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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
第3章 身分証の作り方

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第12話

 フランの町にあるフラン魔法大学校。マーガレットたちが旧校舎にある教師を訪れると、珍しくアリス教授が先に待っていた。

「すみません。待たせてしまいましたか?」

「いや、そうでもないよ」

 そのようなやり取りの後、マーガレットとアイはアリス教授の向かい側に座る。それを確認したアリス教授はさっそくと言わんばかりに話し始める。

「手紙を読ませてもらったよ。ミカの聖書が実際に効力を持っているかどうかの調査を依頼されたそうだな。確か、五つの大陸を巡る旅になるだとか……」

「はい。そうですね。まぁただ、それには問題がありまして……」

 マーガレットが歯切れの悪い答えを返す中、アリス教授はニヤリと笑い、マーガレットが何を言いたがっているのか理解しているかのように切り出す。

「……他国に出国するための身分証だろ?」

 アリス教授の言葉に対して、マーガレットは目を丸くし、驚いたような表情を見せる。

「先生! それは!」

「どうせアイ君にもいつか話さなければならないことだ。今がそのタイミングではないのか?」

 アリス教授の言う通りかもしれない。マーガレットの中でそのような考えが芽生える。今回の依頼、受け入れるにしても拒否するにしても、マーガレットの身分証の話は通らざるを得ない話だ。それにアイがずっと一緒にいる以上はどこかで自分が隠している秘密について話していかないといけないということになる。そういう意味ではマーガレットが他国へ出国できないという事態に関してはちゃんと話をしなければならないという時期だと言えるのかもしれない。

「まぁそうですね……ミカの聖書の調査をする上では避けては通れない道ですし、先生の言う通りなのかもしれません」

「そうだろ。まぁ最もお前がミカの聖書をあきらめるのなら話は変わって来るがね。そんなことはないだろう?」

「はい。相応の準備ができるなら、ミカの聖書に関する調査はやってみたいと思っています」

 マーガレットの返答に対して、アリス教授はアイの方へと視線を向け、再びマーガレットの方へと視線を向ける。

「さて、心の準備が出来たら話し始めてもいいんじゃないのか?」

 そうして、アリス教授に促されるような形でマーガレットは話し始めた。


*


 マーガレットが生まれたのは北部連邦にあるとある国の貴族の家だった。マーガレット・ルイス。それがマーガレットの本来の名である。

 マーガレットの生家であるルイス家は比較的新しい貴族で、革新派と呼ばれる立ち位置にある。具体的には魔法から科学への変化を強く推し進めたい考え方の家なのだ。そう言った家の考え方と、物心がついたころからのマーガレットの魔法使いへのあこがれは当然ながら合わないものであり、特に科学へのこだわりが強い父親とは衝突することが多くあった。さて、ここで一つの疑問が生まれる。なぜ、革新派の家で育てられているマーガレットが魔法使いへのあこがれを持ったのか。それは単純に母親が魔法に長けた一族から嫁いできたため、父親がいないところでいろいろな魔法を見せてくれたからだ。つまり、マーガレットは魔法と科学の考え方が混在する家に産まれたのである。

 その後、科学の発展へと尽力する父親と魔法の保護へ動きたい母親の間に軋轢が生まれ、マーガレットの両親は離婚。そして、マーガレット自身は父親に引き取られた。

 それからの流れはあっという間だった。子供だったマーガレットは魔法へのあこがれを隠さずに父親にぶつけ、父親はマーガレットに科学に関する勉強を強制する。そんな日々に嫌気がさしたマーガレットは家を飛び出し、母親を探し始めた。しかし、当時はまだ10歳にも満たない子供だったマーガレットがそう簡単に母親を見つけられるわけもなく、結果的に路地裏で迷子になってしまった。

 そんな中、偶然にもマジックアイテムの解析のために街を訪れていたアリス教授に出会い、彼女に拾われて現在に至るというわけだ。


*


 マーガレットが一連の話をし終わると、静寂が空間を支配する。その空気を最初に破ったのはアイだった。

「……マーガレット様は今でも母親を探しているのですか?」

 それは単純な質問だった。

「そうね。できれば会いたいとは思っているわ。でも、それは難しいでしょうね。アリス教授に弟子入りしてから実家にばれない程度に探ってみたけれど、私の母はルイス家を出てから行方不明になっているみたいだし」

「……そうですか」

 アイは何とも言えない表情を浮かべている。おそらく、今の話に関してどうやって接していいのかわからないのだろう。

「まぁともかく、そう言った事情があるので『魔女マーガレット』という人物に正式な身分証はないの。だから、ミカの聖書を持ち出せたとしてもほかの聖書を集めることができないのよ」

 暗くなってしまった空気を元に戻そうと、マーガレットは話の軌道の修正を試みる。それに応じるような形でアリス教授はマーガレットにある提案をする。

「……ところが、ある方法を使うことで『魔女マーガレット』の身分証が手に入ると聞いたらお前は乗るか?」

 アリス教授は不敵な笑みを浮かべながら、その方法について話し始めた。

お読みいただきありがとうございます。


前置き的な話が長々と続いていますが、できればこの章が終わったぐらいからほのぼのとした旅が書きたいななんて考えています。


この先もお読みいただけると幸いです。よろしくお願いします。

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