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魔女と汽車-人間の魔女とエルフの弟子-  作者: 白波
第2章 大聖堂の調査

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第11話

 聖都ミカからフランへ戻る列車の中。マーガレットとアイはミカへ向かっていた時と同じように向かい合わせで座りながら車窓を眺めていた。しかし、その心情はミカへ向かっていた時とはまた違ったものとなっていた。

 ミカの聖書。ほかの聖書と合わせると、どんな願い事も叶えられるマジックアイテム。アルヴィンとのやり取りの後、ミカの聖書を読んでいったのだが、その内容は神に選ばれし者がどうとかいう内容が主で実際にどうやって願い事を叶えるのかという点については断片的にしか書かれていなかった。おそらく、五つの聖書を集めないと具体的にどうやって願い事を叶えることができるようになるのかはわからないようになっているのだろう。

「マーガレット様。あの例の件はどうするんですか? 私はマーガレット様が行くところにはどこまでもついていくつもりですけれど」

 車窓を見ながら考えこんでいるマーガレットにアイが話しかける。

「そうね。そのあたりについてはまず先生に相談しないと……実際、普段は今回みたいに先生の手伝いをしたりしてるし、北部連邦から離れるとなるといろいろ準備も必要だから……」

 目をキラキラと輝かせ、こちらを見るアイに対してマーガレットは実質的に北部連邦から出る壁となっている『正規の身分証がない』という事態を隠しながら答える。最も、この問題はマーガレットにいったん足を止め、考える時間を提供してくれているのかもしれない。実際にマーガレットがいわゆる一般人で普通の魔女だったら、とっくの昔に先生への相談等をすっ飛ばして依頼を受けていた可能性があるからだ。

 さて、なぜ考える時間が必要なのか。それはミカの聖書の調査に関する特殊な事情が絡んでくる。そもそもミカの聖書の調査に関しては堂々と表向きに行えるわけではなく、メイヌース共和国もその実態を公に出すつもりはないそうだ。それもそうだろう。どんな願い事でもかなうマジックアイテムがあるなどという話が世に出回ったら、それを手に入れようとする人が多数現れるのは容易に想像できるし、その結果マーガレットやアイの身に危害がを加える者が出てきたり、大聖堂に保管されている聖書を盗もうとする者が出てきたとしてもおかしくはない。そのため、今回の調査については関係者以外にその秘密をもらさないという条件付きの依頼となっており、表向きには国は関与していないのでメイヌース共和国が路銀を出してくれるというわけではない。そのため、路銀など旅に必要なものは自分で確保しながらの旅となる。となると、アルヴィンが指摘する通り聖書を集める旅には相応の覚悟が必要というのはあながち間違いではないのだろう。

 そこまで考えてマーガレットは一旦思考を中断し、アイに話しかける。

「ねぇアイ。ちょっと謝りたいことがあるのだけど」

「はい。なんでしょうか?」

「前にあなたがいなくなったとき、何かヒントがないかと思ってあなたの日記帳を見ようとしたの。まだ、それを謝ってなかったことを思い出して……ごめんなさい」

 そう言ってマーガレットは頭を下げる。それに対して、アイは少々動揺したような様子を見せながら返答をする。

「いえいえ、その、なんというか、それは私のことを心配しての行動で不可抗力だったと思いますので、大丈夫ですよ」

 その言葉から少しして、マーガレットはアイに次の言葉を投げかける。

「……それで、すごい失礼な質問かもしれないけれど、あなたの日記帳って特定の人しか開けないようになっているの? もしそうなっているのなら、そういう魔法って簡単に使えたりするものなの?」

「あーそういうことですか……」

 マーガレットの質問を受けて、アイはマーガレットが何を求めているのか理解している様子を見せる。要するにマーガレットはアイの日記帳やミカの聖書のように特定の人にしか開けない本を作るのにどれほどの技術がいるのか知りたいのである。ミカの町にいるときはそこまで思考が及ばなかったのだが、よくよく考えればフランでの闇オークション騒動の時、アイの日記帳には特定の人にしか開けない魔法がかけられていた。となると、ミカの聖書にも同様の類の魔法がかけられていると考えるのが自然だろう。最も、ミカの聖書が何をもって『神に選ばれし特別な人』を選別しているかはわからないが、特定の人以外に開くことができない魔法の原理を理解できればある程度はあの本を開くことができる人を絞り込めるかもしれない。

「そうですね……簡単とは言いませんけれど、今となってはすっかりと廃れてしまっている魔法になっているので、今となっては私たちエルフのような長命種だったり、その魔法を代々と引き継いでいる家の人間だったりぐらいしか使えないんじゃないかなと思います」

「なるほど。つまり、そういう魔法はないことはないということでいいかしら?」

 マーガレットが訪ねると、アイは小さくうなづく。

「はい。そういうことになると思います。大聖堂が作られた時期だったらそういう魔法は人間も使っていたので、例の本は何かしらの条件を満たす人間のみが閲覧できる本という見方もできるかもしれませんね」

「なるほどね……答えてくれてありがとう」

「いえいえ。私のできることと言えば長生きゆえの知識の提供ぐらいですので」

 そのような会話が交わされる頃には列車は終点であるフランの町の付近に到達し、周りの人たちは降りる準備を始めていた。

「さて、列車を降りたらさっそく先生のところに行きましょうか」

「はい。そうですね」

 そこでマーガレットたちの会話はいったん終わり、周りの人たちと同様に棚に置かれている荷物を手に取り、列車から降りる準備をし始めるのだった。

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