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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
幕間10 探偵の戦略

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幕間10-1

 北部連邦の首都ノースにある宿屋の一室。

 マーガレットを追跡するという名目でルイス家に出入りしているカイはこれまでに集まった情報をもとにこれからの戦略を練っていた。

「肝心のマーガレットは東部連邦のリモリアでの目撃が最後か……」

 リモリアと言えば東部連邦と南部連邦を結ぶ連絡船が出入りする港があることで有名な町だ。となると、彼女は東部連邦もしくは南部連邦のどこかを目指しているという可能性が高くなる。最も、手配書自体は全世界をある程度カバーしつつもあまり数をばらまいていないのでこれだけでマーガレットを捕まえるということはできないだろう。それに加えて、ほかの連邦に住んでいる同胞に話を聞いてみたのだが、エルフを連れた魔女という珍しい特徴を持つマーガレットに関してどこかで噂だったり、もっと言えば彼女自身の行動自体については見聞きしたことがないかと聞いてみたのだが、それはないと言われてしまった。となると、彼女はあまり人に知られないように行動している可能性が高く、彼女が今どこにいるのかという正確な位置を知ることは不可能だと言えるかもしれない。

 そうなると、次に取るべき行動は東部と南部……いや、北部連邦以外の場所を一旦捜索範囲から外すことだろう。本来なら、東部連邦および南部連邦に絞るべき場面なのだが、カイの目的はルイス家を没落させること。そうなると、『マーガレットを捕まえなければならない』という洗脳と並行して、無駄なことをさせてどんどんとお金を使わせていくべきだという判断だ。

 一通り作戦を練ったカイは自らの目論見を報告書という形で用意し、部屋を出てルイス家へと向かう。

 その道中で、カイはふと考える。そう言えば、マーガレットの居場所を正確に知るために用意した駒……マリーの方は完全に機能不全に陥っている。そのあたりについても何かしらのアクションを起こさないと、コニーは納得してくれないかもしれない。そのあたりについても、今日はじっくりと話す必要があるだろう。

 そう考えるころにはカイはルイス家の裏門へと到着する。今回の調査についてはエルフがかかわっているということについては秘密となっている。おそらく、コニーとしては魔法に長けた種族であるエルフに頼っているということは周りに知られたくないのだろう。最も、カイとしてもそちらの方が都合がいいのだが……

 カイは裏門の近くで人が近くにいないことを確認してからフードを深くかぶり、エルフであることをごまかしながらルイス家の敷地へと入る。この家に勤めている使用人たちには『探偵を雇っている。彼は常に裏門から入る』とは言ってあるのでエルフであることさえ隠せば、この家の中を自由に出入りしていいことになっている。なぜ、エルフであることがばれないように配慮しても正門から入ることが許されないのかはわからなないが、おそらく、コニーの中では無意識にエルフを下に見ているところがあるのだろう。

 そういったことはさておいて、敷地に入ったカイはそのままコニーがいるであろう書斎へと向かい、書斎の扉をノックする。

「どうした。誰だ」

 すると、書斎の中からいかにも不機嫌そうなコニーの声が聞こえてくる。

「……カイです。少々伝えたいことがあり報告に参りました」

「そうか。入ってこい」

 どうやら、今は都合の悪いタイミングではないらしい。そう判断して、カイはすぐに扉を開けて中に入る。

 書斎には机で何やら書類を前に考え込んでいたであろうコニーの姿があり、カイは使用人などがいないことを確認してからフードを脱ぐ。

「……それで。報告とはなんだ?」

 明らかに機嫌の悪いコニーを前にしてカイは笑顔を崩さずに対応をする。そこからカイは自分の都合がいいように話を進めていく。まずは全世界に手配書を配ったにもかかわらず行方を追えないという点についての謝罪、次にやはり捜索範囲は北部連邦の中に限った方がいいのかもしれないという話……それらを最初にかけた洗脳のせいで自分のことを信じっ切っているコニーに話をしていった。

「ふむ。なるほど……やはり、国の外には出られていないと」

「そうですね。そこのあたりはコニー様の方が正しかったかと……」

 そういったやり取りを経て、二人で今後の方針について話し合っていく。一つはマリーの扱い。このあたりについてはマーガレットの行方についてアリス教授がつかむ可能性があるから今のままにしておいた方がいいという話。そして、もう一つは北部連邦の中で大々的にマーガレットの行方を追いかけた方がいいという話だ。そのあたりについてはコニーはあっさりと納得してカイの話を了承する。一通りの話を終えたカイはコニーに深々と頭を下げてからフードをかぶり書斎を後にした。

「……まったく。今回の任務は簡単だな」

 そのようなことをつぶやきながらカイはルイス家の邸宅を後にした。

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