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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
第4章 北部連邦から旅立つために

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第19話

 ノースの町の路地裏を少し入ったところ。すっかりと人気が少なくなった場所でマーガレットは少女に声をかける。

「それで? どうしてあなたはこんなところで泥棒なんてしてるの?」

 マーガレットが質問すると、少女はぷいと横を向いてから答える。

「勝手に家を出て行ったお姉さまには関係のない話よ」

 それを聞いたマーガレットは自分の予想が当たっていたのだと考え、小さく息をついてから質問を続ける。

「そう。だったら、ルイス家は商店で泥棒をしないといけないほど落ちぶれたと解釈してもいいのかしら? マリー」

 マリー・ルイス。それが目の前の少女の名前だ。それにしても、魔法で髪の毛の色や声色をいじっているとはいえ家族に直接会うとやはりばれてしまうものらしい。少女……マリーは目の前にいる人物を行方不明になっている自らの姉であるマーガレット・ルイスだと認識しているのは確かなようだ。

 これまで、母親を探したことはあるが、マーガレットが去った後のルイス家がどうなったのかはあえて探らないようにしていた。それは、探ってしまった結果、何かしらの理由で家に戻りたいと考えるような事態に至らないための対策だ。マーガレットは父親のことは嫌っていても妹であるマリーにはそこまでの嫌悪感を抱いていなかったという点が大きい。もし仮にルイス家の現状を探ってマリーのことが心配になり、アリス教授のもとを離れて帰りたくなるかもしれない。そういう考えがマーガレットの中にはあったのだ。

 しかし、目の前の状況は放っておけない。なぜ、貴族の令嬢の生まれであるマリーが街中で盗みを働くほど落ちぶれてしまったのか。それに関してはしっかりと話を聞くべきだろう。

「……わかったわよ。お姉さまがいなくなってから何があったか話してあげる」

 そう言って、マリーはマーガレットが家を飛び出した後のことを話し始めた。


*


 マーガレットがルイス家を出たその日、まったくマーガレットを探そうとしない父親に対して、マリーは独自にマーガレットを探そうとしたのだという。しかし、当時マーガレットよりさらに幼かった彼女はかくれんぼの延長線上のような形で単に家の中を探すことぐらいしかできなかった。最もこの話は始まりに過ぎない。

 マーガレットがいなくなった後、ルイス家は何かの呪いにかかったかのように急速に没落し始めたのだという。革新派として活動する父親には裏でよくない事を企んでいるという出どころ不明のうわさが広がり始め、貴族の地位を守るためにその噂を消すのに躍起になっていた。しかし、そう言った努力もむなしくルイス家はだんだんとその地位を失っていったのだという。

 そのころには科学の発展のために尽力していた父親は酒に走り、マリーや使用人に暴力をふるうこともあったのだという。

 そう言った日々が続き、気が付けば使用人はいなくなり、さらには父親も姿を消してマリーだけが残されたのだという。


*


 一通りの話を聞いた後、マーガレットは深く考え込む。

 はたして、マーガレットが去ったタイミングで何が起こったのか? そもそも、ルイス家は貴族としては新しい部類に入るとはいえ地盤はしっかりとしていたはずだ。しかし、まるでマーガレットがいなくなったのを見越したかのように没落していったのはなぜだろうか? 単なる偶然かはたまた誰かが仕組んだのか……仮に誰かが前々からそう言ったものを仕組もうとしていて、そのタイミングがマーガレットの家でと重なっていたのなら、マーガレットはある意味で良いタイミングで家を出られたということになる。

「そんなことってあるんですね……」

 いろいろと考えこんでいるせいですっかりと黙ってしまっているマーガレットの横でアイがそうつぶやく。

 よくよく考えれば、これまでの人生の中でいろいろと『偶然』に救われていることが多いような気がする。偶然にも家を出たタイミングが没落寸前で、偶然にも路頭に迷いそうなところをアリス教授に拾われた……そう考えていると、誰かが裏で糸を引いているような陰謀論的な考えに至らなくもない。最も、そのようなことを偶然を装いながらしようとする人物が存在しているのならという話であるが……

「……マリーさえ良かったらだけど、今日は一緒に宿に泊まる? 残念ながら一緒に旅をしてっていうわけにはいかないけれど」

「お姉さまは旅をしているの?」

 マーガレットの提案に対して、マリーは意外なところで引っかかったらしい。もしかしたら、彼女はマーガレットがまだこの町のどこかにいるだろうとでも考えていたのかもしれない。

「えぇそうよ。ちょっと、詳しい事情話せないけれど、ここにいる弟子のアイと一緒に旅をしているの」

「……エルフが弟子ね……お姉さまもいろいろと訳ありなの?」

「……まぁそうね。訳があると言えば訳があるっていう感じかしら」

 そのような会話をした後、マーガレットは『早着替えの魔法』で彼女に予備の服を着せ、そのまま一緒に今日泊まる宿を探すために大通りへと戻って行った。

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