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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
第7章 ルッシの大聖堂

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第35話

 マーガレットがルッシの聖書を手に取って開いてみるとミカの聖書と同様にあっさりと本は開いて中身を読むことができる。

 そこにはミカの聖書と同様に聖書の使い方が断片的に書かれていた。

「それにしてもすごい部屋ですね……これほどの本があるとは……」

 そんなマーガレットの背後でダニエルが驚きの声を上げる。

「はい。ここにある本は歴史的価値が高いモノばかりと言えると思いますよ」

 そんなダニエルにアイが返答する。実際、ミカの聖書があった部屋には歴史的価値がある本が多数収蔵されていて、その中にマジックアイテムだったり魔導書だったりも混じっていたような形だ。そう考えると、この空間に保管されている多数の本もそう言ったものなのだろう。

 しかし、マーガレットとアイにとって大切なのはルッシの聖書だ。これさえ無事に手に入れば、あとに残っている本の調査は専門家に依頼すれば問題ないだろう。

「しかし困りましたね……」

 そんなマーガレットの背後からダニエルの声が聞こえる。マーガレットは一旦聖書から目を離してダニエルの方へと向き直る。

「何か困りごとですか?」

 マーガレットが尋ねるとダニエルは困ったような様子で答える。

「それが……普通の文献調査だったら近くに専門家がいるのですが、魔法関連になるとなかなか引き受けてくれる専門家というのがいなくて……」

「あーそういうことですか……」

 ここにあるのはある意味では宝の山であり、なおかつこの大聖堂を巡る歴史についての大切な文章たちだ。そうなって来ると、ダニエルとしてはちゃんと調査をしてみたいのだろうが、専門家がいないという問題に直面してしまうということなのだろう。

 ダニエルは少し考えこむようなそぶりを見せてからマーガレットに提案をする。

「もしよかったらですが、この部屋にある本の文献調査をしていただけないでしょうか? 聖書さえ回収してしまえば、シスターたちに隠す必要もないので手伝いはできますし、謝礼もちゃんと用意するつもりです」

「なるほど……少し考えてもいいですか?」

「はい。もちろんです」

 そのやり取りの後、マーガレットは聖書をいったん机の上において考え始める。確かに聖書以外にどのようなマジックアイテムや魔導書があるのか気になるし、何よりも報酬が出るという点を考慮すると魅力的な提案と言えるかもしれない。

 チノの町で少々路銀を稼げたとは言え、この先残り三つの聖書を集める旅をする上で十分かと言われるとそうではない。そうなると、ここで文献調査を行うということはちゃんと意義のあることだと言えるかもしれない。

「わかりました。やりましょう。アイもそれでいいよね?」

 マーガレットがアイの方へと視線を受けると、彼女は笑顔でうなづく。

「はい。問題ないのです」

 そこまでのやり取りが終わると、ダニエルはマーガレットたちに向けて深く頭を下げる。

「ありがとうございます。謝礼に関しては国との協議は必要ですが、相応に用意させていただきますのでよろしくお願いします。それでは、私はほかの関係者に文献調査の対象となる本が発見されたという形で報告してきますので、その間に聖書はどこかにしまっておいてください」

「わかりました」

 階段を下りていくダニエルの背中を見ながら、マーガレットは聖書をカバンの中にしまう。

「……それにしても、これはかなり時間のかかる調査になりそうね……」

「まぁそれでも十分な路銀が稼げるんじゃないですか?」

「そうね。これだけの量の文献調査だもの、せめて南の大陸の大聖堂に行けるぐらいにはほしいわね」

 チノの町に滞在していた時に喫茶店の店主であるリーエに聞いた話では東の大陸と南の大陸は距離が短いらしく、一番近い地点である『南東海峡』は船で数時間程度で移動できるほどの距離らしく、北の大陸から東の大陸へ移動したときほどの時間はかからないそうだ。そのため、東部連邦と南部連邦の間の航路の運賃もさほど高くはないらしい。最も、肝心の大聖堂があるのは南部大陸の中心部にある町で、その先……西の大陸にある西部連邦や中央の大陸にある中央帝国の大聖堂を目指すということを考えると、まだまだ路銀は必要となる。そのため、この先も路銀を稼ぎながらの旅は続くので、ここで多少時間を使ってでも路銀を稼ぐというのは重要なことになりえるだろう。

 そこまで考えたころには、ダニエルがシスターたちを伴って広間に戻ってきて、ダニエルが簡単に状況を説明する。

「ここが今回の文献調査の対象エリアです。皆さんは文献貯砂を行う二人の手伝いをお願いします」

 ダニエルがそう言うと、シスターたちは各々周りを見回しながら感想を述べる。その主な内容な『時計塔の中にこんな場所があっただなんて』だとか『これだけの本の調査は大変そうですね』などといったものだ。

「さてと……それではまずはここにどれだけの本があるか把握するところから始めましょうか」

 マーガレットはそう言ってから、シスターたちと手分けしてこの場にある本の整理を始めた。

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