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柴犬の名は、シバコウ。またの名を、ジョセフィーヌ  作者: 木村文彦


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 衝突があり、シバコウと青梶の仲は以前にも増して、ぎくしゃくとしたものになった。

「ほら。この屋台なんてどうかな?」

 そんな両者の仲を取り持つべく、僕は大神殿の一階を用いて、たくさんの屋台を開こうと提案していた。その一つに、「シバコウによるアイスクリーム屋」と名付けられた屋台が、でかでかと設置されている。

 屋台の内側には、エプロン姿の桜井先生が立っている。

「あのじじい。もうすぐ下の世界に戻るからって、周りの許可もなしに好き勝手しやがるな」

 僕の隣では、青梶が愚痴を漏らしていた。

 僕ではなく、大文殊様が実行したものだと、勘違いをしているようだ。

「ほれ、青梶殿。アイスクリームじゃよ」

 シバコウがカップを二つ持って、僕の様子を見ながら、青梶に喋りかけている。

「なんだ、柴犬。いいところ、あるじゃねえか」

 また僕に目配せをしたシバコウが意地の悪い笑みを見せていた。嫌な予感が、する。

 その場で、一口。アイスクリームを頬張った青梶がゲホゲホとむせている。

「なんだこれ、まずいな」

「ああ、しまったのう。こっちは犬用じゃった」

 明らかに、わざとだ。

 シバコウが青梶に追っかけられている間に、僕も桜井先生からアイスクリームを頂戴しようとする。その時、だった。

「まずいことになりそうだ」

 桜井先生からカップを渡されると同時に、告げられている。

 桜井先生は手を止めずに、顔だけを歪めていた。

「どうしたんです。魔王城でもシバコウが暴れすぎちゃうとか?」

「その方が、遥かにいい。もっと事態は深刻だ」

「おお。大ちゃんもアイスクリームをもらったんじゃな」

 シバコウの姿を認めた途端、桜井先生は口を噤んでいる。

「うん。美味しいよね」

「そうじゃのう。ところで、大ちゃん」

「ん、どうしたの?」

「ワシと神様のパートナーになってくれんかのう?」

 急な提案に僕は戸惑い、桜井先生は激怒した。

「それだけは絶対に認められない」

「どうしてじゃ、桜井先生?」

「そんな前例、聞いたことがないからだ」

「なんじゃ。桜井先生は、頭がカチコチじゃのう。前例がないなら作ってしまえばいいんじゃよ。絶対にワシは大ちゃんとペアになるぞい」

「それだけは絶対に認められない」と反対した桜井先生に対して、「頭がカチコチじゃのう」とシバコウは至極、残念そうな顔をして、非難を繰り返している。

 僕は桜井先生に、鋭い視線を浴びせられた。

 まずいこと、とは、シバコウが神様である僕とペアを組みたがっていることらしい。


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