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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
幕間12 探偵の考え

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幕間12-1

 北部連邦の首都ノース。マーガレットが北部連邦にいないと確信したカイは作戦を最終段階へと進めていた。といっても作戦は単純で自身の情報網を使い、北部連邦の貴族たちに『ルイス家は革新派のはずなのに長女は魔女で次女も高名な魔法使いの弟子になった』といううわさを広めていくというモノだ。

 そのうわさを耳にしたコニーは案の定慌てだして、火消しに走ろうとするがこれに関しては事実なので完全に消すことはできずにうわさはどんどんと広まっていった。

 さらに言えば、ルイス家はこれまでのマーガレット捜索に関する出費が大きくかさんでおり、使用人たちへの給与の支払いすら厳しくなってきている状況だ。もちろん、この状況も利用して『ルイス家は使用人への給与の支払いを渋っている』といううわさもセットで流している。

 こうなって来ると、ルイス家と同じ革新派の貴族は『ルイス家は保守派へ転身したのか』という不信感から助けの手を伸ばすことなく、一方で魔法を大切にしている保守派からの貴族からも『これまで強硬に科学への転換を主導してきたルイス家が裏で娘たちに魔法を学ばせているのはいかがなものか』という感想を抱かせることに成功している。要するにコニーがマーガレットの追跡に夢中になっている間にルイス家はすっかりと孤立してしまったというわけだ。

 カイはひとり不敵な笑みを浮かべながらコニーのもとへと向かう。これから告げる内容は至極単純なモノ。『これ以上状況を悪化させないためにはすぐにでもマーガレットを連れ戻して、魔女をやめさせれば状況は収まる』と念押しをすることだ。もちろん、捜索範囲を北部連邦に絞ったままにすることを進言することも忘れない。そうなれば、コニーはマーガレットを捕まえる事だけを考え、状況はますます悪化していくことだろう。そこら辺までくればカイとしても十分な成果なので、その後に適当な理由をつけてルイス家から離れコニーにとって不都合な情報を流すことに集中していくつもりだ。

「それにしてもここまで都合よくいくとは思いませんでしたね」

 当初、コニーがマリーに一芝居打たせたときは正直作戦は失敗するかと思ったのだが、ここで都合よくマーガレットがマリーをアリス教授のところに送り込んでくれたので当初考えていたよりも簡単に事が進んでいった。このことに関してはマーガレットにしっかりと感謝をしなければならないだろう。

 それにしてもだ。カイの中で少し疑問に思うのは、なぜマーガレットはマリーを自分の旅に同行させるのではなく、自らの師匠であるアリス教授に託すという選択をしたのかという点だ。マーガレットが一人での旅にこだわっているのならともかく、彼女はエルフの少女を弟子にして自らの旅に同行させている。ならば、自らの妹であるマリーも旅に同行させるというのが自然な流れだと思うのだが、彼女はなぜかそう言った選択肢を取らなかった。これに関してはマーガレットにはマーガレットなりの事情があるのだろうとしか言いようがないのだが、カイの中で少々引っかかる点となっている。

 一応、マーガレットのそばにいるアイという名前のエルフについて素行調査をしてみたが、彼女はメアリ王国の片田舎で事務所を持っている探偵でとてもじゃないが人間の魔女に弟子入りする必要があるような情報は見つからなかった。別にマーガレットのそばにいるアイがこちらに向かって何かをしてくるというわけではないので特段脅威ではないのだが、気になると言えば気になる点だ。

 そのあたりまで思考が回るころにはカイはルイス家の裏門のところへとたどり着く。そうすると、カイはいつも通り屋敷の中へと入り、コニーがいるであろう書斎へと向かって、書斎の扉をノックする。

「……カイです。入ってもよろしいでしょうか?」

 穏やかで丁寧な口調のカイの言葉に対して、返ってきたのは怒鳴り声だ。

「さっさと入ってこい!」

「はい。それでは失礼いたします」

 それでもカイは動じることなく、そのまま書斎へと入って行く。

 書斎に入ると、奥の椅子にはいらだった様子のコニーが座っており、カイは彼の前まで行って深く頭を下げる。

「……今回の捜索、難航して申し訳ございません」

 とりあえず、最初に口にするのは謝罪の言葉だ。そこからカイは丁寧に現状について嘘をつかず、なおかつ真実を隠しながら話をしていく。

「……というわけでしていまだに見つかる様子はありません。ですので、費用のこともありますし、この捜索は打ち切った方がよろしいかと……」

「そんなことはさせるか! 見つかるまで徹底的に探せ!」

 いったん捜索の打ち切りをちらつかせてみるが、コニーのマーガレットに対する執着は変わりないように感じる。それを確認したカイは当初の予定通り、北部連邦に捜索範囲を絞ってマーガレットを探すべきだと進言していく。カイのことをある程度信頼しているであろうコニーはいら立ちを見せながらもそれを承認し、カイにさらなる報酬を渡してマーガレットの捜索を続行するように依頼する。

「……ありがとうございます。それでは失礼します」

 依頼金を受け取ったカイは深々と頭を下げてコニーのもとを去る。

 このままいけば、ルイス家がつぶれるのも時間の問題だろう。カイはそのように考えながらルイス家から去って行った。

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