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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
第12章 ザドの大聖堂

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第54話

 シャルロからザドへと向かう列車の中。列車はまもなく、ザドの大聖堂がある南部連邦ザド共和国の聖都ザドに到着しようとしている。

「何とか南の大聖堂には到着できそうね」

「そうですね。私が町で見た限り、手配書自体はそんなに多くは出まわっていなさそうでしたので、追加で発行でもされない限り『文献調査』をしている間は安全なんじゃないですか?」

 アイの言葉にマーガレットは窓の外に見える立派な大聖堂へ視線を移してから答える。

「……そうね。そうだったらいいのだけれど」

 一応、各大聖堂がある国には『聖書』の調査の件について通達が行ってはいるのだが、ルッシの大聖堂でそうだったように実際に対応をしてもらえるかどうかはその場所に着くまでわからないというのが現状だ。そういった不安定な状況で旅をしている中で、もしもザドの大聖堂で追いやられ、なおかつルイス家からの手配書を見た追手に捕まるなんてことがあれば最悪なんて言葉で言い表せるような状況ではないだろう。

「まったく、ルイス家は何を考えて私を捕まえようしているのかしら」

「そればかりはわかりませんね……今のルイス家がどうなっているのか詳しくはわかりませんが、いずれにしても今さらになってマーガレット様を探している意味は全く持って不明ですし」

「そうなのよね……とりあえず、最低でもこの聖書の調査が無事に完了すればいいのだけれど……」

 マーガレットはもし大聖堂の関係者が手配書のことを知っていて、そこで聖書集めの旅が終了してしまうのではないかという一抹の不安を抱えながらだんだんと近づいてくるザドの大聖堂を見つめていた。


*


 ザドの町の入り口となっているザド駅から約十分。マーガレットたちはザド駅から大聖堂方面の近距離列車に乗り換えて大聖堂駅に降り立っていた。

 ザドの町はこれまでの大聖堂がある町とは違って町の中にある程度鉄道網が張り巡らされており、古い街並みの中から突然列車が出てくるといったような場所も存在している。そんな街の中でも大聖堂がある丘だけは列車が通っておらず、ルッシの大聖堂がそうだったように丘の入り口に関係者以外立ち入り禁止と書かれた看板が掲げられている門とその奥に関係者専用の馬車が用意されている。

「さてと。まずは大聖堂に入る手続きからね」

 マーガレットはカバンの中からザドの大聖堂に関する調査依頼書を手にして門のすぐそばにある事務所へと入って行く。

 事務所の中に入って行くと、大聖堂の司祭と思われる男性が門番と話し込んでおり、マーガレットたちはその様子を背後から眺める形となる。

「……まったく。文献調査を依頼された連中とやらはいつになったら来るんだ?」

「それに関しては情報がなくてですね……」

 しかし、漏れ聞こえてくる会話の内容が明らかに自分たちに関するものだったので、マーガレットはその男性に声をかけることにする。

「……あのー」

 マーガレットが声をかけると、司祭はこちらをにらみつける。

「何だ君たちは。ここは子供が来るような場所ではないぞ」

 そう言ってマーガレットたちを追い返そうとする司祭にマーガレットは少々申し訳なさそうな表情を浮かべながら調査依頼書を差し出す。

「……時間がかかっていてすみません……私が『文献調査』の依頼を受けているマーガレットです」

 そうすると、司祭はマーガレットから奪い取るかのように調査依頼書を手に取り、その内容を確認する。

「……なるほど。確かにこれは本物のようだな。失礼した」

「あぁいえ。到着までに時間がかかっているのは事実ですので……」

「早速だが大聖堂へ案内する。ついてこい」

 司祭は名乗ることすらなくそのままマーガレットたちの前を通り過ぎ、事務所の出口の方へと向かう。

「……なんだか、ルッシの大聖堂の人と違ってえばり散らかしてますね……」

 そんな司祭の背中を見ながらアイがひそひそと声をかける。

「そうね。まぁでも、調査ができるのならとりあえずいいんじゃないかしら」

 アイの言葉に対してそう返答してからマーガレットはアイと共に司祭の背中を追うような形で事務所の外へと向かいながら司祭に声をかける。

「……私はマーガレットで一緒にいるのが弟子のアイです。どうぞよろしくお願いします」

「そうか。私はアルベルトだ」

 アルベルトがそう名乗るころにはマーガレットたちは事務所を出て、門番が開けておいてくれた門をくぐって馬車へと乗り込んでいた。

「……ところで『例の本』の効果は本当のモノなのか?」

 アルベルトは馬車に乗り込むなりマーガレットたちに質問を投げかけてくる。

「……うーん。どうでしょうかね? 『例の本』の効能が本当なのかというところまで含めての調査ですので……私たちとしては本当であってほしいとは思っていますけれどね」

「そうか」

 その会話の後、何かを考えこみ始めたのかアルベルトは黙り込んでしまい、馬車の中は気まずい沈黙で支配される。

 マーガレットは早く馬車が丘を登り切ってくれることを願いながら窓の外へと視線を移した。

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