第1話の6 「ココット?」
二人は何気ないおしゃべりをしながら歩いていきました。
すぐそばの建物と建物の間、殆ど光の届かない薄暗い路地に身を潜めて、身体を休めているくだんの旅人の姿など、気づくこともなく。
「ココット?」
雑踏と雑談が入り混じる中、不意に聞こえてきた名前に反応し、旅人は目を開けました。
のそのそと、よつんばになりながら這い出して来ました。
キョロキョロと前方と左右を見回しましたが、人の往来が多く、また中途半端に明かりがともる視界ではよくわかりませんでした。
しかしながら。
「ん~。あの『ココット』…かな? ゴミ出しとか、集積場とか、言ってたような…」
頭の中で聞こえてきた声の断片をつなぎあわせました。
「よし」
くだんの旅人は何か思いついたかのように頷くと、荷物をまとめ、自分も夜のボロマチへと繰り出していきました。
★
「ところでココットさん。この後良かったら、お夕食、ご一緒しませんか?」
そう言いつつ、ユーリンはちょっと、くいっと飲むような仕草も見せました。
「いいですね~。行っちゃいますか! 明日も早いですけど」
ココットもくいっと、飲むような仕草を見せてそれに応えました。
そして二人はそんなことを話しながら、ボロマチの繁華街の方へと、吸い込まれるように消えていきました。
★
その夜、だいぶふけてからのこと。
明日の集積場となる場所に、怪しい人影がありました。
それは頭に頭がい骨をかぶった例の旅人でした。
「やっと見つかった。ここで待っていれば、ココットに会えるかも知れないな」
例の旅人は背負い袋の中から汚れた毛布を取り出すと、その場にゴロンと寝転がって、ここを一夜の宿としました。
町は寝静まり、どこかで小動物らしい物音が聞こえています。
季節的に夜中の冷え込みが厳しくなりつつありますが、もっと過酷な状態は何度も経験しているので、このくらいであれば問題ありませんでした。
夜空には星が輝いています。
荒野や草原で見上げる星空とはまた違う星空でした。
「果報は寝て待て。ココットも寝て待て」
そんな独り言を言ってから、旅人は眠りにつきました。
★
ココットが帰宅したのは、深夜遅くなってからでした。
「たらいま~」
ついユーリンと閉店まで飲んでしまい、ほろ酔いを通り越して、結構な酔いとなっていました。
「ドコちゃ~ん。たらいま~!!」
立てかけてあったドルコナの写真に声をかけると、ココットはその写真を抱えたまま、ベッドの上に転がりました。
そして着替えることなく、直ぐに眠ってしまいました。
(つづく)




