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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
第9章 気分転換

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第43話

 南島の南側。本土から一番離れたところにある小さな住宅街。そんな住宅街の中に目的の建物はひっそりと建っていた。

「ようやく着いたわね。勇者一行のうち魔法使いの生家……フラーの家に」

「まったく。気分転換で観光しようって言っても魔法のことから離れられないんですね。まぁマーガレット様が満足しているならいいですけれど」

 満足げな表情を浮かべるマーガレットの横でアイはいまだに不満げな表情を浮かべている。

 約200年前。『選ばれしものしか抜けない剣』を引き抜き、勇者となった少年には仲間がいた。そのうちの魔法使いフラーが生まれた場所がまさしく目の前にあるフラーの家である。手元にある南島の観光案内地図によるとフラーの家は勇者と共に魔族を打ち滅ぼしたフラーについての資料が置かれている資料館となっており、いくらかの入場料を払えばその資料を見ることができるのだという。

 マーガレットたちはさっそく家の前にある小さな建物で係員の女性に二人分の料金を払ってからフラーの家に足を踏み入れる。

 こじんまりとした家の中には当時の面影を残しつつも所狭しと魔法使いフラーに関する資料が置かれており、見ていて飽きることがない。家の中の作りやそこに置かれている資料をこれでもかとまで見ながら歩き回るマーガレットの背中をこれまたアイが興味深そうに資料を見ながら歩いて行く。

「……さすがね。よくある資料には載っていないようなことまで書いてあるわ」

「そうですね……まぁ生家というだけあって、彼女の活躍はもちろんのこと、そこに至るまでの経緯までしっかりと書かれているのは興味深いですね」

 結局のところ、入り口では文句を言っていたアイであるが、実際に中に入ってみるとなんだかんだで興味があるようでマーガレットと一緒に資料をしっかりと眺めている。

「……しかし、フラーの人となりが知りたいのなら、私に言ってくれればお教えしましたのに……」

「わかってないわね。あなたがそういったことに詳しいだろうとは思っていたけれど、こうやって実際に訪れるのと話を聞くだけなのでは全然違うの」

 マーガレットの言葉にアイは少し首をかしげる。

「そういうモノですかね?」

「そういうモノなのよ」

 そこからは二人で少々会話を交わしながら展示物や家の作りを見て、フラーの家を出る。かなりの時間を中で過ごしていたようで気づけば時間は夕方近く。マーガレットはそのまま西の海岸の方へと歩き始めた。

「どこ行くんですか? 宿は反対側ですよ」

「まぁまぁせっかくいい時間なんだし、西の海岸で夕日が沈むのを見て行ってもいいんじゃないの?」

 マーガレットの提案にアイは笑顔で答える。

「そうですね。それもいいかもしれません」

 そういった会話の後、二人は手をつないで西の方へと歩いて行った。


*


 西の海岸にある砂浜。昼間は海水浴を楽しんでいる人の姿が多く見受けられたが、今は何人かの人が砂浜沿いの通路だったり、岩場に上ったりしながら沈みゆく夕日を眺めていた。

「……綺麗ね」

「えぇそうですね……」

 マーガレットからすれば、水平線の向こうに夕日が沈んでいく光景は船上などから何度か見たことはあるのだが、何となくこの場所から見る夕日は特別な気がする。それは地形がそうさせているのか、はたまたここば夕陽を見るスポットとして有名なのかわからないが、こうしてアイと共に夕日を眺めている時間がなんだか特別に思えてくる。

「それにしても、あなたと出会ってからいろいろあったわね……」

「そうですね。フランの闇オークションに始まり、現在進行中の例の本の件までいろいろありましたね」

「そうね。それにあなたと出会ってからいろいろと変わったと思うわ」

 アイと出会ってからの日々を思い返してみると、様々な出来事があったし、おそらくこれからも様々な事態に直面するのだろう。アイと出会ってからそれらの出来事が始まったと考えるのは少し大げさかもしれないが、アイと出会わなかったらここまでうまくはいかなかったかもしれない。そう考えると、マーガレットとアイというのは単なる師弟関係からお互いを思いあう相棒的な関係に進化しているような気もしてくる。

「さてと……夕日も見たし、時間が遅くなるより前に宿に行きましょうか」

「そうですね。そろそろ夕食が食べたくなってきたのです」

 太陽が完全に海の向こうに沈みつつある中、空腹を訴えるアイを連れてマーガレットは島の東の方にある宿の方へ向けて歩いて行った。

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