第25話
東部連邦の北に位置する港町セイア。ナギサからの長い船旅を終えたマーガレットたちはようやくこの町にたどり着くことができた。
「ずいぶんと長い船旅だったわね……」
船を降り立つなり、マーガレットはそうつぶやく。
「まぁララで降りたら時以外はずっと船の上でしたからね。余計にそう感じるかもしれません」
マーガレットのつぶやきにアイが反応する。
その会話の後、マーガレットは大きく伸びをしてからアイと共に駅の方へ向けて歩き出す。
「それにしても、ララ共和国では魔法使いが珍しい存在だっていう話だったけれど、この先もそうなのかしら?」
「そうですね。あまり詳しい情報は知りませんが、国によってはそういうところもあると思いますよ」
「なるほど。そういうモノなのね……」
そういった会話をしながら、マーガレットたちは冒険者ギルドへと向かう。事前に調べた情報では東の大陸の聖書があるのは大陸の南部にある聖都ルッシ。そこまでの旅路は長く、それなりに路銀が必要なためまずは必要資金を集める必要があるからだ。そういった意味ではこの町には少々長い期間滞在することになるのかもしれない。
そのようなことを考えながら歩いているうちにマーガレットたちはセイアの町の冒険者ギルドに到着する。
「さて、いい依頼があるといいのだけど……」
そんなことをつぶやきながらマーガレットは冒険者ギルドに足を踏み入れた。
*
セイア港の近くにある砂浜。様々なごみが漂着しているその場所にマーガレットたちの姿はあった。
冒険者ギルドに意気揚々と足を踏み入れたのはいいものの、ナギサの町でそうした時のように都合のいい依頼はなく、こうして砂浜のごみ拾いの依頼を受けているのが現状だ。
こうなって来ると、冒険者ギルドに頼るよりもどこかで働いた方がいいような気もしてくるが、この町にずっといるつもりではないため、そういう前提で雇ってくれるところというのは少ないだろう。それに悪意があったのかどうかは別としてアスタ博士の一件を考えると、下手に他人とかかわるのも良くないような気がするというのもある。
「さて、さっそく仕事と行きましょうか」
「そうですね……というか、思っていたよりもごみが多いですね……」
そのような会話を交わした後、マーガレットたちは砂浜の掃除を始める。もちろん、一つ一つ丁寧に拾っていくわけでもなく、魔法を使って効率よく集めていく。そうでもしていないと、いつまで経っても終わる気配がないからだ。
「はぁいつになったら、この町を出発できるのかしら……」
そんなことをつぶやきながら、マーガレットは淡々と依頼をこなしていった。
*
セイアの町に滞在し始めてから約一か月。マーガレットはすっかりと町の人たちに「魔女っ子」という愛称で呼ばれ始めていた。やはり、アイが言う通り、魔法使いという存在は珍しいらしく、特にマーガレットのようにパッと見で魔法使いだとわかる人というのは相当珍しいらしい。パン屋に行けば、ちょっとしたお願い事の代わりにお金とパンをおまけでつけてくれたり、宿でもちょっとした手伝いをするだけで宿代を割り引いてくれたりといろいろとメリットはあるのだが、すっかりとこの街に溶け込んでいく状況というのはどうなのかと考えてしまう。
その一方でマーガレットは東部連邦において、魔法が科学に置き換わって行っているのだなと実感することも多く、魔法使いが珍しいというのは確かなのかもしれない。
例えば、町を歩いていると時々ではあるが『自動車』と呼ばれる馬の力を必要としない車が走っていたり、宿やパン屋、冒険者ギルドには『電話』と呼ばれている遠くの人と瞬時に話せる道具が置いてあったりする。ほかにも生活の細かいところまでいろいろな科学を用いた製品が浸透しており、北部連邦に比べて科学というのを身近に感じることが多い。
こうした現状を垣間見ると、いかに北部連邦が科学という面においては遅れているなということを感じることができる。最も、それとは逆に魔法という面で見れば北部連邦の方に軍配が上がるだろう。マーガレットからすれば、どちらがよくでどちらが悪いのかという判断をすることはできないのだが、もしかしたら近い未来北部連邦でもこうした科学の力に頼った製品がどんどんと進出してくるのかもしれない。
そのようなことを考えながら歩いていると、今日もまたマーガレットたちは冒険者ギルドの前に到着する。
「さてと……今日こそはいい依頼があるといいのだけどね……」
ここ最近受けた依頼といえば、海岸のごみ拾いに始まり、迷子のネコ探し、ちょっとした配達、家の引越しの手伝いといったものばかりで、なるで何でも屋にでもなったような気分だ。
一応、そのあたりの依頼もこつこつとこなしているおかげでお金はたまり始めているが、この調子だといつ聖書集めの旅を再開できるかわからない。
そのようなことを考えながら、マーガレットは冒険者ギルドの扉を開いた。




