第65話
ザドの町から列車で東に移動し、マーガレットたちはシャルロの森の手前のところまでやってきていた。
「まったく。こんなにすぐに戻ってくることになるなんて思わなかったわ」
そう言いながらマーガレットはカノンへの手土産を手にして森の中へと入って行く。
「あっマーガレットだ! そう。マーガレットが来た!」
何かしらの方法で気配でも察知していたのか、森に入ってから十分ほどでカノンはマーガレットたちの前に姿を現した。
「久しぶり……あなたは相変わらずみたいね」
「うん。私は変わらないわ。そう。元気」
「そうならいいわ。これはちょっとした手土産よ」
そう言いながらマーガレットは近くの町で買ったパンとちょっとしたおもちゃが入った紙袋を手渡す。
「ありがとう。そう。うれしい。また、ツリーハウスにしばらくいるの? そう。滞在するの?」
カノンは手土産を笑顔で受け取ってからマーガレットたちに疑問を投げかける。
「残念ながら今回はあまりここにいる予定はないわ。この森の中に住んでいるエルフのリアに会いたいのだけれど、そのあたりって大丈夫かしら?」
「うん。私は大丈夫だよ。そう。問題ない。ただ、あの子が住んでいる場所はほかの子の縄張りだからあまり詳しくないの。そう。案内が難しい。とりあえず、私の縄張りのぎりぎりのところまで案内するね。そう。道を教えてあげる」
「ありがとう。じゃあさっそく案内してもらおうかしら」
「うん。ついてきて。そう。ついてきちゃって」
その会話の後、カノンはゆっくりとマーガレットたちの前を飛んでいき、それを追うような形でマーガレットたちは森の奥の方へと足を踏み入れて行った。
*
森の中に入ってからしばらく経ち、カノンは自分の縄張りの端っこだという地点でいったん動きを止める。
「ちょっと待っててね。そう。待機してて。多分、あの子が出てくるから。そう。来ちゃうから」
妖精同士の縄張りに関する決まりがどうなっているのかわからないが、カノンの態度を見る限りでは普段は縄張りを超えて活動することは少ないようだ。最も、リアの住んでいる場所を縄張りにしている妖精がマーガレットたちのところまで来たあたり、絶対に縄張りの外へ出てはいけないということではなく、どちらかというとリアが住んでいる場所までの案内が出来ないから、リアの家の近くを縄張りにしている妖精を待っているというのが正解なのかもしれない。
「なんじゃ。我に何か用か?」
それからしばらくしてマーガレットたちの前に威厳のありそうなしゃべり方をする妖精が姿を現す。
「うん。ちょっと、あなたの縄張りのところにいるエルフさんにこの二人を会わせてほしいなって思って。そう。案内してほしいの」
「リアのところに二人を案内してほしいのだな。わかった。それではこの先は我が案内するとしよう。そこの二人、ついてくるがよい」
そう言って威厳のありそうなしゃべり方の妖精がゆっくりと森の奥の方へ向けて飛んでいく。
「カノン。またあとでね」
「うん。また帰るときに私のところよってね。そう。寄り道して」
「わかったわ」
カノンとの会話を済ませた後、マーガレットたちはその背中を追って歩き始める。
そうしてしばらく歩いていると、うっそうとした森の中にリアの家が見えてきて、やがてリアの家に到達する。
「さて、我の案内はこれで十分だろう。リアは今は家にいるはずだから、あとはリアと直接話すと言い」
案内を終えた妖精はそれだけ言ってそのままどこかへと飛び去ってしまう。その背中を見送ったマーガレットはリアの家の前に立ち、玄関の扉をノックする。
「……魔女のマーガレットとエルフのアイだけれど。少し話をしたいから開けてもらってもいいかしら?」
マーガレットがそう声をかけると、玄関の扉がゆっくりと開きリアが姿を現す。
「あっあの……久しぶり……です。中へどうぞ」
「いきなり来てごめんなさい。ちょっとお邪魔させてもらうわ」
その会話の後、マーガレットたちはリアの家の中へと入って行った。
*
リアの家の中に入った後、マーガレットたちはザドの町での顛末を聖書の件を抜きにしながら話をしていく。話の持って行き方としては、『ザドの大聖堂で文献調査を行った結果、大量の古文書や魔導書を発見したが、発見直後に大聖堂を追い出され、その後から闇市でそこにあったと思われる文献が売買されている』という内容だ。その話を一通り聞いたリアは少しうつむき気味に言葉を放つ。
「なっなるほど……つまり、お二人はそのアルベルトという人が私腹を肥やすために古文書を利用しているのが許せない……ということですね?」
「そうなのです。なので、南部のエルフの情報網を使いたいのですが……そのあたりってどうなっているのですか?」
アイが尋ねるとリアは少しだけ間をおいてから口を開く。
「まぁその。確かにアイさんが言う通り私から南部のエルフに話をすることは可能ですが……残念ながら即効性は……ありませんよ。それでも良ければ話をしますけれど……」
「えぇ。お願いしたいです」
自信なさげに言葉を紡ぐリアに対して、アイは少々食いつき気味に返答をする。彼女からすれば、今回の事態について相当思うところがあるのだろう。
「そうですか……わかりました。それでは、ほかのエルフと話をしたいのですが、私は口下手でして……お二人にも一緒に話をする場に出てきてもらっても?」
「それは構わないのです。そうですよね? マーガレット様」
そこでいったん二人の会話杯終わりアイはマーガレットの方へと視線を向ける。
「えぇそれは問題ないわ」
マーガレットが同意をすると、リアはマーガレットたちに具体的にどういった形で話を進めていくのか説明をし始めた。




