第2話の8 「あっ、ココっち」
その時、店のドアが開いて、来訪者を告げる鐘が鳴りました。
「こんにちは~。ドコちゃん…。ドルコナ、来てますか~? さっき、ユーリンさんと一緒に歩いていったって聞いたから…」
ひょっこり現れたのはココットでした。
「あっ、ココっち。今日の仕事、随分早く終わったんだ?」
ココットの姿を見て、ドルコナは軽く手を振りました。
「あんたがお腹を出してグースカ眠っているうちから働いていただけよ。ってか、何でここでくつろいでいるのよ…」
ココットは半ば呆れたような視線を向けました。
「ココットさん。いらっしゃい。どうぞこちらへ。今、お茶を淹れますね」
ユーリンは椅子から立ち上がって、代わりに座るように促しました。
「あっ、おかまいなく。もう『連行』しますんで、今度時間のある時にでも」
ココットは笑顔を見せつつ、目つきだけはちょっときつめにして、ドルコナをジロリと見ました。
「連行か~。そういや何度かそんなこともあったな~。両手を万歳にされて、連れて行かれたとき、地元の新聞に写真入りで載ったこともあったよ。ドワーフを見たことない変わった種族の人たちでさ、珍獣みたいに思ったんじゃない?」
しれっと気になることを口にしましたが、つっこむ時間が無かったのでココットはスルーしました。
「あとお店の外、常連のお客さんが…。多分、お茶しているのが見えたから、遠慮されているんじゃないかと」
ココットが左の手のひらで、窓の外を示しました。
何度かこのお店で見かけたことのあるお客さんだったので、ココットも顔は知っていました。
「あらっ! もうこんな時間でしたかっ!!」
ユーリンもようやくそのことに気づきました。
柱時計を見れば、開店時間を大きく過ぎていました。
「そっか。それは申し訳なかった。色々とお店の話を聞きたかったけど、また次にするよ。お茶とお茶菓子、ごちそうさま。とっても美味しかった」
ドルコナは両手を合わせてから席を立ち、帰りの支度を始めました。
「いえいえ。私も今日はお話が出来て、とても楽しかったです。またお待ちしています」
ユーリンはあまった焼き菓子を手早く紙袋に入れ、それをココットに手渡しました。
「あら、どうもごちそうさまです。ユーリンさん。次はこの三人で食事をしましょう」
「ええ。是非。その時はドルコナさんの旅の話を聞かせてください」
「あっ、それ、私も聞きたい」
二人はドルコナに顔を向けました。
「じゃあ、まずはアタシが臭くなった経緯でも」
「それは止めて」
「それはいいです」
二人は同時にお断りを入れました。
(つづく)




