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柴犬の名は、シバコウ。またの名を、ジョセフィーヌ  作者: 木村文彦


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 神と魔王による衝突はある日、突然、起こった。

 ドチグマが日光を吸収するようにして、ぐんぐんと大きくなっていく。

 龍の対面にシバコウが腕を組む。仁王立ちだ。

「柴犬。白黒はっきりつけるぞ」

 青梶が怒鳴った。轟音。大神殿から外に出て、階段を降り、数分歩くと、六畳くらいの赤い膜に囲まれた空間があった。

 そこで今、青梶とシバコウは対峙している。

「いつも大神殿に来る時、ここも見ておったぞい。それで、ここはなんじゃ?」

「闘技場だ。柴犬、勝負をしろ。これで負けたら、二度と大神殿には来るな」

 闘技場には、闘う場を取り囲むようにぐるりと上段に、観客席がある。

 そこに、僕やリエルは座っていた。

「ふむ。いいじゃろう」

 すぐに三者が、宙に舞う。

 ドチグマが火を噴き、青梶がどこからともなく取りだした長剣を振り、シバコウが忍者の構えを、取った。

 ドチグマの火だけでなく、青梶が握っていた長剣も、確実に魔王を捉えていたはずだ。

 だが、シバコウは一瞬で、姿を消し、また砂塵を巻き上げるようにして、現れた。

「ワシはこれでも魔王なんじゃよ」

 あまりにもシバコウが俊敏に動くため、ドチグマや青梶は攻撃の機会を失う。

「ふむ、残念じゃ。勝負にならんのう。銃を使うまでもないわい」

 シバコウに怯えた表情を向ける青梶を見て、ドチグマは大きなため息をついていた。

 慌てて、青梶はかぶりを振る。

「違うぞ、ドチグマ。まだ諦めてはいないぞ。次の手を考えるまで、防御だ」

 ふいに、ドチグマが火を噴いた。

 標的はシバコウに、ではなかった。

 呆然とする青梶に向けて、だった。

「おい、ドチグマ。何を……」

「止めろ!」

 僕は思いきり、闘技場の観客席から叫んでいる。

 その瞬間、シバコウは思い切り青梶の手を引き、咄嗟にドチグマの猛火を回避させていた。

「ワシは仲間割れが大嫌いじゃ! ドチグマ殿。その姿勢を貫くのであれば、いつまで経っても、統一神のパートナーにはなれんぞい」

「おっ、食っちまうぞ!」

 ドチグマは大きな顔を、シバコウに近づけていく。

「信頼の証は強さだけじゃないんじゃぞ?」

 シバコウが諭す。次第に、ドチグマはゆっくりと顔を柴犬から遠ざけ、青梶の方に、申し訳なさそうな顔を近づけていった。

 青梶も「すまない」とドチグマに頭を下げている。

 その柴犬の背に、僕は初めて魔王の風格を、見た。


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