第2話の4 「ありがたや~!」
「そう言えばボボガガさんって言ったっけ? あなたの種族はオークだけど、こちらのエルフさんと仲が良いんだね? オークって言えば、エルフと犬猿の仲っていうか、むしろエルフの村を襲ったり、攫ったりなんだりって、良くない話を聞くんだ。アタシの旅先でも何度かあって、討伐を手伝ったこともあったよ。だから二人の関係が良さそうだから、驚いちゃったんだ」
ドルコナは包み隠さず、思った通りのことを口にしました。
「あったりめえだ! あっしに学はないが、これでも真っ当に生きてきたオークだ! そこいらのオークと一緒にしてもらっちゃ、困る!」
そう言われても怒った様子はなく、ボボガガは腕組みをしながら堂々と言い切りました。
「そうですよ! ボボガガさんはとっても良いオークさんです! ひどいことなんてしません!」
ユーリンはちょっと頬を膨らませて、ボボガガを援護しました。
「おおっ! 姐さんから勿体ないお言葉!」
「そうかあ。いや、失敬失敬。謝るよ」
ドルコナはかぶっている骨メットを軽くたたいて、頭を下げました。
「わかりゃあいい。わかりゃあ」
「それにボボガガさんは捨て犬や捨て猫を保護しては、次の飼い主さんを探しています。お掃除の日じゃなくても、町を綺麗にしています。迷子の子を助けたり、困っているご老人を助けたり。私もこの町に来た頃に迷子になって困っていたところ、一緒におうちを探してもらいました! だからとっても良いオークさんなんです!」
ユーリンはもう一度、そこを強調しました。
ドルコナはユーリンを見て、『この人も迷子のご老人かな?』と思いましたが、そこは何も言いませんでした。
「姐さんにそう言われて、あっしも幸せだ! 姐さんはあっしにとって、輝く真夏の太陽のようなエルフなのさっ! いや、女神そのものだっ!」
ボボガガは涙をぬぐいながら思わずユーリンに手を合わせました。
「お~、そう言われると何かご利益がありそうだね~。アタシもあやかって、手を合わせておこう。ありがたや~!」
「ありがたや~!」
新しい宗教のように二人はユーリンを拝みました。
何事かと、周囲の店の店主や客の視線がユーリンに集まりました。
「えっ、なにっ!? ちょっ、やめて…」
ユーリンは顔を赤くしながら、戸惑った様子を見せました。
★
結局ユーリンは、ボボガガが紹介した品物と、大きく膨らんだ魚の箱をお買い上げしました。
まとめて買ってくれたので、若干値引きをしてくれました。
「この後、お時間よろしかったら、私のお店に来てみませんか? ココットさんも時々やってくる古書店を営んでいます」
ユーリンはにっこりとした笑顔を見せました。
「なるほど。だからカートに古書が入っていたってわけか。アタシは構わんけど、臭いは大丈夫かな? 私、最近まで臭かったし」
ドルコナはすんすんと、自分の身体をかいでみました。
「そうですね。ちょっと失礼…。すんすん。このくらいなら大丈夫です。もう『ミゴーちゃん』に食べられることも無いでしょう。」
ユーリンは再びにっこりと微笑みました。
ドルコナは『このくらい』というところにちょっと引っ掛かりましたが、ユーリンのお誘いを受けて、訪問することにしました。
「姐さ~ん! また何か探しておきますね~!」
ボボガガに大きく手を振られながら、二人はその場を後にしました。
(つづく)




