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声の記憶〜私が三歳のときに死んだパパは、明日の私を知っていた〜  作者: ぽんぽこ解放太郎


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5/8

Day 6571

 ——私は計算した。


 Day 1。2006年9月15日。


 Day 7301。——2026年9月15日。


 私の、二十歳の誕生日。


 パパの録音は——二十歳の誕生日で終わる。それ以降は、ない。


 パパが生きて録音した最後の日は——私の三歳の誕生日の前日だった。そして翌日、誕生日に——パパは死んだ。


 そして今度は、私の二十歳の誕生日で——録音が終わる。


 パパは——「お前に会えなくなる日」と言った。


 「会えなくなる」とは——何だ。


 なぜ終わるのか。パパは「理由は言えない」と言った。


 ——私が死ぬからか。


 二十歳の誕生日に。パパが、私の三歳の誕生日に死んだように。


 パパには見えていた。私の人生の最初から最後まで。


 Day 7301が「最後」なら——私の人生は、二十歳で終わるのか。


 ——いや。


 パパは「お前に会えなくなる日」と言った。「お前が死ぬ日」とは言っていない。


 パパの「見える能力」が7301日で途切れるだけかもしれない。能力の限界。


 あるいは——パパの「どこにもない場所」での存在が、7301日で消えるのかもしれない。パパの魂の期限。


 私が死ぬのではなく——パパが消える日。


 ——どちらだ。


 パパは言わなかった。


 聞くことも——できない。パパはもういない。


 ボイスメモに質問することはできない。一方通行。パパが語り、私が聞く。


 ——質問できない相手の声を、毎日聞く。


 パパは全部知っている。私は何も知らない。


 ——それでも、毎日、聞く。



   ◆ Day 6571〜


Day 6571。


「十八歳、おめでとう。——今日、お前はこのメモを初めて聞いた。泣いただろう。パパも泣いた。——これを録りながら」


 合っている。泣いた。二時間。


 Day 6572。


「今日、お前は学校に行った。でも授業中に——ぼんやりしてた。パパの声が頭から離れなくて」


 合っている。ぼんやりしていた。先生に「須藤、聞いてる?」と言われた。


 Day 6573。


「今日、ママに聞いたな。パパのこと。——ママは泣いただろう。パパの話をするとき、ママはいつも泣く。十五年経っても」


 合っている。聞いた。ママは泣いた。


 ——毎日、合っている。


 パパの声が——今の私を、正確に描写している。


 今日起きたこと。今日感じたこと。今日考えたこと。


   ◆ Day 6600


 一ヶ月が経った。——毎日一通。


 この頃から——奇妙な感覚が生まれた。


 朝起きて、学校に行って、授業を受けて、友達と話して、帰宅して。


 一日が終わると——パパのメモを聞く。


 パパが、今日の私の一日を語ってくれる。


 『今日、お前はこうした。こう感じた。こう考えた』と。


 正確に。


 最初は——すごい、と思った。パパの能力に。


 でも——一ヶ月が経つと、別の感覚が来た。


 自分の一日が、パパのメモの「答え合わせ」になっている。


 朝起きると考えてしまう。今日のメモには何が入っているのだろう。今日の私は何をするのだろう。パパは何を知っているのだろう。


 ——一日を「生きる」のではなく、一日を「再生する」感覚。


 パパがすでに見ていた一日を、私が後からなぞっている。


 私の人生は——パパがすでに見終わった映画の、リプレイなのか。



   ◆ Day 6650


 試した。


 その日の分を——日付が変わった直後に、先に聞いた。一日が始まる前に。

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