表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
第7章 ルッシの大聖堂

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/75

第36話

 ルッシの大聖堂で文献調査を始めてから約一週間。国から派遣された古文書の専門家も調査に加わり、普通の文献の調査は順調に進んでいた。その一方で問題となっているのは魔導書やマジックアイテムの方だ。一応、ルッシ共和国の方で何とかそちらの知識のある人間を手配しようとしているとのことなのだが、今のところそれはかなわず、マーガレットとアイの二人での作業となっている。

「まだまだ量がありますね……」

「そうね。いつになったら終わるのかしら」

 アイと会話をしながらマーガレットはふと考える。ここまでいろいろな物事がうまくいきすぎているのではないかと。

 最初、ナギサの町でアスタ博士からの依頼を受けたことに始め、東部連邦に渡ってからも何かと物事がスムーズに進んでいる。路銀に困れば相応の解決方法が目の前に現れ、ルッシの大聖堂の関係者も聖書に関する調査についてどういういうことはない。マーガレットとしては、なんというかもっと聖書を手に入れる旅というのはもっと苦労の連続であるはずではなかろうかと考えてしまったのだ。もちろん、無駄な苦労をしたいわけではない。そう考えていくと、やはりミカの聖書にもルッシの聖書にも書かれている『この本は、神の導きを受け、願いをかなえることができる者にのみ開かれる』という文章が気になって来る。『神の導き』というのがどういう仕組みになっているのかわからないが、もしかしたら聖書を手に取った時点から何かしらの魔法が発動しているのではないかとさえ思えてくるのはマーガレットだけだろうか?

「マーガレット様? 何かありましたか?」

 アイに声をかけられ、マーガレットは自らの手が止まっていたことに気が付く。

「あぁごめんなさい。ちょっと考え事をしていただけよ」

 そこでマーガレットは一旦思考を中断させ、作業に集中する。とりあえず、このことに関しては宿に戻ってからアイに相談すればいいだろう。そう考えて、マーガレットは目の前の魔導書についての調査をし始めた。


*


 その日の夜。マーガレットはアイに聖書について考えていたことを伝える。それを聞いたアイは深く考え込むような姿勢を見せた後に口を開いた。

「確かに私の歴史書が中身も確認されずに高値で売れたのは少し不自然かもしれませんね……それに今回のことでも南へ向かう路銀はある程度稼げそうですし……そうなると、選ばれた人が魔導書を持った時点で何かが発動していると考えてもおかしくないかもしれませんね」

 マーガレットの指摘に対して、アイも同じような結論に至ったのか、特に反論をしてくることはない。

「まぁ魔導書自体がかなりの魔力を放っているし、それぐらいのことがあっても不自然ではない……ということかしら?」

 マーガレットの結論にアイは首を横にして答える。

「うーん。でも、そんな特定の物事がスムーズにいくような魔法なんてあるんですかね? もし、そんなものがあればいろんな人が飛びついていると思いますけど」

「そうよね……でも、『なんでも願いが叶う魔法』が聖書に封印されているぐらいなんだから、『聖書を集めることに関してはスムーズにいく魔法』が併用されていてもおかしくないかもしれないでしょ?」

 マーガレットの指摘に対してアイは再び考え込む。そうしてしばらくの時間をおいてから口を開く。

「まぁ確かに『なんでも願いが叶う魔法』が本当ならありえなくもない……のですかね? そう考えてみると、この聖書にかかっている魔法というのは無限の可能性を秘めているとも言えますけれど」

「無限の可能性ねぇ……」

 アイの話を聞いて、今度はマーガレットが考え始める。もし仮に聖書に書いてあることが本当だとして、それに関する物事がスムーズにいくようになっていたとしよう。そうなると、その狙いは何なのだろうかと。もし、マーガレットがそういった魔法が使えたとして、誰かに聖書を集めさせるのならば、そう簡単に願い事が叶ってしまうとありがたみがないので、むしろその道のりが厳しくなるように『聖書を集めることに関してはスムーズにいく魔法』のようなものは仕掛けないだろう。それ以前にどういった条件かという点はおいておくとして、『なんでも願いが叶う魔法』というモノを発見したら、人には教えず自分自身に使うはずだ。

 そこら辺をあえて、聖書を集めるだけで魔法の発動条件がわかるようにし、さらにはその聖書集めもある程度スムーズにいくようになっていたとしたらそれはどんな狙いがあってのことだろうか? それとも、このことに関してはマーガレットが考えすぎで、『偶然』すべてのことが上手くいっているだけなのだろうか?

 そこまで考えて、マーガレットは小さくため息をつく。

「……考えれば考えるほどよくわからない代物ね……私の考えすぎかしら?」

「そうですね……でも、そのあたりについては後々わかるんじゃないですか?」

 アイの指摘にマーガレットはもっともだと考えながら返事をする。

「そうね。とりあえず、今は目の前のことに集中しましょうか」

 その話の後、マーガレットは聖書についての思考をいったん中断し、寝るまでの間アイと他愛のない会話を交わして過ごすのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ