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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
幕間15 マーガレットの行方

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幕間15-1

 フラン魔法大学校の旧校舎。そこにはそれまでの日常通りアリスとマリーの姿があった。変わったことと言えば、数日前にルイス家が貴族の位を剥奪されたという情報がこちらに伝わってきて、マリーの選択が正しかったということが証明されたぐらいだ。

 そう言ったことは一旦置いておいて、アリスはあることについて最近深く考えていた。それはマーガレットに関することである。マーガレットの方から連絡がこない限り、アリスとしてはマーガレットの現状を察知することはできないし、マリーやルイス家の現状を伝えることすらできない。今回、マリーのことに関して動いてくれた探偵のカイに探りを入れてもらうということは出来なくもないのだが、こちらの行動のせいで聖書のことが世間に知れ渡ってしまうという事態は避けたいところだ。

 マーガレットの行方に関してはマリーも気にしているように感じるところだが、マリーに聖書のことを伝えることもできないので彼女に相談することもできない。結果的にアリスはマーガレットの行方を気にするマリーから質問を受けたとしても『こちらとしても彼女から連絡がこないから困っている』としか言いようがない。実際にそうなのだから仕方がないのだが、マリーからすればまだ自身のことを警戒しているのかととらえられてもおかしくはない。

「はぁまったく困ったものだ」

 アリスは思わずそのようなことを口に出す。もし仮にマーガレットから連絡が来たとしても、その内容をどの程度マリーに話せるかという話題になるとまた別問題だ。『今、どこにいる』という程度の内容ならいいのだが、『聖書集めで困ったことが発生した』という内容だった場合は連絡が来たこと自体を伏せなければならないだろう。ともなれば、連絡が来たとしても来なかったとしとしてもマリーにそれを伝えることは出来ないという現状は変わらないのかもしれない。

「何かありましたか?」

 今、考えていたことに関して言葉や表情に出てしまっていたからか、マリーが心配そうな表情を浮かべて声をかけてくる。

「あぁいや、ちょっと考え事をしていてね。気にしなくてもいいよ」

 そう答えてからアリスは考え事で中断していた作業を再開した。


*


 数日後。アリスは授業の準備のためにマリーと共に準備室を訪れていた。

「アリス教授……一つ聞いてもいいですか?」

 準備をする中でマリーが口を開く。

「……どうかしたか?」

「姉の……マーガレットの行方について教えてくれませんか?」

 マリーの質問を受けて、アリスはついにこの質問が来たかと感じる。今まではこちらからマーガレットの行方はまだわからないと話をしたことはあるものの、マリーの方から聞かれるのはルイス家の件が芦原になった以降初めてのことだ。確かに今はルイス家はなくなっているし、マリーは完全にこちらの味方だ。だからこそ、マーガレットが置かれている状況が普通の状況なら教えてしまっても構わないところだろう。しかし、残念なことにアリスはマーガレットが現在どういった目的を持って行動しているか教えることは出来ないし、もっと言えばアリスもまたマーガレットの現在の詳細な情報を知ることは出来ていない。

「……私もここ数日そのことについて考えていたんだよ。普段だったらマメに連絡をよこすんだがな、それがなくて……」

「それは大丈夫なんですか? 本当に姉の行方が分からないのなら、何かしらの方法で探したほう尾がいいのではないですか?」

 お茶を濁そうとするも、マリーは真剣にマーガレットのことを心配しているのかマーガレットのことを探すべきだと主張する。そこまで来て、アリスは答え方を間違えてしまったと考える。

「うーむ。それはしてもいいのかもしれないが、わざわざこちらに連絡をよこすような問題に直面していないだけだろう。大丈夫だ。そのうち連絡も来るさ」

 こうなって来ると、こう答えるしかないだろう。別段、マリーのことを信頼していないわけではないのだが、聖書の件については慎重に取り扱うべきだ。それこそ、聖書のことを伏せるにしても『特殊な任務中だから連絡が取れない』と中途半端に伝えるのも良くない気がする。だからこそ、アリスはこの質問に関してはお茶を濁しながら逃げ切るという選択肢を取る。

「そんなことで大丈夫なんですか? もし、姉に何かあったらと思うと……」

「そのあたりは大丈夫だよ。マーガレットは魔法使いとしては弱くない。そう簡単にやられたりはしないよ」

 アリスから見て、マーガレットはまだ未熟なところはあるとはいえ魔法使いとして強い部類に入る。さらに言えば、彼女の横にはエルフであるアイがついている。アリスはアイについて詳しくは知らないが、自分自身よりはるかに長生きしている彼女の知恵や実力があれば、多少の問題は片づけることが出来るだろう。

「それに下手に探りを入れると、マーガレットが何か勘違いをする可能性もあるからな。まぁあっちから連絡が来たら教えるよ」

「……そう、ですか……」

 アリスの返答に対して、マリーは納得しきっていない様子ではあるもののいったんはこの話を終える。

「さて、準備の再開をしようか」

「はい。わかりました」

 さてはて、彼女にマーガレットのことについて話せるのはいつになるだろうか? そのようなことを考えながらアリスはマリーと共に授業の準備を再開し始めた。

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