↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
声の記憶〜私が三歳のときに死んだパパは、明日の私を知っていた〜  作者: ぽんぽこ解放太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/8

Day 2400

 Day 2400。小学一年生。


「今日、初めて一人で学校に行く。ママが心配して、後ろからこっそりついていく。お前は気づく。振り返って『ママ帰って!』って怒る。——お前は強い子だ」


 ママに確認した。


「ママ、私が小一のとき、こっそりついてきたことある?」


 ママが目を丸くした。


「……ある。一回だけ。バレて怒られた」


「パパが知ってたよ。ボイスメモに入ってる」


 ママの顔から、血の気が引いた。


 Day 3387。小学三年生。


「今日、お前は通知表をもらう。算数が3。国語が4。理科が5。——理科が好きなんだな。パパも理科が好きだった。遺伝かな」


 通知表の中身が——合っている。小三の二学期。算数3、国語4、理科5。


 ——パパは、私の通知表の点数を知っている。死んでから六年後の通知表を。


 Day 4650。中学一年生。


「好きな人ができたな。——言わなくていい。パパにはわかる。最近お前の声が変わった。電話のとき、声が少し高くなる。誰かのことを考えているときの声だ」


 ——中一のとき、好きな人がいた。同じクラスの男の子。誰にも言っていなかった。


 パパに——バレていた。死んだパパに。


 Day 5615。中学三年生。


「受験。第一志望の高校。——受かるよ。パパは知ってる。大丈夫だ」


 受かった。第一志望に。


 パパは——結果を知っていた。



   ◆


 千日分ほど聞いた時点で——気づいたことがある。


 Day 1095まで、つまりパパが生きていた頃のボイスメモと、Day 1096以降のボイスメモには——決定的な違いがあった。


 生前のパパは、一日の終わりに、その日の出来事を思い出しながら話していた。言い直しがある。思い出す間がある。笑って言葉に詰まることがある。


 死後のパパには——それがない。迷いなく、淀みなく語る。振り返りではなく——すでに知っていることを、語っている。


 しかも、しばしば現在形で。


「今日、お前は泣いている」


「今日、お前は公園に行く」


 まるで——その日がまだ始まってもいないうちに録られたかのように。


 ——微妙な違いだけど。


 もう一つ——気づいたことがあった。


 Day 1096以降の録音には——背景音がなかった。


 生前の録音には背景音があった。電車のアナウンス。テレビの音。風の音。ママの声が遠くに聞こえることもあった。


 死後の録音には——何もない。パパの声以外、完全な無音。反響すらない。


 どこで録っているのか——わからない。


 自宅ではない。反響が違う。外でもない。環境音がひとつもない。


 ——どこにもない場所で、録っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。