第15話
アイが探偵であることが判明した日の夜。マーガレットはベッドに寝転がりながらアイの話について考えていた。
アイの主張が本当であることはマジックアイテムが証明してくれたのだが、それでも多くの謎が残る。
依頼主は誰なのか、どのような目的でそのような依頼をしたのか、さらに言えばなぜアイが持っている日記帳はどのような仕組みになっているのかなどといったことだ。
あの話のあと、アイに日記帳の説明書を見せてもらったが、その内容は書いたら書いた分だけページが増えるというのと、アイ以外には開けないし、開けたとしても中身を見ることは出来ないというモノだった。そのため、マーガレットはアイの日記帳に関して、正確な内容を把握することは出来ていない。
当然ながら今までマーガレットは極力自分の正体が知られないように努力をしてきた。しかし、少なくとも依頼主はマーガレットの正体を知っていて、下手をしたら、マーガレットがマジックアイテムなどを収集している目的までも知っている可能性がある。しかし、そのあたりの詳しい事情を知っているのはアリス教授ぐらいのはずで、そのアリス教授がこのような遠回りなことをするとは考えづらいので、マーガレットやアイ、アリス教授が知らない第三者が今回の依頼主であることは間違いないだろう。そのあたりについて詳しく知りたいという点が今回のアイを弟子のままにするという判断に与えた影響は大きい。
そこまで考えてマーガレットは深くため息をつく。
「いったいどうなっているんでしょうかね……」
これ以上考えていても答えは出ないだろう。しかし、いつかは答えを見つけなければならない。そう考えながらマーガレット眠りについていった。
*
アイの家がある集落を出た後、マーガレットたちは何日か馬車に揺られてメアリ王国の首都であるメリーの入り口へと到達していた。
メリーの町は広い平原の中にある城郭都市で町の周りは立派な城壁でおおわれている。そんな物々しい都市の唯一の入り口となっている門の前に二人の姿はあった。
「ようやく着いたわね……まさか、鉄道がないとこんなに不便だなんて思わなかったわ」
「そうでしょうね。でも、昔の不便さを体験できるというのはメアリ王国のいいところと言えるかもしれないですよ」
「……まぁそうかもしれないわね」
そのような会話の後、マーガレットとアイは城壁の周りにある堀にかかっている橋を渡って入口へと向かう。
橋を渡り切った先にはエルフの衛兵が待ち構えており、マーガレットたちはそこで入国審査を受ける。これは身分証を作る上で最初の壁だと言えるだろう。アリス教授やアイが言うところによれば、入国審査自体はそんなに難しいものではないとのことだが、それでも少々緊張していることは確かだ。
そのようなことを考えながら歩いていると、橋の中ほどで入国審査の列の最後に到達し、マーガレットたちは自分たちの番を待つことになる。
「さて、ちゃんと通れるといいわね」
「マーガレット様なら大丈夫ですよ」
そう言った会話を交わしながらマーガレットたちは入国審査の順番が回って来るのを待っていた。
*
入国審査で何を聞かれるかと見まがえていたマーガレットであったが、軽く手荷物を検査されたぐらいで身分証の提示を求められたり、具体的に理由を聞かれたりということはなかった。そんな簡単なモノでいいのかと疑問に思ってしまうのだが、アイが言うにはそれで問題はないのだとか……それについて詳しく聞いてみると、事情を知られたくない人が多くいるのでそうしているのだという。
マーガレットはアイの案内で狭くて入り組んでいる道を進んでいた。メリーの町は狭い城壁の中にこれでもかというほどに石造りの建物が並んでいて、その間を馬車ですら通れないような狭い道が迷路のように通っているというような形になっている。
「アイはこの町に来たことはあるの?」
「はい。何度かは着たことあります。ただ、移民局に行くのは初めてですね」
移民局。今私たちが目指している施設の名前だ。アリス教授曰く、メアリ王国ではお金を積めば移民という形でメアリ国籍を得られる可能性があるのだという。もちろん、国籍を得たい理由は必要だし、必要となるお金も安くはないそうなのでそのあたりの確認から入らなければならないのが現状なのだか……
「あぁここですね」
そんな事を考えている間に移民局の前に到着したらしく、アイが声をかける。
「案内ありがとう。早速、行ってみましょうか」
マーガレットはそう言ってから移民局に足を踏み入れた。




