表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
第3章 身分証の作り方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/31

第13話

 フランの町のすぐそばにあるフラン南駅。多くの長距離列車が日々発着するこの駅のホームにマーガレットとアイの姿があった。

「あのー本当に実行するつもりですか?」

 列車を待つマーガレットにアイが声をかける。アリス教授がマーガレットに提案した『魔女マーガレット』の身分証を手に入れる方法というのは、メアリ王国へ向かいそこでお金を払ってメアリ国民になるというものだ。アリス教授が言うにはメアリ王国は相応のお金を払えば国籍を獲得することができるのだという。もちろん、その道筋は単純ではない。メアリ王国の国籍を獲得するにはかなりのお金が必要となるし、メアリ王国の専門機関になぜ国籍が必要なのか説明する必要がある。さらに言えば、メアリ王国に入るだけなら国境審査はないのだが、首都であるメリーの町に入るためには国境審査が必要になるのだという。とはいっても、持ち込み禁止品を持っているなどよほどのことがないと入れないということはないとのことだが……

「そうね。ここまで来たからにはやるだけやってみるわ」

「……そうですか」

 ただ、今回の件に関してはアイはかなり消極的だ。その理由は定かではないが、アイにはアイなりの事情があるのかもしれない。

「あなたがメアリ王国に行きたくないのなら、私一人で行こうか?」

「あぁいえ。私はマーガレット様についていくと決めてますのでメアリ王国までご一緒するので大丈夫ですよ……ただ……」

「ただ?」

「あぁいえ。なんでもないのです」

 事情はよくわからないが、アイはメアリ王国に行くということに対して何か不都合なことがあるように見える。メアリ王国の国民の多くはエルフだ。もしかしたら、会いたくない人でもいるだとか、人間の魔女に弟子入りしていることを知られたくないだとか、そう言った事情でもあるのだろうか?

 そう言ったことを考えている間にメアリ行の列車が入線してくる。

「お待たせしました。ただいま到着の列車はメアリ行の特急です。お乗り間違いなさいませんようご注意ください」

 到着とほぼ時を同じくして、ホームで待機していた駅員が乗客に向けて声をかけていく。

「さて、行きましょうか」

 扉が開くのとほぼ同時にマーガレットはアイに声をかけて列車に乗り込んだ。


*


 メアリ王国の南の端の方。この国唯一の鉄道駅から馬車に乗り換えて約三十分。馬車は小さな集落に差し掛かろうとしていた。メアリ王国はフラン共和国など北部連邦の国に比べて、科学を拒否し、魔法を保護するという考えが強く、産業革命前の面影を残していると言われている聖都ミカよりも、科学の発展が遅れているといった状況になっている。実際にこうして馬車でメアリ王国の首都メリーを目指しているわけなのだが、それも数日かけて移動するということになっている。最も、首都メリーに到達するまでにいくつか集落があり、特に駅から首都メリーへ向かう途中にある集落は宿場町としての機能も持っているそうなので野宿をしながら旅をするということはないそうだ。

「そろそろ夕暮れも近いですし、あの集落で降ろしてもらって宿を探しましょうか」

「えっ? あぁいや、その……今日は野宿の気分かなーって思っているんですけれど……」

 そのような状況の中、アイが不思議なことを言い出す。せっかく集落があるのにわざわざ野宿をするというのはなぜだろうか? 天気はいいとはいえ、わざわざ集落の近くで野宿をする必要はないし、心なしかアイの顔色も悪いので、このような場所で野宿などしない方がいいだろう。

「とにかく、あの集落に行くからね」

 マーガレットはアイに声をかけた後に御者に頼んで集落へと向かってもらう。

「あっ、たんてーのおねーちゃんだ!」

 そのような子供の声が聞こえてきたのはちょうど集落の入り口に差し掛かったタイミングだった。アイの体がビクリと動く。しかし、そんなことは構わないと言わんばかりに子供たちは馬車の周りに集まり始め馬車は一旦そこで止まる。

「あっほんとだ!」

「たんてーさん久しぶり! どこに行ってたの?」

 そんな子供たちの声と共に集落にいた大人たちもだんだんと集まり始める。

「これはこれはアイちゃんじゃないか。一緒にいるのは人間かい?」

「そういえば、しばらく調査のために留守にするって言っていたけれど、その調査は終わったの?」

 周りの大人たちも次々とアイに話しかける。

「あぁいえそのーそのあたりの話はあとでしてもいいですか?」

 アイはそこで馬車を降り、マーガレットもそれに続いて馬車を降りる。

「あの……マーガレット()()。そのーこの集落には、私の家がありまして……今夜の宿泊先はそこでいいですか?」

「えぇそうね。いろいろと聞きたいことが出てきたからそうしましょうか。探偵のお姉ちゃん」

 そう言いながらマーガレットは不敵な笑みを浮かべる。

「はっはい。よろしくお願いします……」

 あくまで笑顔を崩さないマーガレットに対して、アイは冷や汗をかきながらそう答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ