第2話の6 「ちょっと見せていただきたいです」
「いや~、ちょっと退屈していたもんでね。けど、こんなんで釣れるのは、さすがにアタシも驚いたよ」
ドルコナが見せたのは、身近なもので手作りしたおもちゃの釣り竿でした。
はたきの先から紐を垂らし、その先には銅貨を挟んだクリップを括り付けていました。
「私もこれまで気づきませんでした。けど魚が食いついた餌の銅貨? 見たことないデザインの貨幣ですね」
丸いテーブルにお茶とお菓子を用意を終えたユーリンは、餌として使った銅貨を見せてもらいました。
「今日はそれを元手に、この辺りの貨幣に交換しようと思っていたんだ」
「何かの羽虫…、これは蜉蝣でしょうか? これを餌と間違えたのかも知れません」
ユーリンはそう評価しました。
「アタシは色んなところを旅したから、色んな貨幣を使ったよ。中には石ころみたいなものや、魔物の骨から作ったものもあった。けどどの土地でも共通して使えるわけじゃないから、そこから外れると無一文と一緒だよ。石や骨の貨幣は捨てちゃったし、他も換金するとえらい買いたたかれるから、もったいなくてね。金貨だけは『金』として売れたけど。そんなことしているうちに、銀貨と銅貨がこれだけたまった。金持ちなのか、貧乏なのかわからないね」
ドルコナは用意されたお茶を飲み、お菓子を食べながら、そう説明しました。
「他にもありますか? ちょっと見せていただきたいです」
「ほいよ」
ドルコナは腰につけていた大きな革袋を外すと、テーブルの上にジャラリと置いて、口元を開きました。
ユーリンが覗き込むと、その中には見たことのない貨幣がたくさん入っていました。
「これは予想以上にたくさんありそうですね。どれどれ…」
ユーリンは興味深そうに、一枚一枚取り出しては検めていきました。
ドルコナはその間にお茶を飲み干し、勝手にお代わりを注ぎましたが、相変わらずユーリンは硬貨を検めていました。
「うまいなこれ」
ついでにバリバリと用意された焼き菓子も食べ続けていきました。
「全部どうぞ…」
ドルコナの方をチラ見することもなく、ユーリンは言いました。
ドルコナの方は遠慮することもなく、黙々と食べ続けながら、時折お茶で口の中を潤しつつ、ユーリンの動きを観察し続けました。
ただ元々ここでは使えないお金なので、執着がありそうにも見えません。
そんな中、結構大きな貨幣がまとまって取り出されました。
革袋の底に、中敷きのように入っていたものでした。
「これは立派な貨幣ですね。私の顔くらいあります。あっ、一枚だけ金貨がありました! ゴールド、良いですよね~♪ こんな大きなものは初めて見ました」
お皿くらいの大きさの金貨を手に取った途端、ユーリンの顔が少しうっとりしたように変わりました。
「それはジャイアント族の貨幣だな。あの人たちは大きいから、貨幣もまた大きい。ただの小銭程度でもそれくらいだ。他所に行ったら、十枚分くらいの重さはあると思うけど、使えないのが残念だなあ」
他にも同じくらいの大きさの銀貨と銅貨が何枚か混ざっていました。
「この金貨を除くと、どれも鋳造工場に持ち込めば、あくまでも材料として引き取ってくれますけど、やっぱりこの町でも買いたたかれてしまいますね。それに『ボロマチ』は物価が安いから、半分よりも低くなると思います。他の金属細工の工場でも、似たようなものになるでしょう」
「古いものが多いと、そうなるんだねえ」
「元々仕入れ値が安いですからね。だから新品とか、生鮮食品とかが、おばかちゃんなくらい、高く感じるんです」
ユーリンはそんな面白い言い回しで表現しました。
「そっかぁ…。そいつはちょいと残念だ。何か路銀を稼げる仕事でも、ココットに相談するか…」
ドルコナは焼き菓子を食べきり、お茶の最後の一口を口に入れました。
(つづく)




