第40話
マーガレットたちが手配書を手にした次の日の朝。二人は早朝に起きて足早に港へと向かっていた。その目的はもちろん早朝に出る船に乗ってこの町を出るためである。
「まさかこんなことになるなんて思わなかったですよ」
半ば駆け足で港で向かうさなか、アイがそのようなことをつぶやく。
「私だってできればこんな夜逃げみたいなことしたくないわよ」
ルイス家がどういった事情で、なおかつどういったところまで情報をもって追いかけてきているかわからない以上はなるべく早く現在地から離れるほかはない。とりあえず、船に乗って南部連邦に着いてしまえば、南の大聖堂に着くまでは一旦今とは姿を変えてある程度ごまかすこともできるだろう。
「はぁ何がどうなってこうなっているのかしら……」
いったい自分の行動の何が問題だったのだろうか? いや、そもそも自分がどうするとかそれ以前にルイス家は探していなかっただけで探そうと思えばマーガレットの居場所をつかむことぐらいはできたのだろうか? そのあたりを考え出すと疑問が尽きないが、今は目の前のことが優先だ。
そういったことを考えている間にも、マーガレットたちは無事にリモリアの船着き場に到着し、南東海峡を挟んで向かいにある港町デダコハまでの乗船券を手にする。
「さてと……とりあえず、これで東部連邦は脱出ですね」
「そうですね。しばらくは東部連邦にいると思い込んでくれるといいのですけれど……」
幸いにもリモリアからデダコハまでは数時間の旅路だ。その間に新たな追手が現れて捕まってしまうなどといった可能性は考えたくはないが、そういった可能性も否定できないので少々緊張してしまう。
そうやって待合室で待っていると、ようやく船が到着し、マーガレットたちはそれに乗り込む。
「さてと、これでようやく東部連邦ともお別れですね……」
少々あわただしい別れになってしまったが、マーガレットたちは無事にリモリアの港を離れて南部連邦へと出発する。そこまでして、ようやくマーガレットは深く息をついて客室のベッドに寝転がった。
「そうね……この先何事もなく進んでほしいのだけど……」
そうつぶやいた後、そのままベッドで眠りについた。
*
リモリアの町を出てから数時間。船は無事に航行を続け、予定通り数時間でデダコハに到着した。デダコハで入国に関する手続きをしたのち、マーガレットは港から駅へ向けて足早に移動する。
リモリアにいる時点では南部連邦に入った時点で姿を変えて少しでも追ってから見つかる可能性を減らそうと考えていたが、追手がたくさんいるとかではない現状ではそこまでもしなくてもいいと判断し、とりあえず今の姿のままで行動している。ただし、これまで見たいに冒険者ギルドに出入りしたりといったことは避けた方がいいだろう。そうなると、この先路銀を稼ぐ方法というのが限られてきてしまう。
「さてはて……どしたものでしょうかね……」
この先のことを憂うマーガレットに対して、アイはいたって単純な答えを提示する。
「どうしたもこうしたも、堂々としていればいいんじゃないですか? 私たちが何か犯罪を犯しているわけでもないですし、手配書の内容的にもこそこそ隠れるほどのモノじゃないと思いますよ。それにどちらかと言えばこそこそしている方が何かやましいことがあるのかと勘繰られる可能性もありますし」
アイの話を聞いて、マーガレットはある程度納得する。確かにこちらとしては何かやましいことがあって北部連邦を離れたわけではない。聖書を集めるという理由があっての旅だ。
もし仮にルイス家が何かしらの理由でマーガレットが必要になって追いかけているのだとしても、衛兵などが動いていない時点ではマーガレットを強引にとらえるということはできない。そう考えれば、こそこそと隠れるよりも今までのように堂々と行動をしてもいいのではないとかというのがアイの主張だと言えるだろう。
「まぁ確かにそうかもしれませんね。ただ、ルイス家が例の本についての情報をつかんでいるかどうかで話はずいぶんと変わってきますけれど……まぁそのことは一旦考えない方がいいかもしれませんね」
マーガレットたちは今後について会話を交わしながらデダコハ駅へと向かっていった。




