23
神と魔王による衝突はある日、突然、起こった。
ドチグマが日光を吸収するようにして、ぐんぐんと大きくなっていく。
龍の対面にシバコウが腕を組む。仁王立ちだ。
「柴犬。白黒はっきりつけるぞ」
青梶が怒鳴った。轟音。大神殿から外に出て、階段を降り、数分歩くと、六畳くらいの赤い膜に囲まれた空間があった。
そこで今、青梶とシバコウは対峙している。
「いつも大神殿に来る時、ここも見ておったぞい。それで、ここはなんじゃ?」
「闘技場だ。柴犬、勝負をしろ。これで負けたら、二度と大神殿には来るな」
闘技場には、闘う場を取り囲むようにぐるりと上段に、観客席がある。
そこに、僕やリエルは座っていた。
「ふむ。いいじゃろう」
すぐに三者が、宙に舞う。
ドチグマが火を噴き、青梶がどこからともなく取りだした長剣を振り、シバコウが忍者の構えを、取った。
ドチグマの火だけでなく、青梶が握っていた長剣も、確実に魔王を捉えていたはずだ。
だが、シバコウは一瞬で、姿を消し、また砂塵を巻き上げるようにして、現れた。
「ワシはこれでも魔王なんじゃよ」
あまりにもシバコウが俊敏に動くため、ドチグマや青梶は攻撃の機会を失う。
「ふむ、残念じゃ。勝負にならんのう。銃を使うまでもないわい」
シバコウに怯えた表情を向ける青梶を見て、ドチグマは大きなため息をついていた。
慌てて、青梶はかぶりを振る。
「違うぞ、ドチグマ。まだ諦めてはいないぞ。次の手を考えるまで、防御だ」
ふいに、ドチグマが火を噴いた。
標的はシバコウに、ではなかった。
呆然とする青梶に向けて、だった。
「おい、ドチグマ。何を……」
「止めろ!」
僕は思いきり、闘技場の観客席から叫んでいる。
その瞬間、シバコウは思い切り青梶の手を引き、咄嗟にドチグマの猛火を回避させていた。
「ワシは仲間割れが大嫌いじゃ! ドチグマ殿。その姿勢を貫くのであれば、いつまで経っても、統一神のパートナーにはなれんぞい」
「おっ、食っちまうぞ!」
ドチグマは大きな顔を、シバコウに近づけていく。
「信頼の証は強さだけじゃないんじゃぞ?」
シバコウが諭す。次第に、ドチグマはゆっくりと顔を柴犬から遠ざけ、青梶の方に、申し訳なさそうな顔を近づけていった。
青梶も「すまない」とドチグマに頭を下げている。
その柴犬の背に、僕は初めて魔王の風格を、見た。




