第1話の17 「自分でマニアって言っちゃった…」
ココットは再び大衆浴場にやってきました。
夕方も近くなってきたので、徐々に利用客も増えています。
「ちょっと混んでるかも…」
様子を見て、そんなことを感じながら、ココットはのれんをくぐりました。
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殆どの一般家庭には、浴室がありません。
あるのは裕福な家庭か、特殊な建物の中だけでした。
「午前中はお騒がせしました」
ココットはいつもの番頭に一言挨拶をして、今度は自分が入るための料金を払って中に入りました。
脱衣所で服を脱ぎ、湯煙でもやもやしている浴場に入りました。
「綺麗になっていて良かったわ」
張り紙のことを思い出したので、ココットはホッとしました。
「けど、まさかお湯の入れ替えで時間が詰まったから、混んでるなんてこと、ないわよね…」
一方、そこはちょっと心配になってしまいました。
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汗をかいた髪の毛と身体をしっかりと洗い、最後は豪快に頭からお湯をかぶりました。
ちょっと熱いと感じたが、不思議と疲れた身体にはそれが心地よく感じられました。
顔と髪の毛を軽く拭き、頭の上に手拭いを載せてから、ドルコナはゆっくりと湯船につかりました。
「あ~、良いお湯~」
お湯のぬくもりが、くたびれた身体にしみこんでいきました。
特に走り回っただけに、パンパンになった脚の筋肉が、少しずつほぐれていくようでした。
「あら、ココットさん。こんにちは~」
聞き覚えのある呑気な声が聞こえたかと思うと、湯船の隅っこからユーリンが現れました。
綺麗な黄金色の長髪を今は頭の上でとぐろのように巻いています。
彼女は普段から早めの入浴で、今日もそうでした。
「こんにちは。今日はお騒がせしました」
「大変そうでしたね~。あれから大丈夫でしたか~?」
ココットは『かくかくしかじか』と一連の流れをユーリンに説明しました。
「それは本当に大変でしたね~」
「ところでその、『ミゴーちゃん』でしたっけ? そっちの方はどうなりました? ドコちゃんが壊したようなものだけど…」
「あ~、あれでしたら、修理のために工場に運ばれましたよ。一回全部バラバラにして洗浄しなくちゃ駄目だって、そんなことを言っていましたね。細かい砂が入り込むと、歯車のある機械は面倒なことになるみたいです。お陰で直るまでの間、しばらくは他所の地区の回収をお借りするとのことでした」
ココットは『この人、何で細かいところまで知っているんだ?』と不思議に思いました。
「何だかおおごとになっちゃいましたね。私じゃどうにも出来ないけど…」
眉毛をハの字にして、ココットは困ったような笑みを見せました。
「でも、せっかくなので、中身がどうなのか、バラバラにする際に見学させていただくことになりました。『ミゴーちゃん』のマニアとして、これはとても興味深いことです」
「自分でマニアって言っちゃった…」
ココットは『風変わりなエルフさんだな』と思ったが、そこは口にしませんでした。
(つづく)




