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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
第1章 師弟

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第5話

 フラン郊外にある建物の地下。

 地下にあるとは思えないほど広い空間の中に仮面をつけた複数の人が今か今かと闇オークションが始まるのを待っていた。

 そんな会場を見下ろすような一番奥の席にマーガレットの姿はあった。と言っても、その姿は普段のそれとは違い、髪の毛の色を変える魔法が解かれた髪の毛は透き通るような水色で、恰好も普段のそれとは違ってきっちりとした淡い青色のドレス。そして、周りの人と同様に目元を隠す仮面をつけているような形だ。単純に言ってしまえば、今この場にいるのは『魔女マーガレット』ではなく、『行方不明になっている令嬢のマーガレット』ということになる。本来であれば、自分がどこで何をしているのかということを明かしたくないためこのような格好はしたくはなかったのだが、チラシに書いてあった参加条件に『身分の高い者に限る』と書いてあったためしぶしぶやっているような格好だ。しかも、チラシを読む限り、この闇オークションでは連邦法で禁止されている人身売買が行われているような雰囲気である。

 こうなって来ると、アイを救うためにここまでリスクを負う必要があるのだろうかなどと考えてしまう自分もいるのだが、一度乗り掛かった舟なので今更降りるというわけにもいかないし、アイに対して全く愛着がないかと聞かれればそういうわけでもない。

 そこで待つこと約十分。会場の明かりがいったん消えて、中央にあるステージだけに明かりが落ちる。会場のざわめきが落ち着いたころに司会者とみられる男性が壇上に上がる。

「皆様! お待たせいたしました。第五回フラン秘密のオークションのスタートです!」

 その言葉を聞いて、このようなオークションが五回目なのかとマーガレットは深くため息をつく。どの程度の頻度で行われているのか知らないがこのような催しがいつから行われているのだろうか? まぁ最もこのオークションが何回目だったとしても今回で終わることはほぼ確定しているのだが……というのも、アリス教授から通報を受けたフラン共和国の衛兵が近くで待機しており、アイがこの場にいる場合は身柄を確保した後にマーガレットからアリス教授に連絡し、その連絡を受けたアリス教授の合図で衛兵が突入するという流れになっている。また、もしもアイがこの場に登場しなかった場合はオークションが終わる直前に合図を送るのでこの闇オークションが潰されることには変わりない。一応、表向きには『令嬢マーガレット』は今回のことには関わっていないのでどちらかの条件を満たし次第、マーガレットはこの場から急いで逃走することとなる。

 マーガレットがそんなことを考えている間にも会場では次々と奴隷が披露されていき、参加者たちが次々と落札していく。

 なんとも居心地がの悪い場だ。さっさと退場したい。

 そのようなことを考えているマーガレットの耳に司会者のある言葉が聞こえてくる。

「今度は人間ではなく、エルフの出品です。どうぞ、ご覧ください」

 その言葉とほぼ時を同じくして、アイが壇上へと引っ張り出される。それを確認したマーガレットは周りの客を押しのけ一気に壇上へと向かう。

「お客様。落札なしでの引き取りは……」

 異変を感じた司会者の言葉すら無視し、マーガレットは壇上へと上がり、アイの手をつかんでアリス教授へと合図を送るとともに出口へと向かう。

「ちょっと、あなた誰ですか!」

「……後で話をするから黙ってついてきて」

 いきなりの出来事に抵抗を試みようとするアイを説得しながらマーガレットは事前に計画していた通り会場からの逃走を目指す。

 そのころには入り口から衛兵が流れ込み始めていて、参加していた人々が次々と衛兵に取り押さえられ始めていた。

「この場にいる関係者を一人たりとも逃すな!」

 今回の作戦の指揮者とみられる衛兵の声が聞こえる。しかし、そのころにはマーガレットは衛兵のすきをついて会場の外へと逃げだしていた。


*


 闇オークションの会場からどれほど走っただろうか? 各所で衛兵に追いかけられ、ようやく衛兵の姿が見当たらなくなったころ、マーガレットは『早着替えの魔法』『髪の色を変える魔法』『声色を変える魔法』を急いで使い、一気に『令嬢マーガレット』から『魔女マーガレット』へと姿を変える。

 衛兵がその場に来たのはそれからものの数分もしないうちだった。

「おい。このあたりでエルフの少女を連れた水色の髪色をした女を見なかったか?」

 その質問に対して、マーガレットは冷静に答える。

「はい。見ました。エルフの少女については行方不明になっていた私の関係者でしたので保護しましたが、本人には逃げられてしまいまして……あっちの方向に逃げましたよ」

 そんなことを言いながら、マーガレットは明後日の方向を指さす。

「そうか。協力感謝する」

 どうやら衛兵の方はマーガレットの主張はあっさりと信じてくれたらしく、衛兵たちはマーガレットが示した方向へと走り去っていった。その姿を確認したマーガレットは深く息をつき、その場に座り込む。

「はぁこんな経験二度としたくないですね……」

 それから少ししてからようやく状況を理解したらしいアイがマーガレットに声をかける。

「マーガレット様! 私のことを助けに来てくれたんですね!」

「えぇそうですよ。とりあえず、疲れたので宿に戻りましょうか……後は寝てる時の安全性の向上を試みないといけないですね……」

 そういって、マーガレットはゆっくりと立ち上がり、アイと共に宿へ向けて歩き始める。

 後に分かったことであるが、例の闇オークションの主催は商人ギルドのギルドマスターであるオレフだということが判明し、フランの町に激震が走った。それと同時に会場から見事に逃げおおせた令嬢が一人いるということが話題になったのだった。

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