第2話の1_「アタシって、そんなに有名になったのかね?」
ドルコナがココットの元にやってきてから翌日と翌々日の二日間。
それまでの間、日中はココットの暮らす集合アパートから出ることはなく、休養を兼ねて一人で過ごしていました。
それだけでは退屈なので、ココットの蔵書から適当に読んでみたり、興味本位で尋ねてきた同じ集合住宅の住人と、向こうのご馳走で小さなお茶会などを楽しんでいました。
その適応力の高さに、ココットは半ば呆れつつも、付き合い上手にはとても感心していました。
ココットが仕事から戻ってきてからは、二人で例の大衆浴場に出かけたり、帰り道にどこかの食堂に入って食事をしたりしていました。
そして三日後となったその日、ココットが仕事に出ている間、ドルコナは初めて一人で町に出てみることにしました。
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取り敢えず、荷物の中から旅先で使っていた硬貨を全部引っ張り出しました。
大きさもバラバラで、一般的な手のひらに収まるものから、最大で皿のようなサイズのものまで、かなりの物量がありそうでした。
「そもそもこれ、使えるのか?」
腕組みをしながら、テーブルに並べた色んな土地の硬貨とにらめっこをしました。
通貨は一番厄介なもので、例え同じ素材で作られていたとしても、その国や地域で使えないことも少なくありません。
その場合は両替所で換金することになるのですが、等価交換とはならず、半分程度まで価値を下げられてしまうことが多くありました。
引き取られた他所の硬貨は、その土地の硬貨の原材料として使われます。
つまり、材料として買い取った金額が支払われているのでした。
こうした交換はいつ、どこで始まったのかはわかりませんが、およそどこの場所でも行われていることが、旅を通じてわかっていました。
この世界に統一された通貨がない分、これは合理的な方法となっていました。
「取り敢えず、ありったけのものを持って行こう」
ドルコナは全ての硬貨を大きめの腰袋に収めると、早速出かけることにしました。
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ドルコナがフラフラ、行く当てもなく歩いていると、賑やかな声が聞こえてきたので、そちらの方に向かってみました。
そこは大きな通りでした。
その大きな通りが今は封鎖され、青空マーケットのような市が開かれていました。
「こいつは蚤の市か」
通りの両側には、簡素な作りの屋台であったり、またござのようなものを敷いただけのものもありましたが、多くの店が並んでいました。
使い古しのものばかりでしたので、カビや埃のような臭いが風に混じっていました。
こうした市は旅先で何度となく経験しました。
買ったこともあれば、売ったこともありました。
しかし、今は使えるかどうかもわからない硬貨しかないので、希望は薄いものでした。
取り敢えずドルコナは冷やかし客になって、端から端まで歩いてみることにしました。
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「お~い! そこのドワーフの姉ちゃんっ!」
「ン? アタシのことかい?」
声をの方向を見れば、ござを敷いて店を開いている中肉中背、オークの男性露天商の姿が目に入りました。
頭にはターバンのような布を巻きつけ、素肌の上からベストのようなものを羽織っています。
「そうそう。良かったら見てってくれよ~。冷やかしでも良いからよ~」
軽く手招きをされたので、ドルコナはそちらに行きました。
「お招きとはありがたいね~。けど、今日は見るだけだね~。何せアタシ、すってんてんのすっからかんだからねえ」
「はは。面白いドワーフの姉ちゃんだな。姉ちゃん、少し前に生ごみと間違えられて、食われてたよな? あっしもあそこにいたんで、そいで声をかけてみたってわけだ」
「あ~、そうなんだ~。アタシって、そんなに有名になったのかね? でへへへへ~」
そう言ってドルコナは、かぶっている骨メットを軽く叩きました。
(つづく)




