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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
第4章 北部連邦から旅立つために

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第17話

 北の大陸の玄関口となっている町ナギサ。マーガレットとアイが出会った場所であり、今回の旅の出発点となりえる場所であろう。しかし、ここで一つ問題が発生していた。

「……大陸間の航路の運賃って高いのね」

 このナギサから東の大陸にある港町セイアまでの運賃が意外と高く、さっそく路銀が不足していたのだ。しかしながら、これからアリス教授のもとへと戻り、お金が稼げるような依頼をあっせんしてもらうというのは何ともやりづらいところがある。

「さて、どうしたものかしら……」

 マーガレットは小さくため息をつく。これまではアリス教授の手伝いをして報酬を受け取っていたり、依頼をあっせんしてもらっていたのでこういった事態に直面したことはなかったのだが、こうなって来ると運賃分を自分で稼ぐほかないだろう。

「まったく、北部連邦を出る時点からつまづくとは思っていなかったわ」

「そうですね。まさか、マーガレット様がマジックアイテムの買いすぎで金欠に陥っていたとは思わなかったです」

 アイが痛いところをついてくる。実際、ここのところ市場でマジックアイテムを買いあさっていた影響で金欠気味だったのは確かだ。しかしながら、それはもう過去のことなので今考えていても仕方がないことだろう。

「……とりあえず、運賃分のお金を稼ぐしかないわね」

 マーガレットは港に掲げられている運賃表の前で深くため息をついた。


*


 ナギサの町の中心部にある冒険者ギルド。ここでは日々冒険者たちがさまざまな依頼をこなしている……と言いたいところなのだが、魔族が討伐され、魔物という存在がなくなった今その存在意義はかなり薄れている。それでいて、マジックアイテムの解析などは基本的に専門家が行うので、結果的に掲載されている依頼も迷子のネコ探しだのお使い程度の荷物の運搬などそう言ったものばかりだ。そうなって来ると、報酬金も少ないため冒険者として生きていこうとする人は減り、冒険者ギルドに依頼してもいつまでたっても依頼が受領されないから依頼する人が減っていくという悪循環が生まれている。

 さて、なぜそのような状況の冒険者ギルドをわざわざ訪れているのか? それは運賃を稼ぐ方法についてほかに思いつかなかったからだ。一時的にどこかに就職して働くという手もないことはないのだが、一応北部連邦にいる間は『令嬢マーガレット』が『魔女マーガレット』として出国しようとしていることがばれないようにしなければならない。となれば、こういったところに掲載されているその場限りの仕事というのはある意味で都合がいいのだ。

「さてと……運賃分を稼げそうな依頼はあるかしら……」

「そう簡単にはいかないと思いますけれどね……」

 意気揚々と依頼が張り出されている掲示板を見るマーガレットに対して、アイはどこか冷ややかだ。おそらく、ちゃんとした依頼はないだろうと考えているのだろう。

 掲示板を見始めて約十分。マーガレットはある依頼に目をつける。

「これとかいいんじゃないかしら?」

 それはナギサから北部連邦の東部にあるラファ共和国の首都ラファまで荷物を運んでほしいという依頼だった。条件としてはナギサからラファまでの往復運賃は先払いで報酬金は荷物を届けたときに受け取れるというモノだ。

「確かに条件はいいと思いますが、ここからラファまでかなり遠いですよ」

 ナギサはどちらかといえば、北部連邦の西部に位置しており、ここからラファまではそれなりに距離がある。そのため、いくつかの列車を乗り継いでいくことになり、相応の時間がかかることは間違いない。それぐらいだったらナギサの町の周辺で小さな依頼をコツコツとこなしていった方がよほど効率がいいと言えるだろう。だが、マーガレットも何も考えずにこの依頼を受けようとしているわけでない。

「ほら、ここを見て頂戴。依頼者の項目」

 そう言いながらマーガレットは依頼者の欄を指さす。そこには東部の方では有名な魔導書の専門家の名前が書かれていた。

「あーなるほど。つまり、この方に会って話をしてみたいということですか?」

「さすがアイ。よくわかったわね」

「でも、そんな寄り道していてもいいのですか? ただでさえ、例の本を集めるのは大変なのですよ?」

 今回の依頼を受けることに関して疑問をぶつけるアイの頭にマーガレットは手をポンと置く。

「えぇそれはわかっているわ。でも、この依頼を完遂すればそれだけでセイアまで船に乗れるわ。そう考えれば悪くない依頼じゃないかしら?」

 そう言って、マーガレットは掲示板から依頼書をはがし、受付の方へと持って行った。


*


 ナギサの町のほど近くにあるナギサ中央駅。今回の依頼で運ぶ荷物の受け取りの指定場所となっているこの駅の三番ホームに二人の姿はあった。

「なんで受け取り場所がギルドじゃなくて駅なんですかね?」

「そればっかりは直接聞かないとわからないわね。一応、依頼書によると運ぶのは魔導書らしいけれど」

 そのような会話を交わしながらチラチラと視線を動かしていると、黒いシルクハットをかぶった男性の姿が視界に入る。改めて依頼書を見ると、『ナギサ中央駅三番ホームで黒いシルクハットをかぶった男性から荷物を受け取ってほしい』と書いてある。となれば、今視界に納めている人物が依頼主の関係者であることは間違いないだろう。

 マーガレットはその人物へと近づいていく。

「こんにちは。ラファまでの荷物をお持ちですか?」

 マーガレットが声をかけると、男性は小さくうなづいてから今回の荷物である魔導書が入っているとみられる袋を手渡してくる。

「はい。確かに受け取りました」

「よろしくお願いします」

 マーガレットが荷物を受け取ったのを確認すると、男性はそれだけ言ってそそくさと立ち去っていく。

 そんな男性の後ろ姿を見て、アイがマーガレットにささやくような声で話しかける。

「なんか怪しくないですか?」

「そうね。確かに少し不自然かもしれないけれど、冒険者ギルドを通しての依頼だから問題ないはずよ」

 冒険者ギルドを通しての依頼というのは、基本的にギルドの方で内容を審査して、始めて掲載される。そのため、冒険者ギルドの掲示板に掲示されている依頼というのは基本的には安全なモノだと言える。それに何か問題が発生したとしても、その損害は冒険者ギルドが負担してくれるので、そういう意味でも安全だと言えるだろう。

「さて、行きましょうか」

 マーガレットは渡されたものの中にラファまでの往復切符分のお金があるのを確認してからアイに声をかけ、駅の中にある切符売り場の方へと歩き始めた。

お読みいただきありがとうございます。


ここまで来てようやく旅立ちです。といっても早速寄り道していますが


この先もお読みいただけると幸いです。よろしくお願いします。

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