幕間8-2
ルイス家の邸宅から離れた場所にある宿。エルフの探偵であるカイが今回の依頼の拠点にしている宿の一室でカイはひとり笑みを浮かべていた。
今回の依頼。依頼主であるコニーの娘であるマーガレットについての情報は報告している以上に持っている。そもそも、マーガレットが生きているといううわさを流したのもほかでもないカイだ。
その狙いはいたって単純。北部連邦において科学を発展させようとしているルイス家を本格的に没落させるためだ。魔法を大切にするエルフとしてはルイス家のような科学を推進するような貴族は順番に潰していきたいものであり、そうした下調べをしていく中で比較的簡単につぶせそうだったのがルイス家だったというだけの話である。
「それにしても、魔女マーガレットか……何を考えて南部へ向かっているのやら」
カイが調査する限りでは魔女マーガレットの行動範囲はその背景から北部連邦に限定されていた。しかし、半年前になって急にマーガレットはメアリ国籍を取得し、それをもってして東部連邦を経由して南部連邦へと向かっている。途中、ルッシで文献調査に携わっているようだが、その理由についても謎が多い。
東部連邦のエルフの知り合いにルッシの大聖堂で何か新しい発見があったのかと尋ねてみたが、返ってきた答えはマーガレットが大聖堂で新しい文献を発見し、その調査の途中で南部連邦へ向けて出発したのだという情報ぐらいだ。この情報だけを頼りに考えてみると、マーガレットの目当てモノはルッシの大聖堂になかった。もしくは、すでに回収済みで南部連邦にあるザド大聖堂へ向かった。などという推理をすることができなくもない。最も、あちらこちらの大聖堂を巡って何がしたいのかは現状のところ謎ではあるのだが……
それに関しても本腰を入れて調査をすればわかるのかもしれないが、カイにとってはどうでもいいことだ。なので、今大切なのはルイス家を傾かせること。もっと言えば、娘であるマリーもこのまま魔法の道へと引きずり込んでしまうことだと言えるだろう。
「さて、この先どうするか……次の作戦を練らねば……」
カイは宿の部屋で一人つぶやいた。
*
ルイス家の当主であるコニーに呼び出された次の日。
カイは北部連邦の港町であるナギサを訪れていた。その理由一つ。現在の案件で重要となって来るマーガレットの動向について最新の情報を得るためだ。なぜ、マーガレットの動向が重要になって来るのか? それは至極単純で今の状況で下手にマーガレットに捕まってもらっては困るからだ。カイとしてはマーガレットには気ままに旅を続けてもらい、ルイス家から依頼料としてのお金を搾り取り続ける。それがカイの持つ重要な役割だ。そのためには常にマーガレットがどこにいるかという情報は大切だ。
一応、マーガレットのそばにアイという名前のエルフがいるそうだが、そのエルフは味方に取り込めそうにはないため、自分が現在持っている情報網での調査となる。残念なことに北部連邦の外にはあまり情報網がないため、伝わってくる情報は断片的なモノであるが、今日ナギサの町で東部連邦にいる仲間からの情報を持った協力者が到着する予定となっている。
「さてと、あとは船を待つだけだね」
そんなことをつぶやきながら、カイは港の近くにある市場を巡り歩く。普段はメアリ王国にいるカイからすればナギサの市場に広がる輸入品というのはどれも魅力的なモノだ。こういった場所でよく売られているのは北部連邦以外では売れないマジックアイテムや魔導書などだ。そのため、こうやって待ち時間にふらふらと歩いているだけでもかなりの収穫がある。
「さてと……そろそろ船の時間だな……」
そうやって歩いている間にもあっという間に船の時間が迫ってきた。少々惜しいところであるが、カイは市場を物色するのをやめてマーガレットの動向についての情報をもっているであろう仲間を迎えるために港の方へと向かっていった。




