第48話
ツリーハウスの入り口となっている階段を上り、内部へと入ってみるとほこりをかぶっていたり、蜘蛛の巣が張っていたりはするものの、掃除さえすれば十分に暮らせそうな空間が確保されていた。
「なるほど。確かに前に住民がいたのは確かなようね」
「そうでしょ。そうでしょ。そうなんだよ」
この場所の掃除に関しては魔法を使えば何とかなるだろうと考えているマーガレットのすぐそばを妖精はくるくると回りながら飛び続けている。
「まぁ暮らせそうなさそうだし、とりあえずここに身を隠してみましょうか。案内ありがとう。妖精さん」
「うん。感謝してくれてありがとう。そう。うれしい。じゃあ、私はこのあたりで帰るね。そう。帰っちゃうね」
その会話の後、妖精は空いている窓から飛び出していく。その後ろ姿を見送ってからマーガレットは小さく息をつく。
「さて、隠れる場所を見つけたはいいけれど、あとはどのくらい身を隠すかよね……」
「そうですよね。何にもなければ一年でも二年でも隠れていればいいかもしれませんが、『例の本』の調査がある以上あまり長い期間は隠れていませんよね」
「そうなのよね……とりあえず、次の大聖堂まで移動できれば大丈夫だとは思うから、そこに行くまでの路銀がたまるまでかしら?」
マーガレットとしてはいくら手配書が出されているとしても次の大聖堂まで移動してしまえば、少なくとも調査をしている間は捕まらないと踏んでいる。というのも、聖書の調査自体は極秘なので適当な理由をつけて大聖堂の中で泊まらせてもらえれば、追手が近くにいたとしてもそう簡単に捕まることはないと思われるからだ。仮に聖書を探している間に追手が現れたとしても、調査をしているということを盾にして大聖堂に保護をしてもらうことも可能だろう。となれば、気にべきなのは調査を行う大聖堂に向かうまでの間……もう少し言えば、その先に残る二つの大聖堂の調査へと向かう間だと言えるだろう。最も、その期間にルイス家がどれだけ本気でマーガレットのことを探しているのかを見極める必要はあるのだが……
「とりあえず、しばらくの間は私が町に出て状況を調査しつつ、生活に必要な物資の調達と路銀の調達を行う方向で行くのはどうでしょうか?」
そんなマーガレットの思考を読んでいるかのようにアイが提案をする。
「えぇ。そうしてくれるとありがたいがたいわ」
マーガレットはアイの提案を受け入れつつ、再び思考を巡らせる。いったい、現在のルイス家がどのような状態にあるのかという点についてだ。もし仮にルイス家が没落しておらず、しっかりと存在していて、なおかつどうしてもマーガレットが必要だという場合、この手配書がらみの話はかなり厄介なものとなって来るだろう。だが、逆にルイス家にマーガレットを捜索し続けるような体力がないとなると話は変わって来る。もし、ルイス家がマーガレットが没落寸前で何かしらの希望をマーガレットに託して探しているとすると、ある程度の期間身を隠していれば手配書は発行されなくなり、マーガレットは再び自由の身となることが出来るだろう。そもそも、マリーの本心はともかくとして彼女にあそこまでさせるほどだ。どちらかと言えば後者の方が状況として正しいのではないかという風に感じてしまう。となれば、全国へ手配書を配り続けるのは相当な資金がかかるので、年単位もかからずに北部連邦以外の場所からは手配書は消えてしまうのではないだろうか? そう考えれば、次の大聖堂があるザドの町までの路銀を手にした時点でこの森を離れてしまっても問題はないように感じる。
ただ、単純に路銀稼ぎをアイだけに頼るのは少々申し訳ないので、先ほどまで一緒にいた妖精に再び出会えたら、彼女の許可のもと森の恵みを少々借りてそれをもとに薬などを作ってそれをアイに売ってもらうということも考えた方がいいかもしれない。
「さてと……まぁ一にも二にもとりあえず掃除を始めないとね……」
「そうですね。まずはそこからですね」
ある程度、今後について考えを巡らせた後にマーガレットはアイと共に掃除をし始める。とはいっても、掃除に関する魔法を使って行うのでそこまで苦労することはない。それに掃除をしていく中で分かったことだが、幸いなことにもこの場所には前に住民が二人いたようでベッドやイスなどが二人分用意されていることだろう。このことによって、少なくとも二人で暮らす分には問題ないと言えるだろう。
そうした状況の中でマーガレットたちはササっと掃除を済ませてこの場所で住む環境を整えていくのだった。




