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柴犬の名は、シバコウ。またの名を、ジョセフィーヌ  作者: 木村文彦


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 大神殿の内部のような場所がじわっと出現して、廊下の景色を埋め尽くそうとしていた。まだ半分が大神殿で、残り半分が廊下の状態だ。

 それがどこかと尋ねなくても、リエルが前に話してくれた大神殿であると、僕には分かっていたし、アイスクリーム屋の屋台も、きっと、ここの一階でやっていた。

 広々とした大神殿が、神知学園の廊下を飲み込んでいくようにして、現れていく。

 高い天井には壮大な梁が渡され、外の光がステンドグラスを通じることにより、虹のような色彩になって、大神殿の一部を彩り豊かにしている。

「やったぞい。これもワシのおかげじゃ。ビューティフルイズ、ワシじゃ」

 シバコウの喝采が空間に響くが、その姿はまだ見えない。

 床の色すらも、中世風に変わっていく。

 床の上に残っていた蜜柑を回収する俊敏な動きを見せるリエルが、ようやく視界の隅に入るようになっていた。

 リュックサックに次々と、蜜柑を投げ入れている。

「ようやくコツが分かったんじゃ!」

 突如として姿を見せたシバコウがまだ廊下の景色が残る狭い場所の中央に立っていた。鉄人のような厳しい顔つきになった柴犬は胸の前で、両腕を組み、「とりゃー」と叫ぶ。

 宙に向けて、ドロップキックを三回繰り出していく。

 廊下の一部が、また大神殿のような風景に変わり、完全に大神殿だけの景色となった。

 床にはモザイク模様が広がり、天井からは煌びやかなシャンデリアが柔らかな光を外から受け、輝き続けている。

「蜜柑が美味しそうな場所ですね。これは、これは茜さん」

 リエルが部屋の隅でひっそりと佇んでいた茜に手を振っている。

 シバコウは水色のポーチに手を掛けていた。

「最近、私とあんまり一緒に行動してくれないよね?」

「それは誤解ですよ。厳密にはシバコウさんと一緒に行動することが楽しいんです」

「私よりも?」

「それは時と場合によりますが」

「ふむふむ。ワシ、大人気と」

 忍び足でリエルの背後に近づいていった忍者姿のシバコウが、どこからか取りだしたペンとノートに、「ワシ、大人気」とだけ、乱雑な文字で書き殴っていた。

 それを律儀にも、僕の場所にまで抜き足のような移動を見せたシバコウが見せつけてくる。

「それで青梶とドチグマはどこに行ったのさ?」

 シバコウを無視して、僕はリエルに視線を向ける。

「どうやら、すぐに二階へと向かったようですね」

 リエルが立ち上がり、茜の肩に乗る。

 どこかに茜とリエルが、移動しようとしている。

「よし、尾行じゃ」

 尻尾を振りながら、シバコウが差し足で、茜とリエルについていく。

 僕もなんとなく、そのシバコウの背中を追いかける。

 茜は部屋を出て、大神殿の玄関に戻り、螺旋階段を上っていった。

「それで君たちはどうして追っかけてくるのかなあ?」

 螺旋階段をクルクルと回るようにして、茜を追いかけた結果、ちらりと下を見た茜と僕の視線がばっちりと合ってしまっていた。

 途端にシバコウは両手で頭を抱え込むようにして、その場でうずくまる。

「なんか楽しそうじゃったから」

 小声でシバコウが呟くと、「仕方ないなあ」と茜はシバコウの近くまで駆け足で戻り、柴犬の頭を、ポンポンとやった。

 シバコウの尻尾がこれでもか、と反応している。

 螺旋階段を上り切った。一部屋しかない二階の部屋に全員で入る。

 こちらも、広い。懐かしい感情が、胸中を渦巻く。

 間違いない。この部屋にも、僕は来たことがある。


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