ姿を変える。


俺だって、本当はあっち側が良かった。


大仰に腕を振って召喚されるのが、銀色のトングじゃなくて。


《報酬候補の生成が完了しました》


来た。


視界の中央へ三つの枠が並ぶ。


一つ目。


《希少個体召喚権・月狼族》


「…………」


名前がもう強い。


月。


狼。


希少個体。


男の子が好きそうな単語をまとめるな。


俺は危うくその場で選びかけて、寸前で手を止めた。


駄目だ。


ちゃんと全部見る。


説明を開く。


《希少個体召喚権・月狼族》


《月狼族の中から、特殊な資質を持つ個体一名を召喚します》


《月狼族は夜間・暗所における感覚能力、追跡、索敵、隠密行動に優れます》


《召喚個体の能力・性質には個体差があります》


「……強いな」


というより、欲しい。


今の俺たちに足りていない部分を、かなり綺麗に埋めている。


俺には周囲の気配を探る能力なんてないし、リュネリアも火力こそとんでもないが、罠や待ち伏せを見抜くのが専門というわけじゃない。


今回だって第一層の罠は、俺が一つずつ目で探した。


外へ出れば、失敗しても模擬戦みたいに元には戻らない。


先に敵を見つけ、危険な場所を避ける。必要なら相手に気づかれず近づく。


そういう役が一人いるだけで、探索の安全性はかなり変わる。


でも、まだ一つ目だ。


俺は後ろ髪を引かれながら二つ目へ視線を移した。


《特殊施設・迷宮工房》


説明を開く。


《特殊施設・迷宮工房》


《登録した設計情報と投入素材を用いて、装備・罠部品・生活用品などを自動加工できる特殊施設です》


《加工可能品は設備拡張・設計情報の獲得により増加します》


《初期登録設計:簡易武器/簡易防具/基礎罠部品/生活用品》


「…………これも欲しいな」


普通に強い。


今のダンジョンには、生産設備らしいものがほとんどない。必要なものはDPで用意するか、外で手に入れるしかないのに、これがあれば素材から自分たちで作れるようになる。


武器。


防具。


罠部品。


生活用品。


将来的に人数が増えたり、ダンジョンが広がったりすることまで考えれば、かなり便利だ。


特に罠。


今回、麻耶奈のダンジョンへ入ってよく分かった。


罠は当たらなくても強い。


一つあるだけで警戒しなきゃならないし、避けようとすれば進める場所も限られる。種類を増やせるなら、ダンジョンを守るうえで普通に戦力になる。


「……いや、これも捨てづらいな」


「二つ目も良かったんですか?」


「ああ」


「じゃあ二つ目ですか?」


「まだ三つ目見てない」


できれば最後くらい、少しだけ弱くあってくれ。


そう願いながら三つ目を見る。


《特殊権限・領域索引》


「何だこれ」


説明を開く。


《特殊権限・領域索引》


《自身のダンジョンを中心とした一定範囲について、地形情報の自動記録機能を解放します》


《一度確認した通路・空間・資源地点・危険地点などを地図情報として保存できます》


《探索範囲の拡大に伴い索引領域も拡張されます》


俺はしばらく表示を見つめてから、静かに閉じた。


「マスター?」


「全部欲しい」


「やっぱりですか」


「何で毎回ちゃんと全部強いんだよ……」


一つ目は月狼族。


索敵、追跡、隠密に加えて、新しい仲間まで増える。


二つ目は迷宮工房。


武器、防具、罠、生活用品を作れる生産設備。


三つ目は領域索引。


探索した場所を自動で記録してくれる地図機能。


全部欲しい。


特に三つ目は、外へ出た時にボルドから地図を見せてもらったからこそ価値が分かる。


あの時は地図を手に入れたわけじゃなく、あくまで見せてもらっただけだった。それでも、この地下世界がとんでもなく広いことは十分に分かった。


だから、自分たちで進んだ場所や危険な地点を自動で残せる機能はかなり便利だ。


探索を続ければ続けるほど、価値も上がっていくだろう。


「……三番かな」


試しに口に出してみる。


リュネリアがこちらを見る。


「決まりました?」


「いや」


「違うんですか?」


「言ってみただけ」


何となく違う。


じゃあ二番。


工房も将来性は高い。


ダンジョンを大きくしていくなら、物を作る設備は絶対に必要になるだろうし、罠を自前で増やせるのも魅力的だ。


ただ、今すぐ必要かと言われると、まだ少し早い気もする。


今いるのは俺とリュネリアだけ。


武器だって、リュネリアは使わない。


俺は――。


トング。


……あるな。


認めたくないけど、ある。


だったら。


今、一番足りないものは何だ。


俺はもう一度、一つ目の説明を見る。


《夜間・暗所における感覚能力、追跡、索敵、隠密行動に優れます》


探索。


たぶん、これだ。


今回の模擬戦で、リュネリアがどれだけ強いかは嫌というほど分かった。


麻耶奈が用意していた魔物をまとめて吹き飛ばし、重ねられた防壁まで正面からぶち抜いた。最後なんて、あれだけ固められた防御ごと押し切っている。


火力だけなら、今の俺たちに足りないとはまったく思わない。


むしろ強すぎるくらいだ。


「リュネリア」


「はい!」


「お前さ」


「何でしょう?」


「……いや、何でもない」


「気になります!」


こいつ、強いんだけどな。


素直だし、俺が危なくなれば助けてくれる。今回だって何度も守ってもらったし、戦力として頼りになるのは間違いない。


ただ、ちょっと天然だ。


それに、魔法の威力が強すぎる。


細かく壊してほしい時に任せると周りまで消える可能性があるし、隠れて様子を見たい時に魔法を撃たせれば、たぶん隠れていた意味ごとなくなる。


別に、もう一人リュネリアみたいなやつが欲しいわけじゃない。


むしろ次は、そこまで強くなくてもいい。


ちゃんと意思疎通ができて、自分でも周囲を見て、危険があれば先に気づいてくれる。俺が全部説明しなくても、ある程度は自分で判断して動けるようなやつ。


外へ出るなら、そういう仲間が一人いるだけでかなり違うはずだ。


俺は改めて《月狼族》の説明を見る。


先に相手を見つけ、危険を察知し、必要なら気づかれずに近づくことまでできる。


しかも、その情報が俺に来るなら、そこから先は俺が考えられる。


どこへ進むか、どこを避けるか、どこならリュネリアに撃たせても大丈夫なのか。


今回の麻耶奈戦でもそうだった。


罠を見つけたから止まれたし、相手の配置が見えたから、防御を右へ寄せて反対側へ抜けることもできた。


見えているなら、考えられる。


逆に、見えていないものにはどうしようもない。


「……一番だな」


今度はしっくり来た。


「決まりました?」


「ああ」


俺は一つ目へ指を伸ばす。


「別に希少個体だから選ぶわけじゃないぞ」


「はい」


「月狼族って名前が格好いいからでもない」


「はい」


「今の戦力バランスをちゃんと考えた結果だからな」


「はい」


「何で笑ってんの?」


「笑ってません!」


笑ってるだろ。


絶対。


でも、本当に今回は理由がある。


強いやつなら、もういる。


今の俺たちに必要なのは、リュネリアとは違う意味で頼れるやつだ。


俺が見つけられないものを見つけてくれて、俺より先に危険へ気づいてくれる。


そして、できれば。


普通に話が通じる。


「……頼むから、まともなやつ来てくれよ」


「どういう意味ですか?」


「何でもない」


「今、私を見ましたよね?」


「見てない」


「見ました!」


鋭いな。


そういうところじゃないんだけど。


ともかく、次に欲しいのはもう一発で壁を消し飛ばせるような仲間じゃない。


一緒に外へ出た時、安心して背中を任せられるやつ。


だったら。


これだ。


俺は一つ目へ触れた。


《報酬を選択しました》


《希少個体召喚権・月狼族》


表示が光る。


「よし」


選んだ。


工房も惜しい。


領域索引も惜しい。


たぶん、どっちを選んでも後悔はしなかったと思う。


それでも、今はこれだ。


《召喚可能な希少個体を検索します》


「来るぞ」


「新しい仲間ですね!」


リュネリアが嬉しそうに俺の隣へ寄ってくる。


そういえば、こいつ以来だ。


新しい仲間を召喚するのは。


前は何が出てくるかも分からなかったけど、今回は種族だけなら分かっている。


月狼族。


狼。


人型なのか。


それとも、本当に狼なのか。


「……でかい狼だったらどうしよう」


「格好いいと思います!」


「食費が怖い」


「そこですか?」


そこだろ。


巨大狼が毎日肉を何キロ食うんだ。


いや、そもそも人型でも狼系なら結構食う可能性あるな。


一瞬だけ不安になったものの、もう遅い。


選んだ。


戻せない。


《対象個体を確認》


表示が切り替わる。


《召喚条件を確認》


《召喚地点を指定してください》


俺は周囲を見た。


ここでも呼べる。


でも、何が出てくるか分からない。


リュネリアを召喚した時みたいに、いきなりとんでもないことが起きる可能性だってある。


だったら。


「リュネリア」


「はい!」


「広いところ行くぞ」


「分かりました!」


二人で少し広い部屋へ移動する。


家具らしい家具もなく、壁からも十分に距離がある。これなら、多少大きい何かが出てきても大丈夫だろう。


……多少なら。


俺は部屋の中央を指定した。


《召喚地点を確認》


表示が変わる。


《希少個体召喚を開始します》


その瞬間、部屋の中央に淡い光が灯った。


白銀。


ほんの少しだけ青みを帯びた、冷たい月明かりみたいな光。


「おお……」


「綺麗ですね」


「ああ」


床へ広がった光がゆっくり円を描き、その内側へ見たことのない文字が一つずつ浮かび始める。


光は少しずつ強くなっていく。


俺も、リュネリアも、いつの間にか黙っていた。


《希少個体・月狼族》


俺たちの二人目の仲間。


今度は、強さだけじゃなくて。


ちゃんと頼れるやつだといい。


そんなことを考えているうちに。


光の中央で、何かの輪郭がゆっくりと形を取り始めた。

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