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声の記憶〜私が三歳のときに死んだパパは、明日の私を知っていた〜  作者: ぽんぽこ解放太郎


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Day 6650

Day 6650。


「今日、お前は放課後に図書館に行く。レポートの資料を探す。——見つからない。三十分探して諦める。代わりにネットで調べる」


 聞いてから——学校に行った。


 放課後。図書館に——行こうとして、やめた。


 パパのメモでは「図書館に行く」と言っていた。だから——行かないことを選んだ。


 パパの予測を——外してやろうとした。


 図書館に寄らず帰宅して、ネットでレポートの資料を調べた。


 翌日、Day 6651。


「昨日、お前は図書館に行かなかった。パパのメモを聞いて、わざと行かなかっただろう。——パパにはわかってた。お前が反抗することも。あのメモは、お前が聞いて、逆らうところまで込みで録ったんだ」


「お前が図書館に行かなかったこと。代わりにネットで調べたこと。——Day 6650のメモの中身と、結果は同じだろう? 図書館で見つからなくてネットで調べる。最初からネットで調べる。やったことは同じだ」


 ——同じだ。過程は違うが、結果は同じ。


「お前がパパのメモに逆らおうとしても——結果は変わらない。パパが見たのは結果だから。過程はお前の自由だ。でも結果は——変えられない」


 ——怖くなった。


 結果が、変えられない。


 パパは私の人生の「結果」を全部見ている。


 Day 7301の「結果」も——変えられないのか。


 Day 7301にパパの声が途切れる。理由は言えない。


 ——その「結果」も、変えられないのか。


 図書館の件は些細だ。行っても行かなくても同じ。


 でも——Day 7301は、些細ではない。



   ◆


 パパのメモに——変化が現れた。


 Day 6700。


「日和。パパは——そろそろ、お前に気づいてほしいことがある」


「お前は毎日パパのメモを聞いている。パパの声を聞いている」


「——パパの声を聞いているとき、お前は、パパと一緒にいると感じているか?」


 感じている。


「パパは——お前のそばに、いない。声はある。でも——体はない。顔はない。手はない」


「お前はパパの声を聞きながら、パパの顔を思い浮かべているだろう。写真の顔を」


「でもその顔は——三十五歳で止まっている。パパは三十五歳から歳を取っていない。お前は毎日歳を取っている」


「今、お前は十八歳。パパは三十五歳。十七歳差」


「お前が三十五歳になったとき——パパと同い年になる。そして三十六歳で——パパを追い越す」


「パパは——お前に追い越されることを、とても楽しみにしている。お前がパパより年上になる日を」


「でも——」


「——Day 7301」



   ◆


 大学一年の夏が終わりかけていた。もうすぐ十九歳になる。


 パパのメモは続いている。毎日。


「大学、楽しそうだな。——新しい友達の名前、パパは全部知ってる。言わないけど」


「バイトを始めたか。カフェ。——いいな。パパも学生のとき喫茶店でバイトしてた。——遺伝かな」


 穏やかな日々。パパの声はいつも穏やかだ。


 でも——Day 7301が近づいている。


 あと400日。300日。200日。


 カウントダウン。パパは「カウントアップで生きてほしい」と言った。


 ——無理だ。Day 7301が近づくにつれて、数えるのを止められない。

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