第1話の8 「くっさっ!」
「ねえ、ココットさん。やっぱり、あの旅人さんが探し主なんじゃないでしょうか?」
指さしながらそう言ってユーリンが見やると、ココットは旅人の顔を少し見上げながら、少し考えるような仕草を見せていました。
「あの変な笑い方…。まさかとは思うけど…」
一抹の不安を覚えました。
「何か思い当たることでも?」
ユーリンの問いかけにココットはうなずきました。
ココットは口元を覆っていた三角巾を外しました。
「ねえ! 私がココットだけどっ!! あなたは誰かしらっ!!!」
両手でメガホンを作って、大きな声を上げたココットに注目が集まり、てっぺんに載った旅人も聞こえた声の方を向きました。
「おおっ! その声はっ!」
その時、広場に『廃棄物回収用機械獣』、ユーリンのいうところの『ミゴーちゃん』がやってきて、その日の作業をこれから始めようとしました。
「お~い! 今から回収を始めるから、出していない人は、早く出してくれ~! 無けりゃ作業を始めるから、みんな離れてくれ~!」
『ミゴーちゃん』を扇動してきた髭面の作業員、種族はどうやらオーガのようでしたが、彼が大声を上げました。
ずしんずしんと、重たい足音を立てて、『ミゴーちゃん』はゆっくりと近づいてきます。
「うわっ!?」
不意打ちの振動に足元が崩れ、グラリとバランスを崩した旅人が、下で見上げる二人の方へ転がり落ちてきました。
「ちょっ、危ないっ!?」
「落っこちてきましたっ!」
ココットとユーリンも慌ててその場から飛びのいて、衝突を避けました。
ドン、ガラン、ガッシャンコ!
「痛っ!!」
ゴツンと、殆ど真っ逆さまに頭から石畳ぶつかる鈍い音が聞こえたが、ひびが入ったのは旅人の頭蓋骨のかぶりものではなく、むしろ石畳の方でした。
旅人は反動で軽く跳ねてから、ばったりと大の字になって、ピクリとも動かなくなりました。
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見ていた者たちも、一瞬静まり返りました。
「ひょっとして、死んじゃったのでしょうか?」
ユーリンが縁起でもないこと口にしました。
「えっと…」
取り敢えずココットは恐る恐る近づいてみました。
「くっさっ!」
かなり汚く、そして『しばらくお風呂に入っていない臭い』を鼻先に感じたので、本能的にその場から二歩ほど後ろに下がりました。
ココットの後ろに立っていたユーリンに軽くぶつかりました。
「おっと。大丈夫ですか?」
ユーリンはココットの両肩にそっと手を載せて、事の成り行きを見守ることにしました。
(つづく)




